斉藤貴男著「安倍改憲政権の正体」(2)

安倍改憲政権の正体 (岩波ブックレット)

安倍改憲政権の正体 (岩波ブックレット)

選挙戦に入りました。NHKだったかの自民党安倍さんのスピーチ、「ネジレをなくして強い日本」でしたっけ、あれしか言わないのを聞いていると、ますます「ネジレが無くなればやりたい放題。ネジレは必要」と思ってしまいます。
TPPも原発も12月の衆院選挙で言ってきたこと「公約」は反故にされていますが、マスコミは突っ込まないし、マトモな報道に対しても気に入らなければ、首相自ら圧力を掛けて力でねじ伏せる(TBSの件を言っております)。野党にも力がありません。今回も、自民党は選挙を意識して、憲法改正も96条も前面には出さず、「ネジレ解消」を第一に。NHKでは早々と「自民圧勝、単独でも過半数」と放送しています。これで我々有権者が意気消沈して投票に行かない人が増えれば(有権者は「このまま寝ててくれればいい」と言った森元総理は正直でした)、組織の強い自公と共産党が得をします。共産党は倍になっても、自公あっての反対党ですので大勢に影響はないでしょう。
騙されてはいけないですね。ねじれているから改悪が進まないで何とか現状を保てるというケースもあります。変ってほしいのは3・11以前の原発依存・推進だとか、官僚の言いなりの政治とか、箱モノ公共事業を見直して社会福祉を充実させてほしい・・・ということでした。それが、民主党の失敗(裏切り)で、自民党に戻って・・・良くなるかと思いましたが、右旋回の猛スピードで新自由主義的、かつ国家主義的政策を矢継ぎ早に軌道に乗せるかと思うと、選挙で過半数をとれば、脱原発7割の民意なぞ踏みにじって(データがどこへ行ったか分からない=まさに無かったことにして)次々と原発の再稼動に踏み切り、憲法でさえ民意を得たりと改悪に進む腹積もりのようです。
「沈黙は人間最大の罪悪です」という真民さんの言葉もありますし、「善きことはカタツムリのスピードで」というガンジーの言葉も知っています。正体を見極めたら、あとは対抗する勢力を応援、なければ作り出すしかありません。先ほどポストへ。選挙の掲示板を見て原発基準でどこへ入れようか考えてしまいました。さて、正体を見極めるための「つづき」です。立葵と田畑の写真は坊の島で、何年振りかで見たカタツムリは昨日隣の畑の垣根で)

著者紹介

斉藤貴男:ジャーナリスト.1958年生まれ. 早稲田大学商学部卒業. 英国バーミンガム大学修士(国際学MA). 新聞記者、月刊誌編集者、週刊誌記者を経てフリー. 主な著書に『機械不平等』(文春文庫)、『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)、『東京を弄んだ男』(講談社文庫)、『強いられる死』(河出文庫)、『安心のファシズム』『ルポ 改憲潮流』(岩波新書)、『民意のつくられかた』(岩波書店)など.『「東京電力」研究 排除の系譜』(講談社)で第3回いける本大賞受賞.

昨日は第一と五章に触れましたので、今日は残りの章から気になる個所を取り出してみます。

二 アベノミクス、TPP参加が意味するもの

見出しを並べると論旨の流れが分りますので、並べてみます。
アベノミクスの意味」「アベノミクスは何をミックスしたものか」「民主党政権に対する反動」「海外投機筋の演出?」「アベノミクスの先にあるもの」「『世界で一番企業が活躍しやすい国』へ」「物価上昇の果てに」「消費増税が弱者を直撃する」国土強靭化計画」「TPPをめぐって」「アメリカの国家戦略」「オバマ政権下でも暗躍するジャパンハンドラー」「どうやって対抗すればよいのか」「もう日本に農業は要らない」「日本語も非関税障壁」最後に「アメリカの掌の上での愛国」

アメリカの掌の上での愛国


 TPPに対する姿勢もですが、私がとりわけ日米関係の文脈で安倍政権を信用できない要素の一つに、ことさら”日本”を謳い上げたがる態度があります。政権が国益を重視するのは当然ですが、だったらどうして、あらゆる意味で最も厄介な存在であるアメリカと真正面から向き合い、主張すべきことを主張しないで、過去の戦争を美化したり、内向けのナショナリズムや、中国や韓国に対する差別意識を駆り立てることばかりしたがるのか。
 

 気持ちはわからないでもないのです。権力を世襲している彼らにとって、まさに例の”主権回復の日”から連綿と受け継がれてきた、日本をアメリカの、ということはグローバル巨大資本の属国であり続けさせていく選択は、単に政治や外交の領域だけにとどまらず、彼ら自身が生きていく上での絶対的な存在理由(レゾンデートル)でもあるのでしょう。けれどもそれだけでは辛すぎる。いかにも属国では、国民も易々とは許してくれるはずがない。

 だから、日の丸・君が代なのです。”主権回復の日”であり、靖国神社であり、「従軍慰安婦などいなかった」のであり、「僕のおじいちゃんは正しかった」のであり、”自主憲法”の制定なのであり……。 


