BBC「日本の秘められた恥」(伊藤詩織氏のドキュメンタリー番組)


昨日は両親のお風呂の介助に看護師さんが来て下さる日。看護師さんに「サッカー、見はったんですか?」と尋ねられて、母が「はい」と答えています。本当かしら…と思いながら、夕食時、母に確かめてみました。「3時に起きて、見たよ」と。わが母ながら驚きました。それまで、確かに、4年先は見られるかわからないからとか、大事な試合だから見なきゃとか言っていましたが、是枝監督の映画と同じで、その日になったら、ヤ〜メタ.になると思っていました。是枝監督の映画は、テレビでは「そして父になる」で、パルムドールをもらった「万引き家族」じゃないから見なくてもいいと思ったらしいですが。

母は、私たちが子供のころから手仕事をしながら高校野球の実況放送を熱心に聞いていました。プロ野球は興味がないのに高校野球はなぜか熱心でした。そしてテレビの時代になって…高校野球をテレビで見ているかは知らないのですが、サッカーのワールドカップはずっと見て、日本代表チームを応援しています。それでも、96歳で、3時に起きて2時間の試合を観戦するとは!! 驚きました。今回は、寝ている父に遠慮して、電気は消したままテレビだけつけて観戦したとか。通路のところから見たら、網戸越しに我が家も明るかったので見てるなと思ってたと。確かに、私たちも3時前に起きだして、階下の居間の大きい方のテレビで見てました。それにしても、驚きました。

◎さて、伊藤詩織さんです。彼女の勇気ある告発は、アメリカの「me,too」より早かったのですが、日本の女性の反応は期待に反したものでした。沖縄のレイプ問題にしても、日本では性犯罪については被害者の女性に冷たい反応が返ってきます。男性からだけではなくて女性からも。これも奴隷が奴隷の状況を認められない奴隷根性のなせる業ですね。慰安婦問題が日本で正しく受け止めきれないのも、こういう背景があるからだと思います。日本の民主主義や人権意識の遅れ、自覚できないといけない問題です。BBCのドキュメンタリー番組についての記事です。引用元では動画を見ることができます。ここでは、文字を全文コピーしておきます:
●その前に、BBCの番組内容の要点の紹介です:

 内田樹さんがリツィート
mipoko
‏@mipoko611 7月3日
mipokoさんがBBC News Japanをリツイートしました
・総理の伝記記者による準強姦・逮捕が直前で停止した警察の異例の命令と不透明人事
被害者を亡命同然の国外避難に仕向けた与党議員と政権支持者らによる攻撃
・被害者宅の盗聴
本来なら連日メディアで特集が組まれていい政治・社会問題だが、これが報道できない日本は旧共産圏に近い

●海外のメディアやジャーナリストが伊藤詩織さんの問題を取り上げると、「なぜ伊藤詩織は外国で告発するのか?」と勘違いする人たちがいるそうです。海外が問題にしているのは、伊藤さんの問題に対する日本のメディアや政治家、女性の冷ややかな反応の異常さであることも知らないのですね:

内田樹さんがリツイート
◆兵頭正俊
@hyodo_masatoshi 7月2日
「なぜ伊藤詩織は外国で告発するのか」と、勘違いしたようなツイートを見受けます伊藤詩織は最初から日本で告発し、日本で記者会見し、日本で本も出したのですよ。彼女を外国に追い出したのは日本のメディアです。誰も彼女に文句を言う筋合いはありません。追い出すと、才能があれば外で活躍します。

BBCのインタビューに答える自民党杉田水脈(みお)議員。こんな発言をして平気!? 麻生さんも被害者と加害者を取り違えた発言をよくします。自民党の政治家の特徴なのかもしれません。それに追随している女性議員はもっと軽蔑に値します。

◆mipoko
@mipoko611 6月29日
私は杉田水脈議員を心底軽蔑してるし、発言は人間の醜い部分を煮詰めたような言葉だと思うけど、それとは別に、日本の歪んだ男尊女卑社会は、女性ですら過剰適応して名誉男性化した方が生きやすいのも忘れてはいけないと思う。杉田議員はそれを体現したカリカチュアだよ

