政権交代のゆくえ(山口次郎北大教授の記事より)

5月14日(金)の日経朝刊31面「経済教室」に民主党政権のこれまでとこれからについて山口次郎氏が書いています。
先日、梅田へ映画を観にいった時、Uさんとお昼にサンドイッチを食べた時や行き帰りの電車の中で政治の話になりました。
Uさんは「鳩山さんは情けない」と言い、私が「普通の感覚ではないよね、常識的にはしないことをしてるから…」と言いよどんでいると、「馬鹿か賢いかどっちか、という話でしょ」と端折ってしまって、「馬鹿やと思うよ。辞めるべき」と、バッサリ。私は「7月の参院選挙、どこへ入れたらいいのか迷うよね〜」と。その私の迷いに答えるかのような今回の記事でした。(山口次郎・58年生まれ。東大法卒。専門は行政学

山口氏の立場が解りますので出だしから少し引用してみます。

・・・長年、民主党を軸とする政権交代の必要性を説いてきた筆者にとって、この政権の「敗因」を論じることはつらい作業である。しかし、鳩山政権が何を達成し、どのような限界にぶつかったのかを明らかにしなければ、日本の政党政治は前進しない。この政権がマヒ状態に陥った最大の理由は、民主党政権交代を自己目的としたこと、あるいは実体的な政策転換について充分な展望を持っていなかったことに尽きる。半世紀以上も続いた自民党政権を倒すことがそれ自体目的となったことは仕方ない。しかし、それは政界関係者にとっての話である。政権交代がよりよい社会をつくり出すことにつながらなければ、それは民主党の自己満足で終わってしまう。

Uさんとの話の続きですが、「マニフェストにいつまでも拘って何考えてるの? 若い人たちは現金もらうより、働き続けられる環境を整えて欲しいと言ってる人が多いよ〜 間違ってると思えば訂正すればいいのに・・・」「訂正した方が支持が増えると思うよね〜」。
主婦の政治談議のこの点と重なる部分を山口氏の記事の締めくくりから引用すると:

初めて政権を取ったのだから、試行錯誤があるのは当然である。問題は、錯誤を自ら認識し、それを修正する能力があるかどうかであろう。(略)
政権交代の経験を無駄にしないために、民主党は次のような課題を自ら解決しなければならない。
第一に、この政権は何をするために生まれたのか、何をしたいのか、理念を共有することが肝心で、中期的なビジョンを打ち出すべき。
第二に、政策調査会を復活させ、与党の政治化の総力を結集する体制を構築する必要がある。税制や社会保障の改革など、基盤的な政策転換を進めるためには力を結集し、議論を蓄積した上で国民に提起すべき。
これら課題を実現するのは政府与党のリーダーの役割である。指導部が選挙至上主義に陥ればかえって有権者民主党から離れていく。政権の危機を迎えた今、政権交代と政策転換という原点に立ち戻り、自己修正を図ることこそが民主党の唯一の活路である。

「原点に戻り、自己修正が大事」ということですが、そもそも

民主党が本来目指すべき理念は、3つの「ポスト」として示される:
第1・ポスト冷戦=米国の一極主義的な軍事行動への追随を見直し、アジアで平和をつくり出すという方向性。
   鳩山政権は、核軍縮への積極的な姿勢、東アジア共同体構想、米軍普天間基地海外移転など、この方向のアジェンダを打ち出した。
第2・ポスト物質主義=成長の限界を踏まえ、持続可能性を鍵に経済のパラダイムを組み替えること。
   鳩山首相は温暖化ガスの25%削減を打ち出し、この方向に踏み出すことを公約した。
第3・ポスト権威主義=市民の能動性を強化し、開放的な多文化社会を作ること。
   民主党はかねてより夫婦別姓や市民活動の支援などを唱えてきた。
これらの理念に関して、当初は民主党も的確な方向感覚を示していた。同時に、これらのビジョンは旧時代との決別を打ち出すものであり、冷戦時代や権威主義を懐かしむ側からは強い反対を受ける。そこでこそ、政府与党の指導者の確信の度合いが問われる。残念ながら、この点でも、民主党の信念は不十分で、反対に遭うとブレが目立つし、また、大局的な理念を具体的な政策につなげる知恵や戦略にも欠けていた。
政権失速の大きな要因としては、政治とカネを巡る疑惑もある。資金疑惑そのものより、疑惑解明の姿勢や方法に関して民主党らしさが発揮されなかった点に、不信の原因がある。

では、これからいかにして政権の立て直しが可能なのであろうか。
最大の前提は、仮に米軍普天間基地移設問題が5月中に決着しなくても、鳩山首相が政権を投げ出さないことである。国民が選んだ政権が1年も持たずに瓦解すれば、政党政治に対する国民の期待も雲散霧消する。自民党政権末期と同じ混乱を繰り返してはならない。
その上で、民主党は8ヶ月の政権運営を虚心に点検し、人事、政権運営、政策の各面で、どのような点で見通し誤ったのかを自ら明らかにする必要がある。

その後、「原点に戻り、自己修正」という結語・締めくくりにつながります。
私も去年の夏、もう自民党は嫌という思いで、「政権交代」のための一票を民主党に入れました。多くの人が同じ想いだと知りました。半世紀以上も続いた体制が変わるのにその抵抗や反動、軋みが大変なものであろうと想像はつきました。今がその渦中だろうと思います。その1年にも満たない今の段階で辞めろとは言いたくないし、このままで良いとはとても思えないし・・・
そこで今、原点に立ち戻って、修正すべきは修正してという、この山口氏の提言を民主党が聞き入れて変わって欲しいと切に願います。方向は間違っていない、ブレないで、民意を汲んで、少しでも前進するなら、任期いっぱいやってみてほしいと思います。
政治指導者のレベルは国民のレベルの反映ともいいます。寄って集って出る杭をたたき、ブレる杭を引っこ抜いていては、いつまでたっても私たちが望む政治は実現しない。少し辛抱強く見守って育てていくことも必要かな〜とも。
その為にも声を挙げることは大切ですが。 ピエール・ド・ロンサールの初めての蕾