NHKスペシャル「”核のゴミ”はどこへ〜検証・使用済み核燃料〜」−その3−

続く再処理 その理由は?
青森県六ケ所村にある使用済み核燃料の再処理工場
電力会社が中心となって設立した日本原燃が運営している。
(蛙:左の写真は、同居する日本のエネルギーの未来と過去。再処理工場の向こうに見えるのは風力発電用の風車!)



再処理工場は当初の計画では1997年に稼働開始、全国の原発から集められた使用済み核燃料を核のゴミと再利用する燃料に分ける重要な役割を果たすはずでした。国の構想は取り出した燃料を高速増殖炉という原子炉で増やし再利用をくり返すというものでした。
資源の少ない日本が無尽蔵に電力を得られる夢の核燃料サイクルです

しかし1995年開発段階の高速増殖炉もんじゅが事故を起こし、実用化の目どがたたなくなった。そして六ヶ所村の再処理工場でもトラブルが多発、操業開始の延期は19回にのぼる。核燃料サイクルの構想は今も実現していないが、再処理の費用は電気料金の形ですでに徴収されている。


核燃料サイクルの事業は、構想が行き詰まる中、なぜ、続けられてきたのか?
実は9年前、経済産業省の中で、中止を模索する動きがあったことが判った。
「六ヶ所を止めるべきと判断する理由」。←これは若手官僚たちが幹部にあてた提言書です。
核燃料サイクルについて、政策的意義は失われている。もはや世の中を誤魔化しきれない。」

核燃料サイクルを推進してきた経産省で何故このような異論が吹き出したのか? 
当時エネルギー政策に携わっていた官僚が取材に応じた。
官僚たちが問題視していたのは電気料金として徴収される巨額の再処理費用、稼働から40年で11兆円かかると試算されていた
高速増殖炉というものが完成する目途も全くたたなくなっていて経済的にも政策的にも全く無意味な事業に、それだけの兆単位の金をかけていいのかという苦々しい空気は広がっていました。」
一方、再処理を担う日本電燃に出資する電力会社、最大の株主である東京電力の中からもこんな声が上がっていた。東電の関係者から取材したメモ。先の見通せない再処理を経営上のリスクとみなしていた。元総務部幹部の声:「核燃料サイクルは技術者にとっては夢かもしれないが、電力事業者にとってビジネスのメリットはない」「再処理の是非が検討されたのは事実。電力の自由化でコストダウンが求められる中で”六ケ所は高い”じゃないかという話になった。」


それでも、なぜ国と電力会社は再処理から撤退しなかったのか?
再処理工場には、資源として再利用することを前提に各地の原発から使用済み核燃料の一部がすでに送られている。もし撤退が決まれば、使用済み核燃料は資源ではなく事実上ゴミとなる
その場合、地元の青森県は使用済み核燃料を各地の原発に返すという取り決めを結んでいる。原発に使用済み核燃料を置く場所はなくなり原発は稼働できなくなる。 (蛙:ここが技術として失格と言われる所以じゃない!!)
東電の元役員の証言:「再処理をやめたら原子力は立ち行かない。再処理は原子力発電の生命線だ。」

その後、処理を巡って国と電力会社の間で話し合いがもたれた。
しかし国も電力会社も原発を動かし続けることを優先し、コストがかかる再処理を見直すことは無かった

元役員:「電力会社と経産省の間で大きな国民負担を回避しようという関係が築けなかったと、壮大な無駄を生み出した責任というのを国も電力会社も直視できなかったということだろうと思います。」(蛙:・・・・)
そして解決されないままだった問題が原発事故を機に再び浮上する。(つづく)