「反・脱原発」への反発と小泉元首相の脱原発宣言(文藝春秋)


今朝の厳しい冷え込みで
サンルームのガラスが水滴で曇りました。
手前、足元の薄いピンクのヒメツルソバの花も、
向こうに咲き出した白菊の花も
少しかすんで見えます。

今日は日本記者クラブで小泉元首相の記者会見がある日です。小泉氏の脱原発発言が明らかになってから、反原発脱原発への反発も目立つようになってきました。それらの動きの幾つかと「文藝春秋」の記事を取り上げます。
◆10日の日曜日、飯島勲氏(現安倍内閣官房参与で元小泉内閣総理大臣秘書官)が、よみうりテレビの「たかじんのそこまで言って委員会」で、小泉元首相の脱原発宣言に「モノ申す」と出演、クレームをつけていました(8日収録)。こんな番組に出てまで小泉さんの脱原発に「モノ申す」のですね〜。これは、現政権が小泉氏の脱原発宣言には捨て置けない影響力があると認めていることの証しであり、また、この番組の影響力が大きいことの証しでもあります。なにしろこの番組は、安倍晋三氏を総理にするための特集を組んだことがあり、出演者の中には安倍ファンが何人もメンバーとなっています。こんな内容で放送していいの?というほどであり、それが、受けたという番組です。そこに、ワザワザ内閣官房参与がお出ましして「脱原発にモノ申す」という今の情勢です。
◆また、朝日新聞デジタル版の10日の記事によりますと:(昨日の夕刊でも取り上げられていました)

 反原発脱原発を訴える全国の市民団体に9月中旬から11月上旬にかけて大量のメールが一斉に送りつけられ、朝日新聞が調べたところ少なくとも33団体に253万通以上届いたことがわかった。専用のプログラムを使って操作された可能性が高く、特定の市民団体を狙った日本初のサイバー攻撃とみられる。脱原発弁護団全国連絡会の共同代表で、市民団体の代理人海渡雄一弁護士は、威力業務妨害容疑で刑事告訴を検討していることを取材に明らかにした。
 
 サイバー攻撃が確認されたのは首都圏反原発連合(東京)など反原発脱原発を訴える32の市民団体と「女たちの戦争と平和資料館」(東京)の計33団体。・・・「反原発教徒を皆殺しにしなければ世界平和はやってこない」といった文言が書かれたメールもあった。

以上二つの出来事は、原発推進派の脱原発に対する反発と焦りを示すモノと言えますが、その小泉氏の脱原発宣言を取り上げた雑誌についてです。
◆父の長年の愛読雑誌「文藝春秋」ですが、10日の新聞広告に12月号の広告が出ていました。
私の目にとまったのが、「小泉元総理の脱原発宣言」と「山崎豊子先生の素顔」と「村上春樹の描き下ろし一挙掲載」、ついでに「千玄室さんと市川海老蔵との対談」、「五木寛之のうらやましい死に方」などでした。いつもは父が読んだ後まわしてくれていたのですが、今回は夫と二人で「買おうか…」ということに。週刊誌は見出しで充分なんですが、「文藝春秋」も広告倒れというか見出し以上の内容が無い場合もあります。小泉氏の脱原発の記事も、まぁ、それに近い内容。小泉さんだと、これ程の字の大きさになるというのが小泉さんのすごさです。
「大反響を呼んだ『小泉発言』」を「最初に報じたジャーナリストが、インタビューの一部始終を明かす」と、毎日新聞の政治コラム「風知草」で紹介した編集委員山田孝男氏が、小泉氏と接触するに至る打ち明け話です。
8頁にわたる内容の中で、次の個所を少し移してみます。「なぜ、震災の2年半後、小泉氏は脱原発をカミングアウトしたのか」、いろいろ憶測が飛んでいますが、毎日新聞の山田編集委員は「最後のご奉公」説をとる。その理由は:

 経済学者の加藤寛慶大名誉教授(今年1月、86歳で死去)は、元首相の大学時代の恩師であり、行財政改革の指南役でもあった。その加藤の遺著は「日本再生最終勧告/原発即時ゼロで未来を拓く」(2013年、ビジネス社)である。この話題が出た時、元首相は冗談めかしてこう語った。「加藤さんは最後に『原発ゼロ』って言ったんだよ。私が郵政民営化が必要だと思ったのは、加藤寛の本を読んだからだもん……」
 とはいえ、派手に露出すれば安倍政権と正面衝突して混乱必至。だから垣根越しのチラ見せ(=非公開の講演会で発信)だ。それでいて逆風が強いと見れば前へ出る。そういう手の込んだ駆け引きが続いている。

そして、山田氏は「私の『最後のご奉公』説には傍証がある」として以下のように続きます:

・「首相退陣後の2007年、小泉は民間シンクタンク「国際公共政策研究センター」の顧問に迎えられ、今もその職にある。
・「国際公共政策研究センター」の会長は、奥田元経団連会長(元トヨタ自動車社長)である。奥田は小泉政権下で「経済財政諮問会議」の中核メンバーだった。奥田の音頭でキャノン、新日鉄(=当時。現在は新日鉄住金)、トヨタ自動車東京電力という歴代経団連会長企業、さらに副会長企業が資金をだし、このシンクタンクは出来た。実態は経済界主流が小泉のために作った組織である。
・就任挨拶で、こう言った。「まだ果たし得ていない私なりのテーマがいくつかある。日本の役に立つ形で何か出せれば、そういう役割もあるのかな……」
・当時は大震災前であり、元首相は原発に関心がなかった。いまや「原発ゼロ」こそ「果たしていない私なりのテーマ」の中心になった。

この辺りは、当たっているんじゃないかな〜と思って読んだ個所です。オンカロ視察に誘ったのもこの「国際公共政策研究センター」というグループ?(三菱重工業東芝日立製作所原発担当幹部とゼネコン幹部、計5人が同行したそうですが)、推進の旗振りを頼んだのに、脱原発ならまとめる自信があると言われて、ガッカリしたというのはこのグループのこと? だとしても、推進の困難さを悟って、自然エネルギーに活路を見つける経済界の人たちも出てきたりしないでしょうか。
「文春」記事の小見出しを並べておきます:<・フィンランドの最終処分場を視察・突然の電話で「オーいいよ」・「私だったらやっちゃうよ」・撤退が一番難しい・十万年前は石器時代・本気で「最後のご奉公」・政・官・財の敬意>

◆日経はこの日、文藝春秋の広告記事の真上、「風見鶏」欄に、「小泉元首相も読み違う?」という記事を載せています。
小泉元首相の「独特の政治的直観」を辿りながら、「時に一貫性を欠く」と過去の直感が外れた例を挙げて、「ならば今回の脱原発も…」という手の込んだ反小泉の反脱原発記事になっています。
原発がトイレのないマンション」なら、「火力発電もトイレのないマンションに近い」と、原発事故と火力発電の事故との決定的な違いの無理解と福島の放射能被害や被災者の苦悩は無視。おまけに、最後に、安倍首相の「状況はアンダーコントロール」は誤解されていると、オックスフォード現代英英辞典を持ち出して、「アンダーコントロール」は「成功裏に対処されつつあること」と訳せると主張。日経の原発の立場が明確な記事となっていて、「特別編集委員伊奈久喜」の署名入りです。