一日がかりの列車による移動=フランス・アヴィニヨンからスイス・ツェルマットへ <8日目>

帰国から一週間でやっと時差ボケが溶けてきたようで、すっきりしだしたら、周りが見えてきました。あわてて、冬物の片付け、洗濯、と日常生活が戻ってきました。しばらく旅日記をお休みしている間に、小物の整理も写真でやってしまおうとチケットやパンフレット、バスの切符やレストランのカードなどをまとめて写真にしてみました。その日の日記の終りにくっつけようと思っています。それでは旅の最後を飾るスイスへの旅に入ります。

12日(金曜)
小奇麗で町中にでるにも食事に出るにも便利なホテル・ガルランドも今日が最後。パッキングを一応済ませて、階下で支払いを済ませ、腹ごしらえに外へ。7時、時計のある広場のパン屋でクロワッサンが出来るのを待って、コーヒーと。8時、ホテルへ戻って見送りに出てこられたヴェロニクさんとタクシーの運転手さんに頼んで記念写真。8時半、タクシーでTGVのアヴィニヨン駅へ。このとき、発見!
トヨタを運転していた日本人女性はホテルの道は進入禁止になっている、と言っていたが、タクシーはOK。おかしいな?と思っていたら、車止めの前で運転手が窓の外に手を出してポールに持っていたカードを突っ込む。すると、車止めがひっこむ! このカードを彼女は持っていなかったわけで、タクシーは許可証を持っているということ! な〜るほど、と謎が解けました。

アルルへ行く時に利用したアヴィニヨン・サルトル駅は城門を出たところにありましたが、TGVのアヴィニヨン駅は市街から随分離れた田園地帯の真ん中にあり、駅の敷地に入るには鉄格子の門を入り、庭園の中を走る感じ。タクシーを下されてからも、なだらかな坂道をトランクを引きながらつづれ織りに上って、オリーブの盆栽のある駅舎へ。チケットは東京に取次業務をする業者があってインターネットで予約でき、切符が買える。日付と出発駅と時刻、目的駅を打ち込めば、たちどころにすべての乗り継ぎを含めた乗車券の種類が表示され、そこで予約が可能になる。手数料が割り増しにはなるが、現地の駅で当日買う時の予想できない時間を考えると、安心料として割安だ。しかし、その前に、駅名を確定するために、日本で出版されているトーマス・クックの時刻表で事前に調べるのも楽しみのひとつだとは、一手に引き受けて準備してくれた夫の言い分です。

駅舎のデザインが斬新でステキでした。Fさんと二人で素敵ね〜と感嘆ひとしきり。ところが、重い荷物を乗り場の上まであげるのにエレベーターが見当たらない。エスカレーターは一台あるが、修理中で簡単に直りそうにない。日本男児の二人は、やおら二人分の荷物を持ち上げ階段を直登し始めた。ありがたかったけど、見渡すに、私たち以外に、そんなことをしている人が見当たらない。落ち着いてみると、みんな、左右の長〜いスロープをかなりの高齢者の方たちといえども引っぱりながらジグザグ一回で登ってくる。そうか、時間と距離をかければ人力で階段の高さまで荷物とともに歩いてこられるわけです。それを考えた駅舎のデザインでもあったと、また、二人で感心ひとしきり。列車は屋根なしのホームに入ってくることになっていて、時間が来ると荷物を押して外に出て待つことに。これで、リヨンまで、アヴィニヨン駅発9時18分の指定席(これのみ)で1時間2分のTGV、初体験です。

