「まさに天の時を得た。全力を挙げて発議する」(衛藤晟一)と「時機を逸した発議」(あいば達也)

◎選挙結果に「まさに天の時を得た」と憲法改正の発議に勢いづく日本会議。一方、絶好の機会は解散前で、安倍首相は時期を逸した。改憲勢力の維新や公明党希望の党は元気がない。おまけに、損得では動かない理念の党である立憲民主党が誕生した。永田町の数の論理にくみしない、まさに無党派層を票田とする政党を生んでしまった今、安倍首相も簡単には動けないという見方があります。二つ、並べてみます。

衛藤晟一 首相補佐官
「まさに天の時を得た。全力を挙げて発議する」時事ドットコムニュース 10月25日


 衆院選の結果を受けて、注目を集めているのが憲法改正自民党公明党改憲発議に必要な310議席を上回る議席を獲得している。これに希望の党日本維新の会を加えると全体の8割を改憲勢力が占めることになる。


 安倍首相は22日の記者会見で「私たちの案を具体的に取りまとめ、そのうえでできるだけ多くの人に賛成してもらえるよう汗を流したい」と語ったが、翌23日に党本部で行われた記者会見では政治だから皆さますべてに理解をいただけるわけではない」と強調与野党で合意形成できない場合は、改憲に前向きな勢力だけで発議に踏み切る姿勢を示した朝日新聞デジタル 10月23日)。


 25日、憲法改正を目指す運動団体「日本会議」が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の集会に出席した衛藤晟一首相補佐官天の時を得たと高らかに宣言してみせた。主催者の一人で、ジャーナリストの桜井よしこ氏は「安倍政権のもとで憲法改正を成し遂げなければならない。このチャンスを逃したら本当に後は難しくなる」と呼びかけた朝日新聞デジタル 10月25日)。


© 文春オンライン 「天の時を得た」と高らかに宣言した衛藤晟一首相補佐官 ©AFP=時事 )


「天の時を得た」とは大きく出たものだ。共同通信社が投票日直前に実施した全国世論調査では、安倍首相の下での憲法改正に賛成は34.9%で、反対が51.3%と大きく上回っている。「安倍首相の下での」という質問の仕方がミソだろう。改憲そのものの議論は認めるが、安倍政権下での改憲には反対という声が大きいのである


 安倍政権下での改憲議論をリードしているのは「美しい日本の憲法をつくる国民の会」だ。同会は以下の7つの項目を改正の対象に挙げている(BuzzFeed NEWS 2016年6月28日)。


「前文」…美しい日本の文化伝統を明記すること
「元首」…国の代表は誰かを明記すること
「9条」…平和条項とともに自衛隊の規定を明記すること
「環境」…世界的規模の環境問題に対応する規定を明記すること
「家族」…国家・社会の基礎となる家族保護の規定を
「緊急事態」…大規模災害などに対応できる緊急事態対処の規定を
「96条」…憲法改正へ国民参加のための条件緩和


 この中で最優先とされているのが「緊急事態条項」だ自民党改憲草案にも緊急事態条項について明記されている2015年11月の参議院予算委員会で安倍首相は大規模な災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るため、国家そして国民自らがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置付けるかについては、極めて重く大切な課題であると考えています」と述べていた。


 一方、憲法学者の木村草太氏は、「緊急事態宣言中、三権分立地方自治基本的人権の保障は制限され、というより、ほぼ停止され、内閣独裁という体制が出来上がると批判している


日本会議」の田久保忠衛会長は、安倍自民の改憲案を「生ぬるい」と一喝。「安倍政権には左からでなく、右からのパンチの方が効くんです」と言い切った(AERA dot. 10月25日)。むろん、右からのパンチを放つのは「美しい日本の憲法をつくる国民の会」だ。憲法改正の議論がどう進んでいくのか、注視が必要だ

(引用元「文春オンライン」:https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e3%80%8c%e7%ab%8b%e6%86%b2%e3%82%88%e3%82%8a%e5%b8%8c%e6%9c%9b%e3%81%ae%e3%81%bb%e3%81%86%e3%81%8c%e3%82%88%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%81%ae%e3%81%ab%e3%80%8d%e7%b7%8f%e9%81%b8%e6%8c%99%e5%be%8c%e3%82%82%e5%ae%89%e5%ae%9a%e3%81%ae%e7%8f%8d%e8%a8%80%e9%80%a3%e7%99%ba%e4%b8%ad/ar-AAu8Zfm?ocid=spartandhp#page=2
◎これに対して、こんな見方もあります。「世相を斬る あいば達也」さんのブログです。個別のイシューでは日本国民は判断を間違わないという内容で、そう簡単にはいかないだろうというのですが、途中から引用です:選挙にもいかない巨大な無党派層がどう動くか…これが問題です。

