「”核のゴミ”はどこへ〜検証・使用済み核燃料〜」(NHKスペシャル2月10日)

一週間前の日曜日に見たこの番組、前半と後半で、別番組かと思うほどでした。もちろん後半は前半を前提にしてはいるのですが、前半に比べれば後半は大変興味深い内容です。かなり踏み込んだ大胆な切り込み方です。資料提供としてNHKの取材は評価できると思いました。これは記録しておく値打ちアリと、録画したものから書き起こしに近い状態でブログに残しておこうと思いました。先ずNHKのサイトの紹介を貼りつけてみます:

"核のゴミ"はどこへ 〜検証・使用済み核燃料〜



 3つの建屋が爆発した、福島第一原子力発電所の事故。原子炉とともに危機的な状況に陥ったのが、莫大な放射能を持つ使用済み核燃料の貯蔵プールだった。原子炉の稼働によって生じる使用済み核燃料は、全国の原発などに貯蔵され、その量は1万7千トンに達している。国が、使用済み核燃料を資源として貯蔵・再利用する、核燃料サイクルを推進してきたためだ。
 しかし、サイクルの要となる青森県六ヶ所村再処理工場は、トラブルの連続で操業開始を延期し続け、高速増殖炉もんじゅ」も、1995年の事故以来、ほとんど動いていない。さらに、再処理に伴って生じる高レベル放射性廃棄物を埋設処分する場所も決まっていない。国は、3兆円近い経済効果をうたってきたが、唯一名乗りを挙げた高知県東洋町では、激しい反対運動が起こり挫折。原発事故後、さらに状況は厳しくなっている。
 こうした中、去年末に誕生した自公・安倍政権は、「前政権下の原発ゼロ政策の見直し」「核燃料サイクルの継続」を表明。使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物が再び大量に増え続ける懸念が出てきている。もはや、使用済み核燃料や廃棄物から目を背けることはできない私たちの社会。重い課題と向き合う、世界各国の事例も交えて伝え、次世代に負担を先送りしない方策を探る。

『プロローグ』
EUヨーロッパ連合の研究室(ドイツ超ウラン元素研究所)の厚さ1mのガラスの向こうに原子炉から取り出された使用済み核燃料(細い棒)が映っている。この中にプルトニウムなど極めて強い放射線を持つ物質が含まれていて、研究者によると、「ガラスの中に入ったら放射線量が数シーベルトというレベルなので被曝すれば健康に深刻な影響が出て死に至るでしょう」。
原発を稼働すれば必ず出てくる使用済み核燃料。その巨大なリスクを突きつけたのが東京電力福島第一発電所の事故だった。
原子炉で次々とメルトダウンが起きる中、もう一つの危機が始まっていた。原子炉の近くのプールに貯蔵されていた使用済み核燃料である。冷却装置が止まり水位が低下、最悪の場合、ここでもメルトダウンが起きるおそれがあったのです
原子力規制委員長の田中俊一委員長「今回の事故を踏まえると原子炉の上の方に使用済み核燃料を貯蔵しておくのは良くないのは明らかですから・・・」。

事故から2年、今も各地の原発には大量の使用済み核燃料が置かれたままになっている。
未だに処理方法は確立されておらず、最終的に捨てる場所も見つかっていない。
貯まり続けたその量は全国で1万7000トン、原発を再稼動すれば早いところでおよそ2年で満タンになってしまう。
行き場のない核のゴミをどうするのか。引受先を決めないで進めてきた原子力要請の付けで今波紋がひろがっている。
原子力委員会の席上青森県知事は「オカシイでしょ、青森県に持って行けば、置いておけばなんとかなるんじゃないかって。とてもとても話し合いの席じゃない」。
今後の原発を考える上で、避けて通れない使用済み核燃料と核のゴミの問題、どう解決していくのかその道筋を辿ります。


使用済み核燃料 知られざる脅威


何故、たくさんあるのか?日本では、使用済み核燃料をゴミではなく資源とみなして原発の中で保管するのが基本原則。しかし、それが上手くいってない
各地の使用済み核燃料は青森の六ヶ所村の再処理工場へ移す。
ここで再処理資源とゴミに分別、そのゴミは最終処分するというのが、日本が原発を始めた時からの基本方針

ところが最終処分場は全く決まらず、候補地すらない。さらにその前の段階、再処理工場がまだ一度も本格的稼働をしていない。その結果、行き場を失った大量の使用済み核燃料が全国の原発に留め置かれるという事態


