脱亜論と領土・歴史問題とWANの公開質問状

先日、「竹島問題、関心ないの?」と頂いた電話の時のことです。私が、ネットでウロウロとブログを訪ね歩いていて、慶応大学出身の方らしく、「竹島尖閣問題で韓国、中国は隣人としてふさわしくない。大学の先輩が「脱亜論」で言ってたことは正しかった」と書いていた方がいたよと私。彼女は「福沢は散々やった上で言ったらしいじゃない」と。「それにしても、今、脱亜論を持ち出してどうするの?」と私
(福沢の「脱亜論」については2010年2月3,5,6日のブログでとりあげたNHKの「日本と朝鮮半島2000年」参照。朝鮮半島の近代化に福沢がどのように関わったかが描かれています。入れ込んだ挫折が「脱亜論」で、福沢が「脱亜入欧」を言いだしたというのは後付という論もあります。私が電話で言ったのは「慶大の後輩が受け止めている”脱亜論”」のことです。)

そうしたら、「Various Topics」さんのブログで「脱亜論」に触れた記事を見つけました。8月26日の「領土問題も明治以来の脱亜論から」(http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2012/08/post_f097.html)という記事です。その中で、日本の「歴史問題」についての英国フィナンシャルタイムズの記事を紹介されていますので、そのままコピーしてみます。

領土問題も明治以来の脱亜論から

領土問題や、歴史認識は、その国の教育が国民にしてきた教育が作りだすものでしょう。

だからこそ領土も戦争も、敵対している相手と合意することはないのですが、「何故、これほど敵対しあうのか」ということを、考える余裕が必要だと思います。

以下、フィナンシャルタイムズの記事をJBpressから。



JBpress (2012年8月24日)

日本と中国と「歴史問題」の遺産 (Financial Times)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35959


日本の民主党は3年前に政権を取った時、外交政策を抜本的に見直すことを約束した。民主党は、米国に対する「過度な依存」や中国との緊張関係に対処することで、米中両国との関係を再調整したいと考えていた。


 当時の鳩山由紀夫首相の言葉を借りるなら、米国一極支配から多極化しゆく世界の中で、日本はアジアが「基本的な生活空間」であることを再発見するはずだった。


(中略)


領土や歴史教科書、戦争記念碑、漁業権、埋蔵石油を巡る論争はその一部にすぎない。すべての問題の根底にあるのは、日本の戦時中の行為と(少なくとも近隣諸国の目からすれば)日本が自らの行為をきちんと悔い改めていないことだ。


 日本が特に中国、より一般的にはアジアとの間で抱える問題は、第2次世界大戦よりも前にさかのぼる。この事実は問題解決を一段と困難にするため、実に残念なことだ。


 1885年、日本の新聞に「脱亜論」と題した匿名の社説が掲載された。1万円札に描かれている元武士の近代化論者、福沢諭吉が執筆したとされる社説は、中華思想の世界を退け、西洋の学問を受け入れるよう主張した。


 こうした考え方が1868年の日本の明治維新の基礎だった。すなわち、侵入してくる欧米列強の植民地略奪から日本を守ることを目的とした大規模な近代化プログラムだ。


 日本はやることなすことにおいて、他国を侵略する慣行も含めて、西洋人の真似をした。これは残忍で悲劇的な結果を招いた。第2次世界大戦終結後、日本は西側陣営に残った。当初、米国の占領下に置かれた日本は、それ以来ずっと、軍を維持したり厳密に独立した外交政策を追求したりする権利を奪われ、米国との属国関係が続いている。


 日本が戦時中に何をしたのか十分理解している日本人は大勢いる。多くの日本軍兵士が勇敢にも、戦時中の残虐行為について口を開いた。日本政府は戦時中の行為について、数えきれないほどの場面で謝罪してきた。しかし、日本はいくつかの理由から、ドイツほど完全に「歴史問題」に取り組むことができなかった。


 1つは、その名の下に戦争が戦われた天皇が、その座にとどまったことだ。そして、もう1つは、戦後にアジアが冷戦の凍結状態に陥ったことだった。イデオロギーによる分断について和解できる見込みはほとんどなかった。冷戦が後退していくと、歴史に関する不快な問題が、ぬかるみから再び頭をもたげた。


