★坂本龍一「“無駄”を愛でよ、そして災禍を変革の好機に」 文明をバージョン1.5に進化させるために | 朝日新聞デジタルマガジン&[and] (asahi.com)
2020.5.22のESSAY
坂本龍一「”無駄”を愛でよ、そして災禍を変革の好機に」文明をバージョン1.5に進化させるために(より)
「芸術なんて役に立たない」
そうですけど、それがなにか?
積載量過剰のまま猛スピードで突き進む資本主義文明がわずかなりともバッファを取り戻せるのかどうかは不明だが、そうしたゆとりや遊びという「無駄」をどれだけ抱えているかは、少なくとも社会の成熟度の指標となる。
今回のコロナ禍であらためて顕わになったのは、この国の文化支援の貧しさだろう。ドイツの文化相が「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、我々の生命維持に必要」とのメッセージを送り、文化施設と芸術文化従事者の支援に手厚い予算を組んだのとは対照的だ。
政府や行政の支援が乏しい代わりに、クラウドファンディングなどでアーティストやミュージシャンを支えようという動きが広がっているのは、本当にうれしいですね。できれば、フロントにいるアーティストだけでなく、裏方として舞台設置やライティング、音響などに携わるスタッフさんたちも含めて支える動きがもっと広がってほしい。彼らあっての僕らですから」
でもね、根本的には人間にとって必要だからとか、役に立つから保護するという発想ではダメです。芸術なんてものは、おなかを満たしてくれるわけではない。お金を生み出すかどうかも分からない。誰かに勇気を与えるためにあるわけでもない。例えば音楽の感動なんてものは、ある意味では個々人の誤解の産物です。理解は誤解。何に感動するかなんて人によって違うし、同じ曲を別の機会に聴いたらまったく気持ちが動かないことだってある」
坂本さんは「音楽の力」などという言葉は大嫌いだと以前から公言している。
「僕自身、音楽を聴いて癒やされることはありますよ。でも、それは音楽自体が力を持っているということではない。僕の音楽に力なんてないですよ。何かの役に立つこともない。役に立ってたまるか、とすら思います」
かつてナチス・ドイツはワーグナーの音楽を国民総動員に利用するとともに、ゲルマン精神の涵養に役立つ芸術とそうではない芸術を峻別した。芸術に体制賛美を担わせ目的に沿う作品のみを支援したのは、戦時中の日本や旧社会主義圏の国々も同様だ。
「そういう悪い見本が近い過去にあるんです。文化芸術なんてものは、必要があって存在するわけではないと思った方がいい。だから、行政の側が支援対象を内容で選別することはもちろん、作り手側が、何かに役立とうとか、誰かに力を与えようなんて思うことも本当に不遜で、あってはならないことだと思います」
「芸術なんていうものは、何の目的もないんですよ。ただ好きだから、やりたいからやってるんです。ホモサピエンスは、そうやって何万年も芸術を愛(め)でてきたんです。それでいいじゃないですか」
自らの内に「無駄」を包摂しそれに親しむのか。それとも、余裕を失った果てに更なる効率化・合理化を追い求めるのか。私たちの社会は、どちらへ向かうのだろう。
◎昨日の「syuueiのメモ」(神宮外苑再開発に「何かおかしい」と図面を片手に学術調査、女性都市環境学者の原点 中国、ブータン、東日本大震災復興でコモンズ再生を実践 2023/4/4 - shuueiのメモ (hatenablog.com))さんも取り上げておられましたが「サイエンスに基づいた論理的な闘い」を続ける中央大学研究開発機構教授で、<今年1月25日に、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関「イコモス(国際記念物遺跡会議)」国内委員会理事として、事業者による神宮外苑再開発の環境影響評価書(アセスメント)が「非科学的だ」と訴える記者会見>を開いた石井幹子さんの記事を読むと「神宮外苑再開発」の問題点がよくわかります:
神宮外苑再開発に「何かおかしい」と図面を片手に学術調査、女性都市環境学者の原点 中国、ブータン、東日本大震災復興でコモンズ再生を実践 (msn.com)
◎4日(火)の夜、MBSの11時のニュース番組を途中から見ました。ウクライナの青年がバイオリンを弾いていました。
どうも昨年、ロシアのウクライナ侵攻で、戦場となったがれきの中でバイオリンを弾いている青年イリア・ボンタレソフさんを見かけた坂本龍一さんがイリアさんのために作曲した曲を弾いているようなのです。コーナーのタイトルが「バイオリニストに託した思い―坂本龍一さん」となっていますし、右肩に「♪Piece for Illia」と書かれています。録画のセットをする間が無く、慌ててカメラを連写して記録してみました。
坂本さんの悲報を受けて、ボンダレンコさんは『今でも、なぜ坂本さんが・・・』
ボンダレンコさんが語る坂本さんの教え
「音楽の形式に拘らず、シンプルにどんな音がするかが重要。
人々が美しいかどうか感じるのは最終的に音だから そこにもっと注目すべきだと」
坂本龍一さんのコメント
「武力により主権を持った他国に侵略することは絶対に許してはいけないと思います。
ロシアの犯罪に対して必ず償いをさせるべきだと思います。
同時に、ロシアには良心を持った沢山の人々がいます。
彼らを何とか世界はサポートできないかと思います。」
「イリア君の姿が象徴的ですが、困難な状況でも音楽を奏することは大事です。
それによって世界の多くの人々に気づきを与えられます。
勇気、励まし、癒しを与えることもできると思います。」
イリア「僕たちの国では、今戦争が起きているが
それが作曲を止める理由になってはいけない。
音楽家なら演奏や作曲活動を止めてはいけない。」
アーティストならその活動を止めてはいけない。
坂本さんはその素晴らしいお手本だと思う。
彼は常に自分のやり方を貫き諦めなかった。」