 つまりはガス抜きアメリカ側もそんなことは十分に承知しているから、リメンバー・パールハーバーの張本人たちが祀られている靖国神社に閣僚らが参拝しようが、尖閣列島を巡って中国と小競り合いをくり返そうが、ある範囲内であれば黙認してくれてきた。石原慎太郎さんのような人材を適当に焚きつけては尖閣問題における日中間の対立を煽り立て、在日米軍の存在感を見せつける効果を狙ってくるような場面もしばしば見受けられます。アメリカという御釈迦様の掌の上で”日本ごっこ”をやっているようなもので、つくづくみっともないと思います。


 小泉政権の時代も、その対米従属ぶりには相当なものがありました。”日本ごっこ”も大いにやった。ですが、安倍さんのそれは、余りにも度を越してしまっています。
 日本のリーダーを自認する人々がやらなければならないのは、何よりもまず、本当の意味で独立した国として行動することだと思います。それとも彼らは、属国であり、その分だけうすらみっともない”日本ごっこ”を演じ続けることこそが、”誇るべき国柄”なのだと開き直りたいのでしょうか。

途中で切れなくて、全文移してしまいました。続いての二章は見出しのみ並べてみます。

三 衛星プチ帝国の臣民をそだてるためにーー教育は誰のものか
国家のための教育・新自由主義か、国家主義か・「日の丸」を背負って軍需と原発で・道徳の教科化が目指すもの

四 改憲への意欲

アメリカの戦争とともにあった戦後史・在日米軍再編と原発輸出・「パッケージ型インフラ海外展開」がもたらす危険

◎教育では、「ゆとり教育」で日本の学力は低下、文部省の狙い通り、出来るものを限りなく伸ばす、お金のある者は成績もよいという教育が功を奏しています。教育課程審議会会長で”ゆとり教育”の答申をまとめた作家の三浦朱門氏が、2000年代初めに著者の取材に答えた言葉が引用されています。「できん者はできんままで結構。戦後50年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。それが”ゆとり教育”の本当の目的。エリート教育とは言いにくい時代だから、回りくどく言っただけだ。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけでも養ってもらえばいいんです」。
著者の言葉です「思い上がり切った選民意識は、”ゆとり教育”の回りくどさが見直され、差別的なまでのエリート教育を明確に志向し始めた安倍流”教育政策”では、ますます幅を利かせることになるでしょう」。あと残るは「実直な精神」のための「道徳の教科化」です。
教育の問題と言えば、教科書を薄っぺらくしたり「ゆとり教育」を導入したりしたのは文部省で「日本の教育をダメにしたのは文部省」と言ったら、声をそろえて「日教組」と10人中9人の人から言われた食事会に、何年か前、参加した事がありました。津川雅彦さんじゃあるまいし…ですが、一部の方たちの間では、揃いもそろって「日教組が悪い」で今でも教育問題は片付くのです。
◎「対米従属は何もイラク戦争から始まったわけではなく、安倍さんの言う”主権回復の日”、すなわちサンフランシスコ講和条約日米安保条約が同時に発効した1952年4月28日こそが、今日にいたる日本の戦後体制の出発点だったことになります。」
 しかし、日本人の「私たちは戦後史を自覚できていない」、「沖縄は被害者だが、ベトナム人にとってはB52が出撃した”悪魔の島”だったという忸怩たる思いを現在の沖縄県民は共有している」が、沖縄県外の人間には想像外ではないか。「日本は在日米軍に守られてきたというより、むしろアメリカの戦争の片棒を担ぐことによって、経済大国になりおおせたのです。」「とすれば憲法九条とは何だったのか」「九条は日米安保の下で、考えようによっては”欺瞞(ぎまん)”であり続けてきたとも言えます」
安倍政権は、「欺瞞であり続けた九条を捨てて」堂々と戦争が出来る国に憲法を変えて・・・それに、九条を押し付けてきた当のアメリカの一部では、日本の九条を邪魔者扱いしてるわけだから・・・日米軍事同盟を強固にしてと考えています。
すでに、2005年10月の日米安保協議委員会(2プラス2、日本の外相と防衛庁長官=当時、アメリカの国務長官、国防長官)で合意された計画では、一体化が着々と進んでいます。
「私が目下の改憲路線を恐れるのには、この国の国策が、従来にも増して戦争の準備を求める方向に進んできているという認識もあります。安倍政権が突き進めようとしている将来の日本を、ただ属国というだけでなく、敢えて”衛星プチ(ポチ?)帝国”などと、不格好な造語で私が呼んでいる所以(ゆえん)なのですが、例えば安倍さんが外国の要人に熱心なトップセールスを繰り返し、大きく、なぜかあまり批判的でなく報じられることの多い原発輸出です。」
ここから「経済インフラ戦略会議」、「パッケージ型インフラ海外展開」の話になり、ネックとなる「九条」の話に続きます。(が、詳しくは別の本でということです)

先日「安倍さんが怖い」とヨガ仲間で話した時、6人が6人感じている「怖さ」の中身は、ここにあると思いました。今までは「アメリカの言いなり、どうして〜?」だったのですが、安倍さんは「プチ(ポチ?)」だけど「帝国」を狙っています。それも明らかな「富国強兵」です。全く戦争前の日本の政策とソックリです。基本的人権よりも国家に忠誠です。
(花は畑で咲くピンクのダリアと赤いポンポンダリア、黄色い花は我が家のアンデスの乙女)