「魂のダンス 東北へ届け!」

立春! 寒さはどん底ですが、光は春の日差し。「春、立つ」に心は浮き立ちますが・・・
節分の金曜日、夜8時からのNHKは「かんさい特集」、昨日は「魂のダンス〜東北へ届け俺たちの想い」というタイトルでした。

番組の最後に住谷アナウンサーが、今年の4月から全国の中学校でダンスが必須科目になりますとアナウンス。へぇ〜と驚きましたが、それに合わせての内容だったのか、今村先生(「たかじんのそこまで言って委員会」で知ったのですが、もとヤンキー(不良)でガラの悪い話し方の=井筒監督みたいな感じの先生ですが、不登校の子供を立ち直らせたり、教育問題では”有名”な先生)とダンスが取り上げられていました。

今年55歳になる今村先生には、ただ一人尊敬できる大人が居ました。それは、高校2年生の担任の先生で、退学させられそうになった自分のために辞めさせられるのを覚悟で守ってくれた先生です。それで、自分もたった一人のために自分の首をかけることのできる先生になろうと決心。1985年、学校の先生になりました。

教員になって、心を開かない生徒でもダンスでは自分を誤魔化すことができず「生き方そのものが踊りには出てゆくっていうふうにおもうんですよね」と、子供たちを指導する科目として有効だと1999年、関西京都今村組を結成、成果もあげますが、学校側はいい顔をせず、6年前に学校をやめます。

今は、関西京都今村組というダンス集団(結成以来13年、中高生70人)となって、いろんな賞をとったりしているそうです。そこに集まってくる子供たち、中高生や学校へ行っていない子供たちが、昨年の東日本大震災以後、東北の被災地へダンスで励ましに出かけます。3人の姿を通して成長していく思春期の彼女、彼たちが紹介されます。

16歳のあすかは、高校へは行かずにダンスに打ち込んでいます。両親はいつも家にいなくて、小さいころから弟との二人の食事とお弁当は自分で作っていました。仲が悪い両親、けんかが始まると外に出て怯えながらおさまるのを待っていました。今村組のダンスを見ていたあすかに先生から、ここが居場所ならいていいよと声をかけられ、今はダンスのリーダー的存在ですが、学校へは行かず、夜のバイトをしています。
6月に避難所で踊ったあすかは、マスクをした初老の男性の悲しそうな姿にかける言葉が見つからずただじっと手を重ねるだけでした。家族を亡くした中学生に仲間が「なんで頑張れるの?」とたずねます。「生きたくても生きられなかった人たちの、その分まで生きたいと思うから…」とこらえても流れる涙の頑張る女子中学生の姿に、あすかの押さえ切れないこみ上げる嗚咽。今村先生が求めていた心・感情です。彼女は関西に戻ってからは夜のバイトを辞めてダンスにますます打ち込みます。

8月、東北の被災地で舞台の上で踊る今村組のダンスを見て激しく泣き出した女性。踊り終わった15歳の高校1年生の真咲(まさき)の背中を今村先生はそっと押します。まさきは女性の前に駆け寄ると二人はしっかり抱き合います。津波で娘を亡くした女性はダンスを見て「もう一度頑張る」とまさきに伝えたのでした。曲がったことの嫌いな彼女は中学校でも教師が許せないという態度で先生から嫌われていました。学校では落ちこぼれと言われ、自分を必要としてくれる場所を探していました。学校をやめて就職しようか〜と悩んでいました。そして、この経験から、自分は人の役に立つ仕事がしたいと、学校をやめて今村組に就職してスタッフになりたいと言い出します。先生は、「高校をやめてまで・・・というのが良いのかわからない。もう一回大人を信じることが出来るようにやっとなれた、しかし、学校という組織の中ではそれが叶わない、受け容れてやるべきか、僕もどうしていいかわからん」。

今村組では12月24日に東北でクリスマスライブを行うことになり、11月特訓が始まっています。いつも中央で踊る17歳の宏哉のダンスに今村は納得がいかず、「お前のダンスは、形にばっかり囚われている。キレイに踊ることが目的なんと違うか!? お前が他人から、どう見られているかばっかりや。俺のダンスを見た人を元気にしたいとか、他人の心のために何かできへんやろか?って考えてる感じが全く伝わらん!」と問いただします。宏哉の「東北のことが、ホンマ詳しいことが分からへん、どんな気持ちになったらいいのかが・・・」という返答に、彼は真ん中からはずされます。
東北の被災地での励ましのダンスの為、厳しい練習が重ねられます。当日、あの泣き崩れたお母さんも、悲しい眼の初老の男性も、涙をこらえて頑張っていた中学生たちもクリスマスライブに集います。ライブが始まる前、中学生たちからお守りのプレゼントが渡されます。亡きお母さんが車につけていた交通事故のお守りを渡すとき、「今村組は車で被災地を訪ねていろんなところを回るので事故から守ってもらえるように」と中学生が話します。今村先生は、宏哉を指名します。そして一言、「もらう資格のある男にならなあかんぞ!」。宏哉は今分かったのです。「ホンマ、誰かのために踊るって意味が、分かったかもしんない」とマイクでお礼の言葉を言いながら涙をぬぐいます。

いよいよクリスマスライブのスタートです。あの中学生たちが自分たちの元気なダンスを披露します。そしていよいよ今村組のダンスです。あすかも、真咲も、そして広哉も誰のために何のために踊るのか、今は迷いもこだわりもありません。弾けるように、弾むように、心の底から力いっぱいの魂のダンスです。

今村先生のダンスの指導はとても厳しく、思いのこもらないダンスは見抜かれます。「東北のために踊りたい、人のために踊りたいという思いを持ってんのか? いじめのつらさはわかりません、いじめられたことがないから。不登校の人の苦しさはわかりません。だけど、わかろうとしてる。わかろうといつもしたし、わかろうとしてる。わからんということを隠さない。きみらはわかろうと努力してるのか!?」
「ダンスはごまかしがきかない、人の生き方がそのまま出るから」という今村先生の言葉は、ごまかしを見抜く力、ごまかしを許さない厳しさを表しています。ダンスが子供たちを変える力を持つためには、指導する先生の力が試されます。全国の中学校で、先生と生徒の本気の取っ組み合いが始まるといいですね。