見直しが必要な国民投票法(制度の不備について)


●安倍首相は5月3日の憲法記念日に、日本会議系の改憲集会にビデオメッセージを送りました。その中で、自衛隊憲法に書きこむことについて「 わが国の安全を守るため、命を賭して任務を遂行している者の存在を明文化することによってその正統性が明確化されることは明らか」と。改憲を唱える人たちは、”自衛隊員の名誉や士気”を改憲の理由によく持ち出します。4月26日の「そもそも総研」の船田氏のインタビューでも全く同じ発言がありました。でも、命を賭して仕事をしているのは警察官も消防士も同じです。まして自衛官憲法遵守を宣誓して服務についているのです。

山崎 雅弘さんがリツイート

◆布施祐仁
@yujinfuse 5月4日

自衛官の服務の宣誓は「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し」で始まり、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」で終わる。


防衛省 海上自衛隊
‏@JMSDF_PAO 5月2日
【海自 Instagram更新情報】「宣誓」⇒ https://www.instagram.com/jmsdf_pr/

5月3日は「憲法記念日」です。自衛官は「服務の宣誓」で、日本国憲法及び法令を遵守することを誓います

#海上自衛隊 #自衛隊 #憲法記念日 #宣誓 #法令遵守
#instajmsdf #ig_jmsdf #jmsdf #jsdf #constitutionday


◆Yukky
‏@yurinoki23 5月4日

わが国の安全を守るため、日々命を賭して任務を遂行しているのは、自衛隊だけではない。警察官、消防士、海上保安官など、様々な方々がいらっしゃる。自分が望むように改憲をしたいがためだけに、いたずらに自衛隊を利用するのはやめてもらいたいものだ。自衛隊員やその家族にも失礼ではないか。
Yukkyさんが追加

田崎 基(神奈川新聞 記者)
@tasaki_kanagawa
【速報】今年もビデオメッセージ
安倍首相「改憲に取り組む時が来た」 改憲派集会にメッセージ http://www.kanaloco.jp/article/328810

安倍首相「わが国の安全を守るため、命を賭して任務を遂行している者の存在を明文化することによってその正統性が明確化されることは明らか」と持論を展開。…


憲法改正の前に、国民投票法について考えてみないといけません。いったん改憲の方向で事が進めば、お金がモノをいう。圧倒的に資金を持っている自民党のペースで、タレントや物量総動員で、自由に改憲の広告が打てるとか。四六時中、長期間(最大で投票日までの半年)にわたって自民党の立場の改憲論を聞かされ続ければ、国民の判断力に大きな影響を与えること必至。改憲の是非の投票の前に、公平な運動ができるような法律に改めておかなければ…という問題が。まず、リテラの記事から、本間氏のインタビューを抜いて、編集部の最初と最後の記事から引用です:まず、(引用元:リテラ:http://lite-ra.com/2018/03/post-3901.html

< 安倍の改憲強行姿勢の裏で自民党電通国民投票対策 >
『メディアに操作される憲法改正国民投票』著者・本間龍氏インタビュー
安倍首相が党大会で「改憲」強行を表明! 裏では電通に依頼して国民投票に向けた大規模広告戦略を計画
2018.03.25


・森友問題によって、改憲日程が狂ったなどとする報道もあったが、むしろ逆で、森友隠しのためにも、死にもの狂いで「改憲」を政治日程に乗せ、強引に発議まで持ち込もうというわけだ。実際、自民党憲法改正推進本部の船田元本部長代行は『深層NEWS』(BS日テレ)に出演し、年内に憲法改正の発議をしたいと明確に示した。


・しかし、こうした動きについて、国民やメディアの間にも危機意識はほとんど広がっていない。というのも、世論調査でも憲法改正についてはまだ反対が多く、「発議されても国民投票過半数がとれるはずがない」という楽観論があるからだ。
 だが、これは大きな間違いだ。もし一旦発議されてしまえば、改正を食い止めることは難しいだろう。というのも、その後の国民投票に大きな落とし穴があるからだ。


・ あまり知られていないが実は、現行の国民投票法(「日本国憲法の改正手続きに関する法律」)は、発議した側と資金が潤沢な集団、つまり与党・自民党に絶対的に有利になっているのである。そのなかで大きな役割を果たすのが、大手広告代理店が躍動する“改憲広告”の存在だ。


