解釈改憲の目的は、安倍さんの「観念」の実現?(そもそも総研)

2月26日(木)のサンデーモーニング、玉川徹キャスターの「そもそも総研」は憲法解釈改憲についてです。玉川キャスターが与党の自民党公明党、そして、元官僚として安倍総理の身近にいた人たちから意見を聞いています。特に後半、「安倍総理はなんでそんなにこだわるのか?」という問いに、二人が奇しくも同じ答えを! 録画した番組から私なりに文字起ししてみました。是非最後まで読んでみてください。

  @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

そもそも憲法解釈の変更とは改憲よりも軽いことなのだろうか」

2月5日参院予算委員会
安倍総理大臣集団的自衛権の行使が認められるという判断も「政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能であり、憲法改正が必要だという指摘は、これは必ずしも当たらないと我々は考えているところでございます。」


12月12日衆議院予算委員会
安倍総理大臣「今までの積み上げのままで行くというのであればですね、そもそも安保法制懇を作る必要っていうのはないんですから」「最高の私は責任者は私です」「私が責任者であって、政府の答弁に対しても私が責任をもって、その上において、私たちは選挙で国民から審判を受けるんです。審判を受けるのは内閣法制局長官ではないんです、私、なんです。」

玉川「これはですね、まぁ、後半の部分、政府のトップは確かに総理で内閣法制局長官が決めた事が政府の決めた事じゃない、これは正しい。まさに、前半の部分の憲法の解釈を変えるのは政府が出来るのだという部分が今回のテーマになるわけですので、そこを考えてみたいんですが・・・
まず、これ、集団的自衛権をもう一回おさらいします。


現状では、集団的自衛権の行使は認められていません。個別的自衛権とは何だ?と言うと、日本が他の国から攻撃された時、日本が反撃する形で武力行使することは今の憲法で大丈夫(できる)ですよと言うのが個別的自衛権と言う話です。
しかし、一方で集団的自衛権の行使って何かと言うとですね、日本は別に攻められていません、ですけども、例えば日本が同盟国としている国が第三国から攻撃された場合、日本は攻撃されないけど、日本が攻撃されたとみなして、これを一緒になって武力行使をしましょう、と言うのが集団的自衛権の行使と言うことなんですね。
じゃ、これを今の憲法のもとで出来るか?がポイントになってくる。


今までの流れで見てくると、こんなふうに見えるんですが…集団的自衛権を行使したいという人は総理を含めて一杯いらっしゃる、じゃ、どうやったら行使できるようになるか、というと、最も筋として正しい―素直なのが憲法第9条を改正すればよいということ、しかし、どうも難しい(=反対が多くて出来ないby蛙)。次の手として、去年ですが第96条を改正しましょう。96条と言うのは、憲法を改正するときの条件ですが、そのハードルを下げましょうということ。そしたら、保守と言われる人たちからも筋が違うだろうという話が出て、これも難しい。それでも変えたいというので、良し、解釈を変えようという流れになっているんだと受け止めていいと思います。

これに関して、そもそも政府の解釈で憲法をかえていいのか?について、まず、与党に聞いてきました。

聞いたのは自民党憲法改正推進本部長の船田元衆院議員です。
玉川:安倍総理は政府のトップとして、憲法解釈は新しい解釈にすれば集団的自衛権の行使は憲法を変えないでも出来るんだと国会でも答弁されています、これに関してどうお考えですか?
船田:基本的には憲法の解釈、行政府として解釈をする場合には、内閣が責任を持ってやるということですが、その内閣の責任者は総理大臣なので「私が責任者です」というのは、これは正しいと思います。ただ解釈は積み上げてきたものが一杯これまでありまして、他の部分でもそうですが、やはり、内閣が変わって総理大臣が変われば、その総理大臣の思うとおりに憲法解釈を全部変えられると、あるいは大幅に変えられると言うのは、一寸これは、そうはいかないということでありますので、やはり、そこはおのずから限界と言うのはあると思いますね。
で、私は今憲法自民党の中で預かって議論をしているのですが、やはり、憲法解釈で済まされる、あるいは改正じゃなしで済まされるというものは、一定のものはあると思います。一定の幅はあると思いますが、でも、大幅に解釈をかえるということになると、やっぱり、憲法の改正を伴わないといけないことだと思います。
玉川:私が心配するのは、憲法9条があるんですけど、本当は憲法を変えたいんだけど、なかなか変えられない。で、既成事実を積み上げて、集団的自衛権の行使も少しずつ広げていって、気が付いたら9条はあっても無くてもいいような状況になったから憲法も変えましょうという話に持って行こうと意図しているんじゃないか?