リヨンのPart-Dieu駅着10時20分。次の乗り継ぎに40分ほどあるので、ここでお昼のパンを仕入れる。地下になっていて、騒々しいほどの人が行き交う。部活の高校生らしき一団がすぐ近くにいる椅子に腰かけて、仕入れに行った夫たちを待っている。何番線に自分が乗る車両が入ってくるのかは表示があるまで駅員にもわからないらしい。20分〜30分ほど待つと電光掲示板に表示されるので、それを見てホームをめざす。私はホームに上がってから売店のコーヒーを飲んだ。リヨンの駅発11時4分、スイス・ジュネーブ中央駅着12時57分、1時間57分間の乗車となる。
ジュネーブCFF(中央)駅13時36分発、なので、乗り継ぎ時間30分ほど。15分ほど前に乗車ホームの表示がわかり、3番線へ。待っていると夫が一人でどこかへ。また何も言わないで勝手にウロウロは困るな〜と思っていたら、夫があわてて走ってくる。「乗車ホーム、変更! 荷物持って4番へ!」[えっ〜!そんなことあるの??」と女性陣。「早く! 急げ! 急げ!」<時間にして1,2分しかないじゃない!>「日本じゃ、こんなこと考えられな〜い」と女性陣。夫は「アナウンスがあったかも知れない、フランス語で」、F氏は「アナウンスなしで変わることもあるしな〜」と。出発間際の満員列車に何とか追いついて、駅員や乗っている人に「ジュネーブ?」と念を押すと「そうだ」というので乗り込む。いっぱいで誰もスペース空けてくれないのを、荷物を押し込んで無理やり身体ごと入る。セーフ!! でも、まあ、なんという満員状態。みんな大きな荷物を持って、みんな山へ行くスタイル。
ジュネーブ中央駅13時36分発ブリグ行き、ヴィスプ駅着15時52分、2時間16分の乗車。

この時ほど夫に感謝したことはない。夫があの時気づかなかったら、今頃ホーム変更に気づかず、乗りそこなっていたと思うと、感謝、感謝です。列車連結器の中ほどのトイレ前と荷物入れの前に荷物を置いてその上に座ることに。隣には車両に直に腰を降ろして本を読んでいる人も。私たちは斜めはすかいに窓の景色を見ながら、ほっと一息。そして、何と、トランクの上に座って遅い昼食のサンドイッチを。これが美味しかった。フランスのパンは美味しい。1時間半ほど経つと、座席も少しづつ空いてきてバラバラに座ることができるように。ヴィスプの駅は駅舎の長さに鏡面が施されて、向い側の山並みが映るようになっている。いよいよスイスの山へやってきた!

ヴィスプ駅発16時25分発、最後の電車に乗って、ツエルマットへ向かう。車窓の風景がすばらしい。1時間9分の乗車。17時34分ツエルマット駅着。
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すぐ、去年夫が山仲間と行って、レストランの料理が素晴らしかったからとワザワザそのホテルを予約したLe Mazot Zermattへ。町中を少し外れたところのに、小さな山小屋のようなホテルがあった。鍵は開いていて誰もいない。一階は食堂。開けてみると入口のすぐ横に壁掛け電話があり、電話をするようにという掲示が。指示通り電話をすると女性オーナーが「部屋に入って下さい」と。これで、受付、終了! どなたか先客が階段から降りてきて、ごあいさつ。狭い階段を荷物をかかえて、二階へ。部屋の鍵はついたままになっている。なんと不用心というか、おおらかな?というか。入ってびっくり、山小屋風の設えに窓の外を見てビックリ! マッターホルンが見える! 浴室からも、ベッドルームからも。それにベランダがついていて、Fさんの部屋のテラスと外からつながっている。これは、素敵!!

まだ、まだ、時間はあるので、散歩に。外に出て、夫がホテルの脇のレストラン(去年ここで美味しい料理を食べたという)の張り紙を見て声をあげる。オープンは25日からと書いてある! レストランのお料理目当てでこのホテルに決めた夫としては愕然の事態。予約の段階で女主人とレストラン目当てと言ってあるのに・・・と。「きっと、聞かれなかったことには答えない、ということよ。日本なら申し訳ありません、シーズン前でやってないけどよろしいですか?というところだけど」と私。F氏も「それは、確かめない方が悪いやろう」と。「でも、マッターホルンの見える部屋にテラス、充分以上だから」と3人で慰める?ことに。
代わりに美味しいレストランを見つけ、満足してホテルに戻る。夕闇の中にマッターホルンの姿が見える。