NHKスペシャル「"核のゴミ"はどこへ〜検証・使用済み核燃料〜」-その2−

世界は核のゴミとどう向き合っているか


イギリス中部のカンブリア州、5年前経済効果を期待し処分場の建設を巡る協議を国と始めた。
実は20年前にも、国が処分場の建設に動いたことがあったが。元々原子力施設のあるカンブリア州、調査は極秘に行われた。これを知った住民が強く反発、計画はとん挫した。2008年、政府はその体験を踏まえて住民との向き合い方を抜本的に変えた。
パートナーシップという話し合いの場が持たれる。国側は住民の意見を聞いたうえ、全ての疑問に答える。日本のNUMOに当るNDA(原子力廃止措置機関)が処分場のリスクを詳しく伝えています。NDAのデイレクターは「住民の皆さんは自分で判断したいと望んでいる。その為には情報が必要です。良し悪しに関わらずオープンにすれば信頼は得られると信じている」と語ります。
5年をかけて話し合ってきたカンブリア州、先月、反対の結論をだした。賛成と反対は3:7。地元の地層が処分場に適しているのかなど不安が消えないという声が勝りました。NDAのディレクター:「信頼が増していると感じたが、まだまだ足りなかったようです。残念ではありますが結論が出た以上、前に進んで行くしかないです」

スイスでは、地元の合意を得る前に、まず国が候補地を選びます
最終処分に関する世界有数の研究室の「モンテリ地下岩盤研究所」が運営するのがNAGRA「放射性廃棄物管理協同組合」。政府は、NAGRAが全国で行った調査をもとに、チューリヒから数10キロ、地震がほとんどなく地下水の影響も少ないとされる北部の3つの地域を候補地に選んだ。
スイスエネルギー庁の副長官は、「処分場を作るのは政府の責任です。国民にはどの地域がより安全性が高いのかキチンと示す必要があると考えている」。
政府は、お金ではなく飽くまで科学的な判断で納得してもらうことが大切だと考えて、地元が処分場を受け入れるまで具体的な地域振興策を提示しないことにしている。

地域の代表として参加していた酪農家のオットーさんは、近くに処分場が出来れば何らかの影響を受けるのではと当初は反発していたが、福島第一原発事故をキッカケに、核のゴミを一刻も早く処分するためにどこかが引き受けなければならないと考えが変わったという。「福島の事故から教訓を得ました。この問題に対する意識が高まり責任を感じました。自分たちが関わっていくのは当然だと思っている。」
スイスは住民の合意が得られるまでの間、使用済み燃料を中間貯蔵施設に乾式貯蔵という方法で保管している。
プールで冷やした使用済み核燃料を鉄の容器に移し替えて保管。完全に密封されているためプールに置き続けるより安全性が高いとされている。「この施設は停電しても大きな危険はありません。容器が放射線を遮蔽しているので電力は必要ない」とCEOのワルターヘープさんは語る。
またNAGRAのトーマスエルンストCEOは「何万年もの安全を100%保証することなど誰にも出来ない。可能な限りの対策を取っていることや安全性を確保するために最善の努力をすることを国民に分かりやすく説明する、それが何より大事だと私たちは考えています」。


では、日本でこの乾式貯蔵は? その問題点は?

世界のどの国も模索している。処分場探しに多くの国は30年かかるとみている。住民の合意と建設にかかる期間を考えると待ったなし。
電気が無くても冷やせるのでより安全と考えられる乾式貯蔵、実は日本でも一部導入されている。
青森県むつ市で大型の施設が完成する予定。しかし、日本では使用済み核燃料はすべて再処理するのがルールになっていて、スイスのようにそのままゴミとして捨てることが出来ない。これが核のゴミの処分を進まなくしている1つの要因にもなっている。


六ヶ所村の再処理工場はいまだかつて稼動したことがない。その結果、再処理されない使用済み核燃料が溜まる一方。しかし、この使用済み核燃料、仮に最終処分場が見つかったとしても再処理するという前提のルールがあるので直接持って行くことが出来ず、その結果、身動きできない。 


こうなると、再処理そのものを諦めた方が良いのでは・・・・と思えてきます。
これまでに、そうした議論が無かったわけではない。原発事故の後、政府が今後の原子力の進め方の議論をしたとき、その中で示された複数の選択肢の中に再処理をやめて使用済み核燃料を捨てるべきではないかといった案も出たしかし、最終的結論は再処理の継続で、再処理工場は今年10月の完成を目指すことになっている。


このトラブル続きの事業が何故継続という結論になったのか?
取材を続けると、再処理を止めた場合、原発の運転が電力会社の経営に影響しかねないという関係者の内向きな体質が見えてきます。(つづく)

◎番組では、イギリスとスイスの処分場の決め方の違いを取り上げていますが、原発に対する国の方針も大きく関係しているのではないかと思います。
スイスは福島の事故を受けてその年2011年の5月に脱原発に国の方針を変えました。

福島原発事故を受けスイス政府は昨年5月、「段階的脱原発」を宣言。その後連邦議会からの支持を得て、脱原発を具体的に進めるエネルギー基本方針「エネルギー戦略2050」の第1案を9月末に発表した。法改正案を柱とするこの戦略では、特に太陽光発電を推進。2050年にはこのエネルギーだけで現在の原発の発電量(39%)がほぼ賄えると計算する。

▼この戦略は、再生可能エネルギー拡大と同時に節電、さらに温暖化ガスを抑えるための燃料消費削減の両方を、つまり「エネルギー消費全体を抑えること」を目標にしたものでもある。2035年までに年間1人あたり2000年比で35%減の省エネを目指している。

▼しかし、何といってもメインは脱原発を具体的に進めるための政策だ。連邦環境・エネルギー省(UVEK/DETEC)のドリス・ロイタルト大臣は「脱原発は可能だ」として、代わりに2050年までに、水力発電(2050年、約55.9%)と水力以外の再生可能エネルギー(同、約30.6%)の拡大を柱に、不足分を天然ガス化石燃料発電(同、約13.5%)で賄う方針を打ち出した。
(全文はコチラで:http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=33958990