●記事の最後にはBBCのこの放送を見て寄せられた感想もまとめられています。それでは、全文です:

「日本の秘められた恥」  伊藤詩織氏のドキュメンタリーをBBCが放送
2018年06月29日 (http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44638987


BBCは28日夜、強姦されたと名乗りを上げて話題になった伊藤詩織氏を取材した「Japan's Secret Shame(日本の秘められた恥)」を放送した。約1時間に及ぶ番組は、伊藤氏本人のほか、支援と批判の双方の意見を取り上げながら、日本の司法や警察、政府の対応などの問題に深く切り込んだ。制作会社「True Vision」が数カ月にわたり密着取材したドキュメンタリーを、BBCの英国向けテレビチャンネルBBC Twoが放送した。


番組では複数の専門家が、日本の男性優位社会では、被害者がなかなか声を上げにくい状況があると指摘した。伊藤氏はその状況で敢えて被害届を出し、さらには顔と名前を出して記者会見した数少ない日本人女性だ。


伊藤氏は2015年4月に著名ジャーナリストの山口敬之氏に強姦されたと、警察に被害届を出した。最初の記者会見を開いたのは、2年後の2017年5月。山口氏の逮捕令状が出たにもかかわらず逮捕が見送られ、証拠不十分で不起訴処分となったことへの不服を検察審査会に申し立てたという発表だった。


番組は、伊藤氏が「すごい飲み方」で泥酔して吐いた、ホテルでのその後の性行為は同意の上でのことだった――という山口氏の主張や反論とあわせて、伊藤氏自身が語る2015年4月の経緯を、現場となった都内のすし店やホテルの映像などを差し挟みながら、詳細に紹介した。当時以来初めて現場のホテルを訪れた伊藤氏が、こわばった表情でホテルを見上げた後にしゃがみこみ、「これ以上ここにはいられない」と足早に立ち去る姿も映している。
ニューヨークでジャーナリズムを学んでいた伊藤氏は2013年秋、当時TBSワシントン支局長だった山口氏とアルバイト先のバーで知り合った。インターンの機会がないか問い合わせると、山口氏からプロデューサーの職を提供できるので就労ビザについて帰国中に相談しようと呼び出しがあったという。


日本酒を少し飲むと「気分が悪くなり、トイレで意識を失った(中略)激しい痛みで目が覚めた。最初に口にしたのは『痛い』だったかもしれない。それでも止めてくれなかった」と語る伊藤氏は、その後、ベッドの上で山口氏に覆いかぶさられ息が出来なくなった際に「これでおしまいだ、ここで死ぬんだと思った」と涙を流して語った。さらには、抵抗する自分に山口氏が「合格だよ」と告げたのだとも話した。


(動画=強姦被害訴えた伊藤詩織さん、家族も中傷され BBC放送番組が紹介)



首相に近い人物


番組では山口氏について、事件当時は日本の有名テレビ局のワシントン支局長で、安倍晋三首相を好意的に描いた人物伝の著者だと紹介した。伊藤氏と山口氏を取材した記事を昨年12月に発表した米紙ニューヨーク・タイムズのモトコ・リッチ東京支局長は、山口氏と安倍首相の近い関係から「この事件に政治的介入があったと考えられている」と話した


山口氏は疑惑を全て否定している。番組は、山口氏が出演したネット座談会を紹介。山口氏はそこで、伊藤氏が泥酔していたため仕方なく宿泊先のホテルへ招いたと話した。また番組は、性行為はあったが合意の上だったという同氏の主張も伝えている。