●“眠れる獅子”のめざめ 選挙から見えてきた安倍晋三の脆さ

(前略)


 要するに、安倍晋三は、何をどのようにして改憲発議すべきか、強がっているが判っていないそう、発議して、国民から致命的な駄目出しを示されることを怖れているつまり、国民投票過半数を得る自信がない。権力闘争では、官邸主導を徹底的に強め、強権的恐怖政治に近いものを行い、実際権力を得た。国会も、霞が関も、警察・検察も、最高裁もわが物にした。マスメディアも、経団連も、連合の一部も、農協も、創価学会も、あらゆる忖度機能が有効なシステム全体をも支配下に置いた。


 国家を形づくっている、あらゆるものを概ね支配下に置いたのになぜか不安恐怖症に陥っている。これだけの支配構造に君臨する権力者が、何を怖れているのか、解散以前にも2/3議席以上の数的支配があったにも拘らず、安倍晋三は、手にした権力の最終的行使を躊躇っていた。実は、解散前の方が、改憲発議の環境整備は整っていた。維新も元気だったし、自民公明も元気だった。民進党は内部控抗争に明け暮れ、山口組状態だったのだから、解散前に改憲発議すべきだった。


 解散総選挙後に気づいたことは、日本維新の会公明党脆弱性が表面化してきてきたことだ。表立った数値は良好なのだが、官邸の求心力も心なしか弱まっている何故なのだろう、それは、意外に簡単な理由だ権力掌握の手続きが法に則って正確に行われていないからだ。つまり、安倍晋三は、自分のやってきた権力掌握の方法に嘘があることを、自分自身で、よく理解しているから、詐欺的手法で作り上げた砂上の楼閣の脆さに怯えていると云うことだ。頼みにしていた希望の党と云う癖玉も上手くは機能しなかった。


 テクニックの限りを尽くし、詐術を弄して手中に収めた絶対的権力を安倍晋三は使いあぐねている。権力を握り、改憲を行う段階で、政治的テクニックが入り難い、国民投票と云う正念場で立ち往生しているのが現状なのだろう。解散総選挙以前よりも、数字的なもの以上に気に障る政党が誕生してしまった。政党政治を凌駕するような政党、立憲民主党が誕生したことだ損得の政党政治掌握には、損得の差配をすれば良いのだが、善悪や正義不正義と云った理念性のある政党を扱うことは容易なことではない。


 そう云う意味で、その政党が野党第一党になった現実は、安倍官邸にとって、誘導忖度的な権力のコントロールが出来ず、彼らを御する手立ては皆無と言っても過言ではないこの立憲民主党共産党のように限界範囲が見える政党であれば怖くはない。しかし、草の根政党と云うことは、5割近い無党派層そのものなわけで投票率が10%上昇したら、一瞬で政権交代の受け皿になることは確実なのである


 このような環境で、改憲派が望むような改憲項目を国民投票に掛けると云う行為は、無党派層含め、多くの日本人が有している個々的○×能力に晒されるわけで、怖くて怖くて発議する気になれないだろう枝野が、永田町の権力ゲームに参加しないと宣言したことは、“無党派党”を標榜していると云うことで、日本政治の無党派層が票田になるので、そこに向かって政治運動を行なうことになれば、安倍官邸が権力掌握に使った、損得分配ゲームは通用しなくなると云うことだ。今後の政党の動きを、じっくりと観察できる、非常に楽しい状況が生まれている。


 日本社会に存在する無党派層の正体は不明だが“眠れる獅子”であることはたしかだこの日本社会に存在する“眠れる獅子”である無党派層が、今後どのような行動に出るのか、あくまでも眠ったままなのか、そこが、今後の政治の核心だろう。損得と云う合理ではなく、正義感や空気感や愉快犯的なポピュリズムの一種の風が一気に吹き荒れる状況は、日本の政治を一変させるだろう。おそらく、自民党霞が関が、最も恐れているのは、この“眠れる獅子”の存在なのである

★全文はコチラ:http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/22370bf02d5897627d4b50bccf405a18?fm=rss