原発輸出推進(グローバル企業)と核廃棄物の海洋投棄

今朝の日経新聞一面真中と三面に取り上げられた安倍総理原発輸出に関する記事です。
一面:「トルコは3カ所で原発の建設計画があり、地中海側アックユではロシアが、シノプでは日本勢が受注した。3カ所目は『建設予定地は選定中。日本とするのは歓迎だ』とエルドアン首相は言及。2023年までになるべく多くの原発が稼働するよう建設を加速し、30年には発電量の少なくとも15%を原子力にする方針を示した。トルコでは三菱重工業―仏アルバ連合が原子炉を売り込んでいた。事業費は2兆円規模。」
三面:「中東歴訪中の安倍晋三首相はサウジアラビアのジッダの大学で中東政策について演説した。同地域の経済発展を支援するため複数年で22億ドル(約2200億円)の政府開発援助(0DA)を供与する方針を表明した。」「首相は『日本は再生可能エネルギーや世界一安全な原子力発電の技術を提供できる』と述べ、技術協力も含め原発の輸出を推進する考えも示した。東京電力福島第1原発事故以降、停滞していた原発ビジネスを進める姿勢を国際社会に発信した形だ。」
◎これが日本国民の総意なんでしょうか?
原発事故が収束していないと現政権は認めています。事故被害で16万人の人たちが故郷へ帰れないままです。
どうして日本が「世界一安全な原発技術を提供できる」と言えるのでしょう。日本の原発製造業者は明らかに福島の原発事故犠牲者を人身御供(ひとみごくう)=犠牲にしています。原発被災者救済や核廃棄物や汚染水問題に投じるお金はケチっておいて、どうしてアフリカに多額の援助金を振舞えるのでしょうか? それにトルコやアフリカの新たに原発を建設しようとする国は核廃棄物の処理問題はどうするつもりなんでしょう。砂漠に埋めるつもりなんでしょうか。
原発を売るグローバル企業や売り込む政治家(安倍首相)にとってはそんなことはどうでもいいことなんです、と内田樹先生は仰っています。高校生相手に「東北論」を語る内田先生のお話の中で福島原発事故とグローバル企業についても触れておられましたので、関連部分をピックアップしてコピーしてみます:

・今回、福島の原発事故でいったいどれぐらいの国富を失ったのかまだ試算してないですよね。国土の何分の一かが、これから向こう何百年間か居住不能になるんです。尖閣とか竹島とか言っているけど、そんなのただの岩礁でしょう? でも、福島って、そこに何十万も生活者がいて、そこを生活基盤にしていた国土なんですよ。それが原発一個で失われた。われわれは国土を失ったんです。 その被害を考えたら、原子力発電が火力発電に比べて多少発電コストが安いからと言って、そんなの桁違いじゃないですか。被災者にまともに補償しようとしたら、これまで火力との差額で原発が稼いだ分なんて、全部吹っ飛んじゃう。経済的に考えても、原発はまったく間尺に合わないビジネスだったことが明らかになった。


原発続けたいって言ってるのは、グローバル企業なんですよ。彼らは先のことは考えてないから。彼らの政策適否の判断基準は四半期なんです。3ヶ月。とりあえず四半期の収益のことだけしか考えない。・ 長期的に考えてみた場合、原子力発電を使うと日本の国土が汚染されて、取り返しのつかない損害をこうむるおそれがある。これは間違いない。だから、長期的にみたら「割に合わない」と考える方が合理的なんです。でも、グローバル資本主義者はそうは考えない。原発をいま再稼働すれば、今期の電力コストがこれだけ安くなる。それだけ今期の収益が出る。配当が増える。だったら、原発再稼働を要求するのが当然、というのが彼らの思考回路なんです。


・僕たち日本国民は日本列島から出られない。ここで生きていくしかないと思っている。だから、国土が汚染されたら困るし、国民の健康が損なわれたら困る。でも、グローバル企業には気づかうべき国土もないし、扶養しなければいけない国民もない。誰のことも気づかわなくていい。株価のことだけ考えていればいい。 それはそれでしかたがないんです。そういう商売なんだから。でも、問題なのは、そういう人たちが国民国家の政策決定に深く関与しているということです。「国民国家なんてどうなっても構わない」と思っている人たちが、国民国家の政策を決定しているこれはちょっとひどい話でしょう?

