「原発事故に立ち向かうコメ農家」つづき

満月が妖しく赤く欠けるのを見ながら、昨日の、一昨日になってしまいましたが、ETV特集のつづきです。

自分で書き上げた告訴状を東京地方検察庁に提出した鈴木博之さんを、家族は心配しながら見守る。妻の八重子さんは「やめてくれとは言わない。やると決めたら遣る性格だから」と。
その後直ぐ告訴状は返送された。添えられた手紙には「具体的な犯罪事実が特定されていない」と書かれていた。そこには「告訴を受理するかどうかの判断材料に乏しい」という説明も。「法律用語とか、法律を知っている人でないとダメなのか・・・と最初は思ったが、読み直してみると、書かれてるように、法律の何条に違反しているとか、具体的に書かないといけないと思った。ほんとは、甘えがあって、察してもらえると思ってた」と鈴木さん。


7月20日群馬県伊香保温泉で、年に一回の大規模稲作農家の全国大会が開かれている。「第36回全国稲作経営者現地研究会inぐんま」の会場に旗を持った鈴木さんの姿が。参加者の前で鈴木さんが訴えます。
「30km圏外だけど、風評被害の嵐。東電、行政からは未だ何の説明もなされておりません。先祖伝来の土地、墓もある。逃げるわけにいかない。逃げられない。悔しいです」と込み上げるものを堪(こら)えながら、「みんな仲間だろ〜一緒に何かしてくれ! 自殺しかけた人もいる」、「事故でしょ、事故だよね。警察も動かない。事故証明も出ない。東日本大震災地震津波は(被災証明書が)出る、原発事故だったら出ないんだ。」
「逃げ出せねぇ、墓場 置いて逃げ出せねぇ。きついよ〜これ」、「福島県人の俺達、何か、悪いことやった?」「福島県人、大人しいから誰もこんなことやらない。でもね、なんか、やらねぇと生きられねぇの」。(聞いている仲間の反応が気になります。声援も飛びましたが、そんなこと言われたってぇ〜と困った様子の人たちが多そう・・・蛙)

翌日、鈴木さんはあの旗を持って東京に。「自分の目で東電の動きを確かめたいな〜と思って来たんです。」
そこへ背中に「警視庁」と書かれた制服姿の警官が2人。「今日はどちらへ?」「メガホンは?」「一人?」「拡声器は?」とたった一人の鈴木さんに矢継ぎ早の質問です。(何のため? 市民を守る為ではなくて、明らかに東京電力という大企業を守っていますね。大事故を起こし、放射性物質を撒き散らした犯罪行為にも似た落ち度のある会社を守っています・・・蛙) 鈴木さんは東電本社前の道路を隔てた歩道に立った。オフィスの退社時間が過ぎて人通りがなくなっても鈴木さんは留まり続けました。


10月、天栄村です。実りの季節を迎えました。石井さんは果たして米には放射性物質がどれだけ移行しているのか不安です。収穫した米を脱穀して玄米にして検査のために役場へ。天栄村では独自に測定器を購入、米や野菜などを無料で検査するサービスを行っている。
村では0〜10ベクレル以下をND(Not Detected)-不検出(極めて小さい値で検出されなかったに等しい扱い)としている。
[検査の結果、測定数値は「NDー不検出」であった。米を放射能から守る必死の努力が実を結んだ。村独自の調査だけでなく県の調査でも天栄村の米は全てNDだった。作物には放射能の移行はなかったものの、田圃には放射性物質が残されたままである。石井さんは言う、「半減期を待つしかない。除染を国の方で考えて、あきらめずにやってほしい」。
収穫も終わり出荷の時期になった。栽培研究会の主力商品である漢方薬の肥料を使って栽培した米は全て倉庫に残っていた。一袋づつ全て検査し、ND。しかし、全く売れない。風評被害で、米屋さんからの注文は一件もない。