<本間氏インタビュー記事省略>


 本間氏が語るように、改憲発議を目前にしてもなお、護憲派は有効なPRを準備できずにいる。その間、改憲派自民党を中心に電通とタッグを組み、着々とリサーチや世論誘導を進めている。 すでに、世論調査の傾向を見ると、ずるずると改憲の方向へ引きずられている。たとえば共同通信が今年1月13・14日に行った調査では、憲法9条に自衛隊を明記する首相の提案には反対52.7%で賛成35.3%を大きく上回った。ところが、同じ共同通信が3月3・4日に行った調査では、同じ質問で賛成が39.2%と上昇し、反対が48.5%とついに過半数を割った。
 何度でも言うが、安倍政権による憲法改悪は、緊急事態条項の新設からもわかるように、現行憲法で保障された国民の基本的人権や自由を奪い、国家に従順させようとするものに他ならないしかし、現行の国民投票法は発議した側と金持ち、つまり自民党に圧倒的有利となっている。このまま状況を黙って見ているだけでは、改憲は食い止められない。その危機感を共有し、一刻でも早く行動に移すことが求められている。
(編集部)

●5月3日の憲法記念日、この日のNHKスペシャルは見逃してしまいましたが、「持論公論」は見ました。リテラの指摘している問題をコチラでも取り上げていました。全文を引用です:(引用元:www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/296797.html)http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/296797.html

憲法71年 改正議論と国民投票」(時論公論2018年05月03日 (木)
安達 宜正 解説委員
清永 聡 解説委員


日本国憲法は施行から71年を迎えました。
憲法は改正をめぐる議論が続いていますが、最終的には私たちの国民投票で決まります。この国民投票の制度について、今課題が指摘され、見直しを求める声も出ています。憲法をめぐる議論の現状と、国民投票の課題についてお伝えします。


安倍総理の発言と4項目の考え方】(清永)
5月3日の憲法記念日には、憲法を守る立場や、改正を求める立場の人たちによる集会が、全国各地で開かれました。今年の憲法記念日、安達さんはどのようにとらえていますか?

(安達)
憲法改正が初めて具体的な政治課題となりつつある。そういう中で迎えた憲法記念日だと思います。安倍総理は3日、改憲派の集会にメッセージを寄せ、「この1年間で憲法改正論議は大いに活性化した」と述べました。2020年までに改正憲法施行を目指すとした、みずからの去年の発言がそのきっかけになったということでしょう。確かに自民党は3月の党大会で安倍総理が提起した4項目の考え方をまとめ、国会の憲法審査会に示したいとしています


(清永)
その4項目とは憲法9条への自衛隊明記、教育の無償化、緊急事態対応、参議院の選挙区の合区解消。この4つですね。

(安達)
そうです。焦点は9条です自民党では第2項の戦力の不保持、交戦権の否認を維持するかどうか議論が分かれました結局、1項の戦争放棄とともに2項も維持。自衛隊を存在明記するという方向となりました。ただ、国会の現状は森友学園加計学園の問題などで与野党が対立。野党からは議論を行う環境ではないという指摘があります。



一方で憲法改正国民投票法をめぐり、制度の見直しが必要ではないかという議論与野党から出始めました。この法律は2007年、第1次安倍内閣で成立。憲法改正は衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成で発議、国民投票に付されますが、国民には制度そのものの理解が広がっていないという指摘があるからです


【国民の意識は】(清永)
国民投票と言ってもなかなかイメージがつかみにくいと思います。今年市民グループが行った模擬の国民投票では、9条をテーマに議論した上で、改正案に対し、参加者が賛成か、反対かに○をつけて投票しました。こうした光景は選挙と似ています。
しかし、投票までのルールは、選挙と大きく異なります。



憲法改正の発議から投票日までは60日から最大で180日あります。これが国民投票の運動の期間ということになります。選挙では認められない戸別訪問も可能です。組織による多数の買収は禁じられていますが、個人から個人への買収を禁止する規定はありませんポスターの枚数、街宣車の台数も制限はありません。運動費用にも上限はありませんこうした運動が最大でおよそ半年続くこともあり得るのです。


こちらは4月に行われたNHKの世論調査です。「国民投票について、進め方など具体的な制度をどの程度知っているか」聞きました。まったく知らない、あるいはあまり知らないという回答は、合わせて59%。6割近くがよく知らないと答えました。国民投票に対する理解が十分に広がっていないことを裏付けています。