半世紀もたつのに? 国も電力会社も原発を動かすことに熱心でも、核のゴミに本気で向き合わず先送りしてきた。そのツケが3・11でリスクとして目の前にあらわれてきた。4号機は爆発で建屋の屋根が吹き飛んだ。プールには250本の使用済み核燃料があり、爆発直後電源喪失で冷却水を送れず、3月17日、懸命の放水で事なきを得たが、メルトダウンの恐れがあった。
政府の最悪のシナリオは:事故6日目、水位が低下、使用済み核燃料が露出、放射性物質の放出始まる。14日目、水が完全に干上がりメルトダウン。格納容器が無いため直接プールから大量の放射性物質が放出、住民避難は半径250キロの範囲に及ぶと考えられた。(→)
現在、最終処分場は未定、処分のための研究だけが北海道の幌延町の日本原子力研究開[}発機構の幌延深地層研究センター」で進められている。国の計画では地下300mより深くに埋めることになっている。使用済み核燃料を再処理するときに出来る廃液、わずかな時間で死に至るほどの極めて強い放射線を放つ、この廃液をガラスと混ぜて固めたモノがいわゆる核のゴミ、放射能が問題ないとされるレベルに下がるのに数万年かかる。2030年ごろまでに4万本となる。ここは、あくまで研究で核のゴミを持ち込むことは無い。地下水の流れや岩盤の強さを調べているが、10万年後を正確に予測することは困難。


核のゴミ 最終処分はどこに?


最終処分場を探すのは国と電力会社が作った組織:原子力発電環境整備機構(NUMO)である。原発稼働34年後にようやく設立された。ここは、市町村が名乗りを挙げる公募制を取ってきた。公募に応じた自治体は3段階の調査がある。それぞれの段階で公募金が用意される。最初は20億円、次は70億円が支払われることが決まっている。しかし応じる自治体はない。どのようなやり方が行われているかNUMOは一切明らかにしていない。
NHKが調べた結果、少なくとも15の市町村で応募をめざす動きがあった。琵琶湖の北、旧余呉町滋賀県長浜町)もその一つ。
誘致が持ち上がった当時の町長:「最初の調査だけで20億円と知ったから。2006年10月、NUMOと国を招いて住民に対する事前説明会「地層処分説明会」を開いた。住民からは反対意見が相次ぎ、町長は財政再建には公募金が必要と説明。半数を上回る反対署名があり、応募は断念。

3・11で誘致運動が止まったのは長崎県対馬。高卒の90%が島を出ていくという。島の活性化と大きな雇用が生まれると期待して誘致運動をした人は、核のゴミの容器の実物大を手作り、しかし、事故後は反発を招きかねないと取り外した。「実際はあった方がいいが、世間の目を考えたら言えない。もう積極的な言葉がでてきません」という。2年前から活動を始め、青森六ヶ所の見学ツアーも実施、延べ600人を送り出した。ツアーに参加した一人は、「原子力施設のもたらす経済効果を目の当たりにして驚いた。田舎の町に、幼稚園、小学校、図書館、体育館と立派な施設を持ってるわけだから、羨ましく感じる」と誘致に前向きだったが福島第一の事故が考えを一変させた、「福島の事故にあって初めて放射能が怖いものだと改めて分かった。(誘致話は)立ち消えになっていくんじゃないの」。


経済効果と引き換えの最終処分場の受入れ、そのやり方が今問われ始めている』(ナレーション)
去年9月開かれた国の原子力委員会で、日本を代表する研究者の集まりである日本学術会議が最終処分場の選定のあり方について提言した:「原発マネーという形で埋め合わせて合意を調達することに傾きすぎていたのではないか」と、これまでの姿勢を改めて交付金頼るやり方を見直すべきだと指摘した。「交付金みたいな形で便宜供与するという政策手段を採ってきましたけれど、処分地を決めようとすると、かえって問題解決を紛糾させて逆効果になる」という委員。国は選定のあり方について見直すと明言したが具体的方針は未だ示していない


交付金――ほかの国では? 世界で原発を動かしているのは31の国と地域(→)。このうち場所が決まっているのはフィンランドスウェーデンの2か国しかない。このように世界のどの国も苦労している。この問題と各国がどのように向き合っているのか、候補地選びが難航しているイギリスと、日本とは別の方法で処分場探しをしているスイスを取材した。(つづく)