番組はその上で、日本の刑法では合意の有無は強姦の要件に含まれていないと説明。暴力や脅迫があったと証明しなければ日本では強姦とは認められないことにも言及し、性暴力の被害者の多くが実際には恐怖で身がすくんで抵抗できず、助けを呼ぶこともできないことにも触れた合意のない性行為はたとえ知人相手でも強姦なのだという、欧米では徐々に常識となりつつある考え方について、日本の大学生が教わったことがないというやりとりも紹介した。


また、日本の強姦罪(現・強制性交等罪)は2017年の法改正まで100年以上変わらず、強姦は窃盗より刑罰が軽かったなど、日本社会で性暴力が軽視されてきたことも法律の専門家などのコメントを通じて語った。


(動画=性暴力について語らない、語れない日本人 伊藤詩織さんが聞く)

<関連記事>
BBCのラジオ番組、伊藤詩織さんに取材(http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42526640)
日本の #MeToo:沈黙を破り始めた女性たち(http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43875386)
今年のピュリツァー賞 ハリウッドのセクハラ追及報道が受賞(http://www.bbc.com/japanese/43792433)


番組はさらに、日本で性暴力の被害者が事件後にいかに苦しむかも、伊藤氏や、伊藤氏が訪問した別の日本人女性を通じて紹介した。


伊藤氏は番組で、都内唯一の性暴力被害者の支援センターを訪問した。自分の被害直後に電話をしたが、直接来なければ相談を受け付けられないと言われた場所だという。番組によると、この被害者支援センターは東京都の人口1300万人に対して担当者が2人体制と人員不足が目立ち、暴行直後に法医学的証拠を残すための「レイプキット」も提供できていない。


番組はこのほか、警察の問題にも触れている。日本の警察における女性警官の割合はわずか8%で、伊藤氏が事件直後に被害届を出した際も男性警官に被害の詳細を証言しなくてはならなかったこと、複数の男性警官の前で警察署内の道場のマットに横になり、等身大の人形相手に事件を再現させられたことなどが取り上げられた。


「男性警官が人形を私の上に乗せて上下に動かし、こういう様子だったのかなどと確認された」と伊藤氏は話し、番組は、警察のこの捜査手法をセカンドレイプだと非難する声もあると指摘した。


(動画=男性警官のみを前に人形相手に再現させられ……伊藤詩織さん)



女としての落ち度


2017年5月、伊藤氏は検察審査会に不服を申し立てるとともに、記者会見でこの事実を公表した。それ以降、伊藤氏がソーシャルメディアなどで激しい中傷や非難を受け続けていることや、伊藤氏の家族も中傷にさらされていることなども、番組は紹介した。伊藤氏が簡易版の盗聴探知機を買い求め、自宅内を調べてみる様子も映し出した。


一方で番組は山口氏を擁護する人物として、自民党杉田水脈議員を取材した。杉田議員は、ネット座談会などで伊藤氏を強く批判している。
番組の取材に対し杉田議員は、伊藤氏には「女として落ち度があった」と語った山口氏と安倍首相との関わりから、野党議員の一部が警察捜査を疑問視して超党派で「『準強姦事件逮捕状執行停止問題』を検証する会」を立ち上げたことも触れた。野党議員が国会で安倍首相に、逮捕中止について知っていたかと質問し、首相が個別案件について知る立場にないと反論する映像も紹介した。


(動画=この痛みを我慢して沈黙しても役に立たない……伊藤詩織さん)



「黙っているよりはずっといい」


個別案件ではなく、日本政府の性暴力対策全般について、番組は指摘を重ねた。
政府は昨年、初となる性犯罪・性暴力被害者支援交付金を設置し、今年度は1億8700万円を振り向けると発表した。しかし番組によると、日本の半分の人口しかない英国では、被害者基金の予算はその40倍だという。
日本政府は2020年までに各都道府県に最低1カ所の支援センターを設置する方針だが、20万人当たり1カ所という世界基準に沿うならば、日本には635カ所必要になる。


