原発の新安全基準骨子案の意見募集とその問題点(「そもそも総研」から)

原子力規制委員会が安全基準の骨子案を出してから新聞記事の解説を残していました。そのうちにと思っていたら、先週の木曜日(7日)のモーニングバード、玉川徹キャスターの「そもそも総研」で取り上げられました。そして、東電の国会事故調に対する誤魔化し事件が発覚。先週はバタバタと遊んでいましたので、今日あたりと思っていましたら、「みんな楽しくHappy♡がいい♪」さんが全文書き起こしをアップされました。放送全体は私のアンテナから入って「Happy〜」さんの12日のブログで是非:<これを見てパブリックコメントを出そう!「そもそも新安全基準で原発は本当に安全になるの?」そもそも総研2/7(内容書き出し)>
番組冒頭の原子力規制委員会の安全基準の骨子案についてのパブリックコメント」の募集期限は今月末まで。コチラで:http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130206.html




◎ここでは、途中から録画した番組を私なりにメモ書きしてみます。
先ず、安全基準の骨子案は、原子炉の周辺に安全のための対策、例えば津波地震、テロなどに対する備えを新たに付け加えるようにという考え方だが、原子炉本体を問題にしなくていいのか?、肝心の原子炉についてはどうなのだ?という問題提起から始まっています。

・最初は東大名誉教授の伊野博満氏:炉の設計自体の問題(圧力容器や格納容器の大きさ)と材料の問題を指摘します。配管とか炉そのものの材質が年月とともに粘りが無くなるという材質の脆(もろ)さ=脆弱性の問題NHK「どうする老朽化原発(脆性破壊の危険)」(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20120218/1329556063)がある。40年運転制限制というのをしっかりと盛り込まなければいけないのだが、今回はそれがまだ骨子には入っていない。それにもう一つ、出てきたこの骨子を事業者が「値切ろうとしている」。「値切る」という意味は、もう少し安全基準を緩めるという意味と、安全基準を満たすのは、時期的に先でもいいだろうと、その両面から値切ろうとしている。これが一番問題だ。
例えばこの骨子案では遠隔操作でベントを行う特定安全施設の第2制御室を設けるということになっているが、「更なる信頼性を高める施設」という位置づけで、当面はなしでも動かす、そのうちやれば良いととれる。しかし、規制委員会の姿勢は「安全対策を出来るものはすべてやる」であるべきだ
・ところが、5人の委員の一人である更田豊志委員の発言に注意。「最初から安全設備を全部揃えればいいじゃないかという意見があるが、現実的には実際要求するものを全てそろうようにやると・・・3,4年という時間がかかる。それにアメリカでも事例があるが、長期停止した炉を再起動するというのは新設炉を立ち上げるよりもむしろ大きな懸念がある。原子力を全く利用しないという判断に立つんだったら別だが、利用する限りにおいてリスクを小さくと考えてやった時どういう戦略が良いかという話になる。可搬で要求できるもので、あるレベルを達成しておいて更に次のレベルのことも基準に盛り込んでおきたい」。
これは、稼働することを前提とする議論に引き込む意見であり、本末転倒。田中委員長の方針(?)にも反する意見です。
・次は、原子炉の設計に関わっていたこともある後藤政志氏の意見。「福島の事故原因が地震津波かもわかっていない。しかもその原因がいろんな組み合わせがある。基本的な問題、どこに欠陥があって何が原因ということがクリアになっていないのに、あれこれ付け足せばいいなんてことは技術的な立場で考えたら間違いですプラントそのものをいじらないで、今のものを維持してやろうという発想が間違っている。」
・「原子炉自体の問題が規制委員会で問題になっていないのは、これから先話し合われる可能性が無いわけではないが、優先課題とは考えられていないようだ」というのはテレビ局の担当記者の意見です。
・最後に国会事故調の元委員だった野村修也氏の考え:「今までやっているものは皆継ぎはぎだらけ、全部廃炉にして最も安全な場所に国営の原子力発電所を新しく造るという発想があっても良い。民間事業者が原子炉を動かしていること自体がおかしい。むしろ国が電力エネルギーの全体の政策の中で必要なら安全な場所で世界の基準の中でも本当の意味で最高峰のものを作るという考えがあってもよい。このことを議論せず、民間事業者が依然として原子力をやるということを前提として今の基準作りが行われているので、どこかで経営に対する影響とか、そういうものが入り込んでしまうそうすると最高水準の安全基準を要求すると、「これを要求すると、どこも動かせなくなるんじゃないか」と思うような基準は、諸外国にあってもですね、「それは取り入れられないだろう」という議論にどうしてもなってしまうだろうというふうに思うんです。」

・左のイラストについて玉川キャスターは、「電力の問題を原発でやるのかそうじゃないのか?ということも、お金の問題から考えても、もう一回考えるべき時かなと思います」。
◎結局、規制委員会の議論は「原発を動かすための安全」を話し合っている。原子炉の状態も事故の原因もまだわからない今、規制委員会がつぎはぎの応急処置を、それも、猶予期間を設けてということになれば、同じことが繰り返される、事故が起こる可能性は消えません。これだけの犠牲を払い事故の収束もままならない今、どうして、根本的な問題の議論を避けるのでしょうか。ズルズルとお目こぼしを続けてきた結果がまだわかっていないのでしょうか。とにかく、専門の方たちが指摘する大事な問題を議論せずに原発を動かすことは許されないことです。