「善きことは、カタツムリの速度で動く」

昨日のザックジャパン、長友、本田、中村を欠いての北朝鮮との第一戦。いいところまで持っていけるのに最後の詰めが出来ません。そんな場面が前半、後半、一体何回あったのか・・・と言うぐらい。最後の最後のロスタイムに入っての怒涛の攻撃、段々ゴールに近づいてきます。これは行けるかも・・・と思ったらギリギリで貴重な一点が入りました。嵐の後の晴れという感じの大変な試合でした。
さて、日経新聞のスポーツ欄から阿刀田さんの署名入りサッカー記事が消えて久しく、少し淋しい思いをしていますが、代わりに目にするのは武智孝徳という名前です。その武智さんの署名入りのスポーツ欄のコラム「アナザービュー」、9月2日(金)の朝刊からです。
市民権得た『サッカー語』」というタイトルで、政治のことを書いています。
8月31日の民主党両院議員総会で野田義彦新首相が語った言葉、「皆さんにはミッドフィルダーになってほしい。私も含めてセンターフォワードになりたい人はたくさんいるが、この党に今一番必要な役割は一人ひとりのかけがえのない能力が存分に発揮できる組織づくりだ」、「全体を見渡して戦略的にパスを回せるミッドフィルダーの集団が必要です」と、サッカー語を使ったことについての記事です。
Jリーグがスタートしたのは1993年でした。この年は私にも特別の年でした。二人の小学生だった息子たちの教室に転校してきたデンマーク人一家と親しくなり、帰国されて10年後の日本再訪がこの年でした。我が家に立ち寄って下さってお話したとき、ご夫妻が10年前と比べて一番の変化は、サッカーのJリーグがスタートし日本人がサッカーを楽しむようになったことと驚いていました。10年前は野球だったのにと。
で、コラムの筆者は、その1993年は、「オフサイドってなに?」という時代で、記事を書くにもサッカーの専門用語をどの程度使っていいのか悩んだ事から考えると「隔世の感を覚えた」と書いています。「一国のトップになろうとする人がこう話して、何が問題でどうしたいのか、サッカーをイメージしながら通じてしまう世になっていた。本当にいつの間にか。」「それは、サッカー文化がこの国に着実に定着してきた証でもあるのだろう。」
そして、面白いと思うのは次の件(くだり)で、これぞ筆者のアナザービュー、別の見方ではないかと思いますので、引用してみます。

 あるいは、現在の混乱した日本の状況を表現するのにサッカーが今、一番しっくりくるのかもしれない。どんなにヘボな草野球でも秩序(打順、守備位置)らしきものは必ずあるが、一つのボールを奪い合うサッカーは下手をすると無政府状態に陥る。ボールの代わりにひたすら相手のスネをけるような。


 新首相の弁で政界にはFW(フォワード)気質の人が多いことを改めて知った。日本のサッカー界は逆でMF(ミドルフォワード)にタレントが出る。フリーな選手が横にいてもパスを出さないでシュートを打つ、外しても平気で謝りもしない。ゴーイングマイウェイ。そんな巨大なエゴの塊が日本サッカーに見当たらないと思っていたら……。生息する場所が違っていたのでしょうか。 

今度はパスを回して確実にゴールを決めるサッカーを目指す新政権の誕生とその仕事ぶりをユックリ見守りたいと思っています。

「ゆっくり力」ですべてがうまくいく (集英社文庫)

「ゆっくり力」ですべてがうまくいく (集英社文庫)

先日のお茶のみ会で、借りていた指揮者の佐渡裕の本を返し、私からは原発関連の新書をお貸しした時、代わりに貸してくださったのが、斉藤茂太著のこの本でした。読みやすくて、直ぐ読み終えたのですが、<第1章「カタツムリ」の速度で進もう>の2つ目のエピソードが今の私には心に残ります。
今日のブログのタイトルにした言葉「善きことは、カタツムリの速度で動く」はインドの哲人、マハトマ・ガンジーの言葉です。
著者は、非暴力で一生を平和運動に捧げた足跡を記した広告を取り上げて、そこに引用されているガンジーの言葉を書いています。


  彼の運動を象徴したのは”塩の行進”。
  イギリス人に専売されていた塩を自分たちで作らんと、
  アーシュラムから海岸までの385キロを24日間かけてゆっくりと歩く。
  「善きことは、カタツムリの速度で動く」
  それは数百万人の奇跡の大運動となった。


そして、斉藤茂太さんは言います。
「急いではいけない。早く結果が出ることばかり望んではいけない。ゆっくりゆっくりでも力が集まり、努力が積み重ねられれば、それは必ず大きな力となってよい結果を生みだす。これは、人がなにか身につけよう、なにかを成し遂げようとするとき、もっとも重要なアドバイスではないか。自分自身に対してはもちろん、周りの人やあるいはわが子に対してもつねに語りかけてあげなければならない言葉。
『早く、早く!』ではなく、『ゆっくり、ゆっくり』がよい結果をもたらすのだ。」
私は、これを政権交代に賭けた思い、脱原発に焦る自分に言い聞かせたいと思いました。
善きことは、ユックリでも努力が積み重ねられれば、大きな力となって必ずよい結果を生み出すでしょう。