福島県は9月から10月にかけて圏内全域で米のサンプル検査を実施。放射性セシウムが国の暫定基準値の1kg当たり500ベクレルを超える米は検出されなかった。それを受けて、10月12日、佐藤福島県知事はコメの安全宣言を出した。しかし、11月には福島市伊達市で基準を越える値が出て大きく報道された。
福島県は、これまで全てNDだった天栄村を除いた全市町村で再検査を実施する。28市町村、2400戸余りに上る。福島県の米の信頼は正念場を迎えている。

大玉村でも鈴木さんの収穫が始まった。「今年は、皮肉だね〜、 味も品質も良い、量も今年はとれた。それなのに、放射能が検出した。わけのわからない精神状態が一番いやだね」。
鈴木さんは米だけでなく土、ワラ、もみがら、米ぬかなどを専門家に送り検査を依頼する。自分の作った米にどれだけの放射性物質が入っているかお客さんに公表する。同時に東電を再び告訴する為の資料にするつもりだ。
数日後、検査結果が出た。 土壌は1kgあたり、セシウム134が1350、Cs137が1610で、合計2960ベクレルだった。白米は1.76と2.57で合計わずか4.3でNDの値だった。しかし、米は山積みになって売れ残っている。客の反応は厳しく去年の3割までに落ち込んでいる。「数値的には良かったけれど、お客さんはNDでは喜ばない。ゼロでないと納得しない」と鈴木さん。
農作業は一段落したが、鈴木さんは独自の調査を続けていた。米の乾燥機に溜まったワラや籾殻を念のために分析に出したら500ベクレルを超えたセシウムが出た。
鈴木さんは飽くまで農地の放射能汚染の責任を問う姿勢を変えない。稲刈り後の様々な検査結果を証拠に再び東電を告訴しようとしている。「我われ農家仲間では土の性質のことを「土性」と呼んでいる。この「土性」を壊されたと考えて、器物損壊罪で告発します。」 放射能と向き合う以上、福島の農民の不安と怒りは行き場がない。そこに挑もうとする鈴木さん、困難な闘いが始まります。

天栄村。収穫の終わった田圃や周辺地域で天栄米栽培研究会のメンバーたちがカウンターを地面において放射線量を計測しています。1.34ベクレル。
残った放射性物質は来年以降どんな影響があるのか。田圃の周囲に広がる豊かな森と、そこから流れる豊かな源流水は美味しい米を育む源だ。そこにも放射性物質が入り込んでいる。
放射能と土、土と作物という新たな難問を背負わされて今年の米作りは終わった。
米をどう守っていくのか、農家に厳しい試練が続きます。

この番組で紹介されている天栄(てんえい)村と大玉(おおたま)村の農家の方たちは、出来る限り化学肥料を使わない安全で美味しい米作りを精魂こめて長年にわたって続けられてこられた優秀な農家の方たちです。
長年の努力がやっと実を結んで、コンクールで優勝したり、全国に消費者網が出来上がったというのに、森や水や土が放射能汚染に晒される、その悔しさ。風評被害の凄まじさとその無念。
グループと個人の立ち向かい方、闘い方にも考えさせられます。
孤軍奮闘の鈴木さんに支援の輪が広がれば・・・と願っています。差し当たり「あだたらの雫」を注文してみようか・・・
「天栄米栽培研究会」のブログはコチラ:http://blog.goo.ne.jp/tenei-kaokome/e/86e9cfddd5ac6d95bccb5e08966f66f1
大玉村鈴木博之さんのお米「あだたらの雫」はコチラ:http://www.fm-mot.com/shop/3_23.html
 ▽あるいは「天栄村栽培研究会」さんのコメント欄に紹介されていた直売所の連絡先を以下に:

 大玉村鈴木博之さんが紹介していた直売所
     ●大玉村産業振興センター あだたらの里直売所
         【営業時間】午前8時30分から午後5時  【連絡先】0243‐48‐2317(兼fax)