さて、タイトルに上げた核廃棄物の問題です。
昨日の「Various Topics」さんでは、その核廃棄物が海に捨てられているというニュースを取り上げています。ドラム缶に入れた核廃棄物をイギリスもベルギーもドイツもアメリカも海に捨てていたことが判っています。「Various Topics」さんの5月1日の記事(http://afternoon-tea-club.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/05/post_aa1f.html)をコピーしてみます(一部省略しています)。

英国、ベルギー、ドイツ、米国も核廃棄物を海に投棄


ロシアの核廃棄物の北極海投棄は良く取り上げられていましたが、なんと同じ穴の狢が続々。
世も末です。


JBpress(2013年5月1日)

世界中で広がる放射性廃棄物の不法投棄

英国、ドイツが大量に海へ、汚染拡大の懸念強まる

By 川口マーン恵美

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37665


 ドイツのテレビチームが無人の潜水艦を使って、イギリス海峡の海底124メートルのところで、核廃棄物の入ったドラム缶の撮影に成功した(ユーチューブ動画:「Tausende Tonnen Atommüll im Ärmelkanal [何千トンもの核廃棄物がイギリス海峡に] 」。


 1950年から63年の間に、イギリスとベルギーは、この海峡にドラム缶2万8500個分の核廃棄物を沈めた。


欧米諸国が沈めた大量の核廃棄物が眠る大西洋や北海


関係者は、これらのドラム缶はとっくの昔に錆びて、放射能物質は大海に流出し、すでに希釈して無害になっていると信じていたらしいが、このたびの撮影で、そうではないことが分かった。


 もちろん、壊れているドラム缶も撮影されているが、原形を保っている物が2個撮影されているのだ。これが、壊れなかった最後の2個というわけではないはずで、少し探せば、おそらく近辺に、核廃棄物入りドラム缶は、まだまだたくさん転がっているのだろう。


国際原子力機関IAEA)の報告によれば、この2万8500個のドラム缶は、1万7244トンの軽度の汚染の核廃棄物とともに、チャンネル諸島オルダニー島の北側の断層部分に沈んでいる。


 このたび、調査チームが計量すると、この海域の放射線量が高かった。


 ドラム缶の廃棄された場所は124メートルと深度が浅いので、これ以上放射能が漏れ出すと、海水が汚染され、困ったことになる。まずいことに、ここは漁業の行われている場所でもある。


  核廃棄物は、どうやら大西洋や北海にもたくさん沈んでいるらしい。やはりIAEAの資料によれば、1949年から82年の間に多くの国が核廃棄物の詰まったドラム缶を海に捨てた。ドイツももちろん捨てている。


中でも海洋投棄の王様は、かつての海軍大国イギリス。大西洋と太平洋に投棄された放射能量の76.6%がイギリスの物であるという。イギリスの次に多いのが海のないスイスで、アメリカの投棄はイギリスの10分の1に過ぎない。


 ただし、アメリカの場合、海に捨てなくても、多くを野ざらしにしているので、感心はできない。

(後略)

◎全文はコチラでどうぞ:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37665
ドイツの大変な現状にも言及されていて、エネルギー問題は人類の課題。ひょっとしてこのままエネルギー消費を拡大し続けて行けば人類は生き延びられないかもしれないと背筋が寒くなってきます。砂漠の国で室温17℃に保つのに原発が必要だとか…24℃にと言ってもダメとか。モチ他人事ではなくて。