「終戦のエンペラー」

月曜日、気になっていた映画を観に午後から出かけました。
夫にも声を掛けてみましたが、夏山山行を控えて心ここに在らずの夫は箕面の山に訓練歩行に出かけました。そして先ほど中央アルプスの木曽駒へ向かって大きなリュックを背負って出発しました。
さて、月曜の映画館で、一人でしたので、どこでも座れるだろうと思って行ったのですが、込み合っていますのでとF席に一つ空いていたのでそこへ。私たち年代の観客が大勢でした。きっと原爆忌終戦・敗戦の八月ですし、自民党憲法改悪問題もあって、同じような関心からだと思います。
日本人俳優が大勢関わっているのにまず驚きました。特に、天皇に仕える関谷定三郎を演じる夏八木さんが素晴らしかったです。セリフはなかったものの東条英機を演じた火野正平さんもなり切りの凄みがありました。
厚木の飛行場に着いたマッカーサーは、10日間で天皇に戦争責任があるかどうかを調べるよう、日本をよく知る部下フェラーズに命じます。日本人女性アヤとフェラーズの戦争前の出会いと恋愛を交えて、10日間の調査が進みます。戦勝国が敗戦国の精神構造を何とか理解しようと努める姿が天皇戦争犯罪調査を通して描かれると言ってもいいかもしれません。ですから、日本人とは、日本とは、天皇とはが、映画の内容です。それは、私たち現代に生きる日本人が、70年前の日本人の精神と時代を訪ねることと重なります。
近衛文麿中村雅俊)には、フェラーズに、他国に進出したことが裁かれるのなら、日本だけではない、すでに西欧諸国が進出(侵略と言っていたか?)していた所に日本が進出したのであるから、同罪だと言わせています。そして、マッカーサーもフェラーズも、何度も確認するように、我々の仕事は復讐ではなくて、「日本の再建(rebuild)」だと言います。天皇に戦争責任があったとすれば、裁判にかけなければならなくなり、そうなれば日本は混乱し、共産主義者がとってかわるだろう。占領を無事に行うためにも天皇に責任が無い方が好都合というマッカーサー側の立場も描かれています。
最後に、マッカーサーはフェラーズの「天皇に開戦の責任があるかは不明だが、終戦に導いたのは天皇であった」という報告書を本国に送る前に、天皇に会うことを決意します。そして、あの有名な二人並んでの写真です。いよいよ片岡孝太郎昭和天皇が登場します。通訳一人を置いて二人だけの会見で、天皇は、「国民に責任はない、戦争は、私一人に責任がある」と。
この映画のプロデューサーの奈良橋陽子さんは、夏八木勲演じる宮内次官の孫に当たります。
「劇中に登場する関屋宮内次官は、私の祖父(関屋貞三郎/奈良橋の母方)にあたり、共同プロデューサーであり、息子である野村祐人の曾祖父にあたります。その為、この映画は私たち家族の話でもあります。父(奈良橋一郎)は外交官で、私は子供のころから外国との関係を身近に感じていました。些細な行き違いからはじまる誤解や喧嘩。ひとりひとりがそれぞれ平和を願う立場を理解すれば、戦争はなくせる―。私自身が孫を持つ今、心から平和な未来を願うひとりの人間としてこの映画を皆様にお届けします」(公式サイト」(http://www.emperor-movie.jp/)の「『終戦のエンペラー』製作にあたり」より)

▲「 勝者と敗者の壁をこえるために・片山杜秀×小菅信子
△△映画を観ていなくても、なかなか面白いトークになっています。コチラで:
http://synodos.jp/international/4948

7月27日に公開される映画『終戦のエンペラー』試写会&トークショーが、7月8日に開かれた。「新しい戦争映画」と評する登壇者の片山杜秀氏と小菅信子氏。1945年8月に、マッカーサーが命じた極秘調査の裏にあるドラマに、いったいどんな意味があったのだろう? 専門家ならではの刺激的なトークショーの文字起こしをお送りする。(※なお本記事には映画の内容に関するネタバレが含まれております)(構成/金子昂)

△△△この映画ではトップシーンが原爆投下シーンで始まります。フェラーズの調査でも、終戦に至る過程を探るなか、この原爆との関連も当然語られていきます。ところで、「5日、来日中の米映画監督、オリバー・ストーン氏が、広島市内で開かれている平和市長会議や市民団体の集会で講演し「日本が降伏したのは、原爆を投下したからではない。ソ連が参戦したからだ」と指摘し、太平洋戦争の早期終結に原爆投下が必要だったと正当化する米政府の主張を改めて批判した。(日経6日朝刊より)」

(写真は、映画館入口のポスター。ヴィソラへの道筋、生け垣のノウゼンカズラ。段々公園の花壇のヒマワリの蕾と花)