(中略)


摩擦がどう収まるのか、なかなか分からない。唯一の長期的な解決策は、欧州連合EU)の線に沿った、何らかの形のアジアの政治共同体だろう。これは敵対関係にあった国々を制度的に結束させる取り組みになる。


 しかし、向こう数年間、あるいは数十年のうちに、そうしたプロジェクトが勢いを増す見込みは、まさにゼロだ。150年前にアジアを去った日本は、容易に戻る手段がないことに気づかされている。



この記事には違和感を持つ箇所もありますが、

「日本政府は戦時中の行為について、数えきれないほどの場面で謝罪してきた。しかし、日本はいくつかの理由から、ドイツほど完全に「歴史問題」に取り組むことができなかった。」
というところは、確かであると思います。


それだからといって、東アジアの国が反日的教育をしても良いわけではないですが、しかし、そうした教育をする原点はここにあるのではないでしょうか。


さて、ところで、欧州の人々のなかには、「その国の国民」としての誇りと、「欧州人」としての自覚があります。

しかし、日本人の多くは「東アジア人」とくくられることに対して拒否反応を示す人は多いように思えます。(これは中国や韓国、台湾でも同じなのでしょうか。)


明治維新以来、「脱亜論」から抜けられない日本人がまだまだいるのか・・・。


参考:

『ドイツ人が考える日本のタブー』

http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2009/12/post_adcf.html

「Various Topics」さんは「脱亜論」から抜けられない日本人がまだいるのか…と書いておられますが、私は少なくとも一人見つけたことになります。冗談はともかく、この記事を下書きに入れてからチャンスがなくて寝かせたままでいましたら、8月31日の日経に独仏二人の専門家に領土問題を聞くという記事がでました。二人の意見をそれぞれパリとベルリンで聞いたという記事なのですが、長くなりますので、それぞれ一部端折りながら紹介してみます:

マルクスティーテン氏(独国際問題・安全保障研究所研究員)

◇同盟国であるべき日韓の対立は北東アジアの安全保障に大きなリスクだ。国際司法裁判所への提訴は理解できるが、日本に有利な判断になる可能性があり韓国は応じないだろう。これ以上の行動はとるべきでない。


◇日本社会は戦争を悲惨なものと受け止めているが、原爆投下など被害者としての側面に偏っていると周辺国は受け止めている。侵略者としての認識が日本社会に深く浸透していることが国外に周知できなければ、中国や韓国が領土問題に介入する口実を与え続ける。

 
◇「中韓ロとの問題はそれぞれ分けて考える必要がある。例えば北方領土。日本の主張は正しいが、戦勝国ロシアを納得させるのは至難の業だ。日本に戻ってきたとしてインフラ整備やロシア系住民の扱いなど難題を抱えるだけだろう。ドイツも敗戦で東部領土を放棄せざるを得なかった。


ジャン・フランソワ・サブレ氏(仏国立科学研究所上席研究員)

東京裁判A級戦犯がまつられている靖国神社に政治家が参拝することに、中国や韓国が反発するのは理解できる。フランスではパリの凱旋門の下に、世界大戦時にナチスドイツと協力した人は埋葬されていない。
 A級戦犯分祀(ぶんし)といった点では日本は前に進む必要がある。私は日本の戦後問題の総括は終わっていないと考える。


◇欧州人の多くは民主主義国の日本を応援している。戦前、日本はアジア各国が目指すべき国だった。最近は委縮した姿が目につき、残念に思っている。

●●●橋下大阪市長が、8/21、記者会見で、竹島に関連して「慰安婦問題」について発言、<「強制連行はなかった」、「証拠があれば、韓国は示して」、「河野談話を踏襲するのか」、「『慰安婦』制度は、今は非常に倫理的に問題がある制度かもしれないが、当時の時代背景でどうだったかをはっきりすべき」、「近現代史教育の充実を」などと発言しました。>(引用先:http://wan.or.jp/emergency/?p=1117
この発言に関して「women's action network=WAN」が公開質問状を市長に送っています
この公開質問状を読むと、「慰安婦問題」の問題点が解ってきます。コチラで是非:http://wan.or.jp/group/?p=2212
◎4日も「脱亜論」についてつづき。