船田:いや、決してそんなことは無いと思います。
本来であれば改正しなければならない内容ってあるけど、この程度の解釈の拡大であればですね、これは改正の必要はないですと、ただ、その場合にはやはり厳格にですね、条件を付ける、制限をつける、そういうことで一定の歯止めが必要だという風に思っております。
++++++++++++++++++++++++++++++++++
玉川:これ、船田さん自身の考えも実は集団的自衛権行使はしたいんですね。だけど、一定の部分は出来ても、大きく踏み出すのであれば憲法を変えるのが筋じゃないかということです。
松尾:船田さんの「一定」というのは?
玉川:それは具体的には…それは、今、4条件とも言われていますが、例えば北朝鮮からアメリカに向かってミサイルが飛んでいく時にミサイルで落とすとか、公海上アメリカの駆逐艦が攻撃されている時に、近くに自衛隊の船がいたら助けましょうとか、そういうことに関してはいいんじゃないかというニュアンスもありますが、ただ全面的に何やってもいいよ、という風なことになるんだったらやっぱり考えなくっちゃいけませんよと。
憲法改正というのは自民党にとって悲願みたいなもんですから、解釈で何でもできるとなれば改正しなくてもいいわけですから…というようなわけです。
ところで与党なので公明党にも話を聞こうとインタビューを申し込んだがダメ! 今までは必ず応じてくれていたのに、秘密保護法ぐらいからインタビューダメになって、その理由は分りません。で、文書だったらということで聞きました。

[質問1]一般的に時の政府の考えで憲法第9条の解釈変更を、憲法の制約を緩める方向で変えていいと考えますか?
[公明党]従来の立場を変えるなら、なぜ変えることが必要なのか、どのように変えるのか、変えた結果が国民や、同盟国や、近隣諸国、国際社会にどのような影響を及ぼしていくのか、慎重に検討していく必要がある。([質問2]は右の写真で)

++++++++++++++++++++++++++++

玉川:次に、かつて安倍総理の身近にいた二人の元官僚の方に話を聞いた。一人は元防衛官僚の柳澤協二氏、もう一人は元政府法案の番人であった阪田雅裕氏。

玉川:集団的自衛権憲法解釈の問題なんですけど、安倍総理が総理はトップとして憲法解釈が出来るんだということを国会で答弁した。これに対して「立憲主義に悖(もと)る」という批判が随分出ているんですが、これについては柳澤さんどう思われていますか?
元防衛官僚(内閣官房副長官補)柳澤協二氏:憲法の役割というのは何かというと、国民主権ですからね、その主権者である国民が政府に対してどこまでの範囲であれば政府が判断して行動してもいいかということを枠をはめるために憲法はあるわけなんですね、本来はね。それを政府の解釈で総理大臣が変えたいから変えてもいいんだということになるとね、基本的な国民主権に基づく憲法の役割というものを否定するという意味で、立憲主義に悖るということになるんだと思いますね。

玉川:柳澤さんは防衛省にずっといらっしゃって官僚側の立場だったわけですけども、この集団的自衛権の行使というのは、現行憲法下で出来るというふうにお考えですか?
柳澤:あの〜それはね今までずっと防衛官僚もそうですし、自民党政権もそうだったんですが、やはり日米同盟と平和憲法とは食い違いという矛盾をどう調整していくかということで苦労してきてるわけですね。
<Nr:柳澤氏は第一次安倍政権で官邸の主要メンバーとして安全保障分野を担当し、自衛隊イラク派遣にも関わってきた。>

柳澤:(今までは集団的自衛権というのは行使しない、したがってアメリカの戦争にそのまま無条件で巻き込まれることは無いんだという理解をしてきているわけですね。ま、私にとっては、ひとつの日本がやるべき基準のような意味合いも持っていたのが(今までの)憲法解釈なんですね。それで、特段の不都合がないというか、日本は充分国際貢献もしてきているし、対米協力も出来ていると思うわけですから、その意味で全く今、憲法解釈を変える必要もないし。日本が攻撃されていなくても反撃するって言うのが集団自衛権ですから、それが本当に日本防衛のために必要かと言えば、日本防衛のためには必要はない。
<Nr:日本防衛のためには個別的自衛権の範疇で充分対応できるので、集団的自衛権の行使は不要という柳澤氏>

<Nr:さらにはこのまま憲法解釈を変更すれば、憲法の歯止め事態を無力化しかねないと元内閣法制局長官は警鐘を鳴らす>
玉川:今、憲法9条がありながら、解釈変更だけで法律を変えたとして、じゃ、何が一体いま出来ることが増えるんだろう?
内閣法制局長官坂田雅裕氏:それはもう、何でもできるようになる。何でもというと変ですが、国際法に違反しない限りの活動ですね、要するに具体的に言えば、外国同士の戦争に加わることができるということですね。
玉川:それは憲法9条があっても
阪田:あっても。 玉川:あ、そうなの?