伊藤氏が内閣府男女共同参画局を訪ね、これについて質問すると、内閣府の職員は「検証が必要だろうと思う」と答えた。
2017年9月に検察審査会が山口氏を不起訴相当としたため、山口氏の刑事責任を問うことは不可能になったことも、番組ははっきりと伝えた。不起訴相当の知らせを受けた伊藤氏や家族の反応、その後さらに民事訴訟で損害賠償を求めていく様子も伝えている。


それでも、昨年秋に米映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーン被告(強姦および性的暴行罪で逮捕・起訴)への告発から広がった「#MeToo(私も)」運動を機に、伊藤氏への支持が日本国内でも広がったことを番組は説明。伊藤氏も変化を感じていると番組で話した。
何か動きを起こせば波が起こる(中略)良い波も悪い波も来るが、黙っているよりはずっといい



放送後の反響  NNNNNNNNNNNNNNN


番組が放送されると、ツイッター上ではハッシュタグ「#japanssecretshame」を使った感想が次々と書き込まれた。


英ウスタシャー在住のローナ・ハントさんは、「女性として、そして引退した警官として、ショックで呆然としている。詩織、あなたは本当の英雄 #JapansSecretShame」とツイートした。


ロンドン在住の「paulusthewoodgnome」さんは、「強姦に対する日本社会の態度は本当に気がかりだ。伊藤詩織のような人がほかにどれだけいるのか。自分と自分を襲った人間にしか知られていない状態で。ほぼ全方面から見下されながら、詩織は実に勇敢で品位にあふれている。素晴らしい」と書いた。


アイルランド・ダブリン在住のルーシー・ホワイトさんは、「私の『ぜったい行きたい』リストから、日本はいきなり外れてしまった。#JapansSecretShameを見ているけど、性的暴行を軽くあしらう態度にぞっとしている。警察に女性は8%しかいなくて、強姦被害者が訴え出ると、等身大の人形で事件を再現しなくてはならない」と書いた。


アイルランド在住のシネイド・スミスさんは、「#JapansSecretShameを見ている。ショックだし、ものすごく心が痛い。何がいやだって、女性が女性を攻撃してること。被害者を支えるんじゃなくて、女性が彼女を責めてる……。犯罪を犯した男を責めなさいよ!」と書いた。


英無料夕刊紙イブニング・スタンダードも番組を取り上げ、「自分たちの居場所から、#MeTooは世界の先進国ならどこでも同じようなインパクトがあったと思い込むのは簡単だ。とんでもない。この番組によると日本では、昨年10月に暴露されたハービー・ワインスティーンの件への反応は『ひっそりとした』ものだった」と書いた。記事はさらに、無実を主張する山口氏が「詩織さんは酔っ払っていたと言う。まるでそれで十分、正当化されるとでもいうように」と書き、「負担も大きいが、声を上げることは沈黙させられるよりも良かったと(番組で伊藤氏は)結論する。彼女に耳を傾けよう」と結んでいる。



英紙ガーディアンも番組のレビューを掲載。「Japan's Secret Shameは、見るのがとても大変なドキュメンタリーだ。痛ましく、不愉快で、動揺させられる。このドキュメンタリーはそれに加えて、勇敢で必要な、極めて重要な作品だ。プロデューサー兼監督のエリカ・ジェンキン氏が、細心の注意と静かな怒りを込めて作ったもので、女性への暴力や構造的な不平等、差別といった大きな話題を、もっと小規模で個人的な物語に焦点を当てて描いている」と紹介した。
(編集部注――日本では「ワインスタイン」と表記されることの多いワインスティーン被告の名前は、本人や複数の関係者の発音に沿って表記しています)


警察庁では性犯罪被害の相談電話窓口として、全国共通番号「#8103」を導入しています。また、内閣府男女共同参画局でも性暴力被害者に必要な情報を提供しています。現在、43都道府県に「ワンストップ支援センター」が設置されています。


「Japan's Secret Shame」は6月28日にBBCTwoで英国内で放送された番組です。6月29日現在、日本での放送は未定です。

★動画及び引用元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44638987
(写真は、先週土曜日、唐池公園で写したものです)