(安達)
それに加え、国会では現行の制度そのものに不備があり、見直しが必要という議論があります。論点は2つです。



1つは成立から10年以上たち、仕組みが時代にあわなくなっているという指摘です。例えば、国政選挙や地方選挙では認められている、駅やショッピングセンターなどへの共通投票所の設置や、航海実習中の学生の洋上投票。こうした制度を国民投票は想定していません。もう1つは国会の法案審議の段階からの継続議論です。例えば、テレビやラジオのCMなどの有料広告。現行法では国民投票の15日前まで原則、自由ですが、それでは資金があるかないかで、投票結果が左右されるという指摘があります。


【課題1:有料広告】(清永)
本来、国民投票の運動期間は、改正案に賛成か反対か、多様な意見に耳を傾け、自分の考えをじっくりと深める期間のはずです。
しかし、資金があれば、朝から晩までテレビでもネットでもずっと広告を流し続けることも可能になります。専門家からは「運動期間中、憲法改正案に関するCMは禁止すべきだ」とか「何らかの上限が必要だ」という意見もあります。

特に、短時間のイメージやフレーズの繰り返しばかりが強調され、十分な議論や検討が妨げられないようにする必要があります。

安達さん、海外では広告の制限は、どうなっているのでしょうか。

(安達)
国民投票住民投票制度を見てみますと、テレビなどの有料広告をアメリカやカナダなどでは認められますが、イギリスやフランスでは禁止されています。運動の自由と公平性のバランスをどう考えるか、国によって考え方が違うのかもしれません。


【課題2:最低投票率(安達)
もう1つ、国会審議の段階からの継続議論に最低投票率導入の是非があります。
例えば国民投票投票率が前回の衆議院選挙並みの53%超だった場合、その過半数の賛成を得たとしても、有権者全体の30%以下の賛成しか得られていない可能性があります。これで最高法規憲法を改正していいのかどうかという議論です。最低投票率を導入するか、あるいは有権者の一定割合の賛成を成立の条件とすべきという意見もあります。


【課題3:公務員と教員の規制】(清永)
他にも課題があります。国民投票では、公務員と教師は、その地位を利用した運動が禁止されています。例えば先生が「賛成、あるいは反対に投票しないと単位をあげない」などとほのめかすことがこれに該当します。一方で「自分は反対だ、あるいは賛成だ」と言うだけなら、該当しないとしています。



ただ教育に関わる研究者からは「禁止の条項にあたるのではと懸念して教育現場が萎縮し、憲法を取り上げにくくなる」という意見もあります。国民投票は高校生の一部や大学生も行います。教育現場で憲法を考える機会を奪うことがないよう、十分な配慮が求められます。


【国民の意思を適正に反映できる制度を
(清永)
ここまでいくつが課題や懸念される点を見てきました。国民投票法について詳しい、慶応大学元講師の南部義典さんは、現状をこう例えています。レールや保守点検が不十分なのに、国会では列車の車両をどう改造するかばかり話し合っています。ホームには国民がいるのですが、そこまで、たどり着けるのでしょうか
国民投票の運動は、自由な議論が前提となっています。しかし、結果として公正さを損なうことがないよう、制度の見直しを求める声も上がっています。

(安達)
憲法改正論議よりも、国民投票法の改正を優先させるべきだという声は立憲民主党などの野党側や、与党でも改憲慎重な公明党に強く、自民党主導の憲法改正議論をけん制しようという思惑があることも確かです。このため、自民党側からは国民投票制度の見直しを議論するとしても、改憲論議改憲論議として前に進めるべきという声があります。しかし、憲法は国の最高法規であり、国のあり方を決める法律です。だからこそ、それを改正するかどうかの投票に至る過程で国民から少しでも疑義が出されてはならないと思います。制度に不備があるとすれば、その議論を優先させるという議論もありうると思います。



(清永)
日本国憲法の原則の1つは国民主権です。最終的に憲法を変えるかどうかを決定する権限を持つのは、主権者である私たちです。国民投票では、その私たち一人一人の考え方が、問われることになります。
それだけに、憲法への理解を深め、有意義な議論を重ねて、国民の意思が適正に反映される。まずは、そうした制度を実現してほしいと思います


(安達 宜正 解説委員 / 清永 聡 解説委員)