National Review の記事から「ファシズムに向かう日本」(内田樹の研究室)


◎父の百歳の誕生日。百年史をやっと仕上げ、昨日、父も読んでくれました。父と母から聞き出した話をもとに個人史と世界の出来事の1916年から2016年の百年を書いてみました。「大正デモクラシー」の時代に生まれた両親の生き方を作り上げた時代というものを少し感じることができました。父も母も、家や慣習にとらわれない新しい生き方をしてきましたし、戦後は、男女同権の女の生き方を娘たちにも応援してくれました。大正時代、普通選挙法は治安維持法と抱き合わせだったとか…ロシア革命の影響や、第一次大戦後の国際連盟の創設など、戦争と平和の国際的な取り組みも、第二次大戦後と変わらずあった、というより、連続しいるということですが。自民党が「改憲」と称して明治に帰ろうとしている今、父を通して大正という時代をもう一度振り返ることができて有意義でした。ところで、「内田樹の研究室」に、"Natinal Review"16日の記事の翻訳が掲載されましたのでコピーです。

National Review の記事からファシズムに向かう日本」
JOSH GELERNTER July 16



日本の政治に津波


 今週、日本の自民党とその連立パートナーは参議院で3分の2を制した。衆議院ではすでに3分の2の議席を擁している。国会両院の3分の2は日本国憲法の改定プロセスを開始するのに必要とされる議席数である。改憲自民党綱領の中心的項目の一つである。


 憲法第二次世界大戦後にアメリカによって日本に押しつけられ、以後一度も改定されたことがない。なぜ、今改憲されなければならないのか?ブルームバーグによれば、自民党は「現行憲法条項のいくつかは自然権としての人権についての西欧的な理論に基づいているので、これらの条項は改定が必要だ」と指摘してきた。


 自民党が反対している「自然権としての人権についての西欧的理論」とは何のことかと読者は当然疑問に思うだろう。お教えしよう。自民党の議員たち、大臣たち−安倍晋三総理大臣を含む−は日本会議と呼ばれるラディカルなナショナリスト組織のメンバーである。この組織は(最近まで文科相であった下村博文によれば)日本は第二次世界大戦中に犯した戦争犯罪を認めるという「自虐史観」を捨てなければならないと考えている。


 日本会議の見解では、日本は戦争について不当な扱いを受けている。米議会のリサーチサービスによれば、日本会議第二次世界大戦中に「日本は東アジア諸国を解放したことについて称賛されるべき」であり、「東京裁判は違法」であり、南京虐殺は「誇張され捏造された」ものであると信じている。日本会議帝国陸軍による中国人朝鮮人慰安婦”の強制的売春も否定している。そして、日本は現行憲法では憲法違反とされている軍隊を再び有すべきであり、天皇崇拝体制に戻すべきだと考えている。



 ナチに類する非道な戦争犯罪に対する憤りゆえにアメリカは日本がリベラル・デモクラシーの政体になることを強要し、あわせて日本の天皇に自己の神格を否定する以下のような宣言をなさせた。「私と国民との間のむすびつきは、専ら相互の信頼と敬愛とによるものであって、単なる神話と伝説によって生まれたものではない。天皇は神であり、かつ日本国民は他民族に優越した民族であり、世界を支配すべき運命を有するとの架空なる観念に基づくものではない」。
 

 だが、日本会議のメンバーの暴走は続いている。2013年、安倍晋三の新内閣の閣僚18人のうち15人が日本会議関係者であったことを祝うパーティではかつての「日章旗」が振られ、「戦後レジームからの脱却」が誓言され、国歌(たいへん短いものであるが、これまで論議の的になってきた)が斉唱された。日本の国歌は天皇に捧げられたものである。「あなたの治世が千年、八千年も続きますように。小石が苔の生す巨岩となるまで」。


  自民党改憲草案は政教分離原則を排除して、国家神道天皇崇拝に戻る道をめざしている 改憲草案はまた「日本国民は国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使は国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という条項と、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」という条項も廃棄する。日本はこれまでのところこの特異なルールに従ってきたが、クレディ・スイスの戦力インデックスによれば、日本は現在世界第四位の軍事力を有している。これはアメリカ、ロシア、中国に次ぐものである。


 新憲法はまた政府は「公益及び公の秩序に違背する場合は」言論や表現を規制しうるとして、言論の自由も廃している(実際に、日本政府は過去何年か言論の自由には圧力を加えて続けている)。



 『ジャパンタイムズ』によれば、2014年に総務大臣は、放送局に対して政府が「政治的に中立性を欠く」と判断した番組については放送中止を命じることができると警告した日本の公共放送の会長−安倍総理の友人である−はNHK(日本におけるBBCに当たる)は「報道において政府の立場から離れるべきではない」というのが彼の立場であると公言した。


 この五年間で日本の報道の自由ランキングは−国境なきレポーターが格付けするものだが−は世界11位から72位にまで転落した。


 憲法草案は「自由と権利の代償として責任と義務を負うことを自覚しなければならない」としている。この「義務」の中には新憲法の遵守義務と国歌尊重義務も含まれている。また、「国民は公益と公の秩序に従わなければならない」「非常事態」において「国民は政府の指示に従わなければならない」とも定められている。


 しかし、すべての国民がこの義務を課せられているわけではない。天皇だけは憲法遵守義務を免ぜられる天皇は新憲法下では内閣からの「助言」を求めることになっている。現行憲法では「内閣の助言と承認」である。


 もし新憲法が国会の3分の2の賛成を得た場合、その採否は国民投票での単純過半数で決される。51%の日本の有権者が自分たち自身の市民権を制約する憲法に投票するというようなことを誰が予測ができるだろうか。そもそもそれ自体が不条理な話なのだが、にもかかわらず日本の有権者自民党改憲勢力に両院の3分の2を与えたのである。


 五年前にオバマ大統領は「アジア旋回」政策を掲げた。中国が南シナ海を支配し、軍事化しており、北朝鮮は新たな核兵器のために運搬システムを実験しているおり、かつわれわれの最も重要なアジアにおける同盟国でありかつ自由世界で二番目に富裕な国がファシズムに方向転換しようとしている以上、アメリカが拱手傍観しているわけにはゆかないだろう。


◎大正という時代が、昭和の戦争(大東亜戦争)の時代の前夜だとすると、平成の今は、新たな戦争前夜を準備している段階だと十分に考えられます。ずるずると歴史を繰り返してはいけない。天皇陛下生前退位も、この中でとらえると、確かに、この歴史に逆行する流れに一石を投じるものであり、そういう捉え方で私たちが考えるべき問題なんだと思えてきました。今の憲法の精神を体現されておられるような平成天皇は、自民草案にある国家元首に祀り上げられるようなことを喜んで受け入れる方ではないですね。
PS:

山崎 雅弘さんがリツイート


仮寓亭日乗 ‏@izakaya3maiUS · 7月17日

仮寓亭日乗さんが山崎 雅弘をリツイートしました

この人たちからすると江戸時代までの天皇のありかたは国体の破壊なわけだな。


仮寓亭日乗さんが追加

山崎 雅弘 @mas__yamazaki 小堀桂一郎日本会議副会長)「天皇の生前御退位を可とする如き前例を今敢えて作る事は、事実上の国体の破壊に繋がるのではないかとの危惧は深刻である」(産経)http://bit.ly/29RP8ko  日本会議の本音が出てきた。生前退位は国体の破壊という1930年代感がすごい