阪田:だからずっと申し上げているじゃないですか、自衛隊が普通の軍隊になるんですと。要するに、自衛のための必要最小限の実力組織というタガが外れるわけですからね。ですからアメリカ並みの装備を持つこと、中国並みの軍備を備え、勝つ備えるだけでなくて、ベトナムイラクとか戦場に出かけていって戦うことができるようになるってことですね。
玉川:憲法9条があったとしても?  阪田:あったとしてもです。
玉川:解釈変更だけで  阪田:もちろん! 玉川:そんなに重いんですか。
阪田それが集団的自衛権じゃないですか。だから、国民にも覚悟が要るんだと言ってるんですね。実際にそうなることがあり得ると。 ベトナムイラクのような所でですね、自衛隊が戦わざるを得なくなるということがありうるわけですね。その時にどうなるかと言ったら、自衛隊員に犠牲者が出る、

あるいは自衛隊員の銃口が相手の国の将兵を傷つけるということが起こる。そんな時に、こんなはずじゃなかったと言われても困るので、それはシッカリ国民に覚悟を決めて、それを問う、そのために国民投票はあるんでしょうと。
玉川:憲法改正のための国民投票か・・・ 
阪田:そう申し上げているんですよね。
++++++++++++++++++++++
玉川:政府が法律を作る時に、その法律のトップですよね、内閣法制局長官というのは、官僚ではあるけれど、そのプロ中のプロが解釈変更すれば何でもできると言っている。僕はどのくらいまで出来るのかと思ってたんですけど、何でもできるとは思わなかったです。何でもできるんです!
そして、なぜ安倍総理はそこまでこだわっているのか? 近くで安倍総理を見てこられたお二人に聞いてみました。
++++++++++++++++++++++++
玉川:安倍総理がなんでこんなに集団的自衛権の行使にこだわるのだろうというところは?

阪田こういう国であるべきではないかという思いはお強いのではないかと思いますよね。”美しい国”もそうだったとは思いますけど、昔流で言えば”英米列強に伍していく国”として、こういう中で自前の軍隊を十分に持っていないというようなことはですねまずいのではないかという意識が、非常に、そういう意味では観念的な国家像みたいなものがおありなのかと思いますね
 日本上空を米国本土に向けて飛んでいくミサイルなんて今の技術では撃ちようもない。撃ち落とすこともできないですよね。だから、そういうことをやるって要請も勿論アメリカから来ているとは思えないわけですよね。だけど、そういうことが出来ないと困るだろうとか、そういうものを取り上げて議論していること自体が、ある種の観念論だなというふうに思いますから
 集団的自衛権具体的に何か困るというよりは、こういうものを抽象的にというんですか、行使できないという国のありようそのものが問題だというお考えではないでしょうか。
<Nr:内閣の中で安倍総理を見てきた阪田氏は”観念論”ではないかと指摘します。さらに官邸の中で安倍総理と関わってきた柳澤氏は・・・>

柳澤氏安倍総理の一番大きな動機は、つまり”したい”っていうことなんだろうなと。例えば、近くにいるアメリカの船を守るっていうことは、我々の感覚からいうと、それは個別的自衛権で十分やれますよと、あるいは、アメリカに飛んで行くミサイルを撃ち落とすといったってね、それは物理的に不可能ですよというような話は、かつて安倍総理にもしたし、それから安保法制懇の委員の人たちにも私から報告していましたから、会議のたびにね。
玉川:その時、当時の安倍総理は何ていうふうに答えたんですか?
柳澤:まぁ、よくその所は覚えていないけれども、つまり「自分はしかしこういうことをやりたいんだ」っていう意見を持っておられたということですね。
玉川:当時も? 
柳澤:はぁ。私は、だから安倍総理の一番大きな動機は、つまり”したい”っていうことなんだろうなと。

玉川:したいってこと?
柳澤:それによって何を、どういう目的を達成するためにそうしたいかというよりも、憲法解釈の見直しをやったということ、そこに意味を見いだされているのかなと、さらにそれによって日本はどういう国になるのかというところが、よく見えないわけですね。そうすると非常に理念的なというか、観念的なことが一番の大きな動機になっているのかなと思う、私の推測ですけれどもね。
+++++++++++++
玉川:まぁ、お二人の発言は重いと思うのですが、あの、奇しくも「観念的」というか「したい」んじゃないかと・・・。
  今日の結び −
 そんな大きな変更は、国民にきかなくっちゃ! 
 長く続いた解釈を変えたいのなら、国民にきいてからにしてほしい
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

◎荒唐無稽なミサイル撃ち落としの話や、個別的自衛権で対応できるという具体的な進言に対して、安倍総理はどうもそういうリアルな問題はどうでもよくて、架空の事態にも対応できるような国、憲法9条を廃止して戦争が出来る自立した国に、ただ、したいんだ・・・と。
では、なぜ、そういうアメリカから要請されもしない事態を夢想し、それに対応できるような軍事力を備えた国になりたいのか、そういう国にしたいのか・・・「永続敗戦論」で探りたいと思います。
(写真は、お内裏様代りに取り出した、昔自分で手作りした毛糸の編みぐるみのキューピーさん)