夏八木さん追悼とイザべラ・バードの完訳本と「日本遺産」

5月14日(火)の讀賣新聞の夕刊に面白い記事が載っていましたのでメモ代わりに。
●先ず一面トップが「”日本遺産”創設」について、記事の一部から。

「政府は、世界遺産への登録を目指す地域や文化財『日本遺産』とする制度創設の検討に入った。海外での知名度を高め、観光資源として活用する方針で、日本の文化・伝統を国際展開するクール・ジャパン戦略の一環として推進する」。「世界遺産への登録を目指して『暫定リスト』(←現在13件)に掲載されている地域や文化財を対象とし、自然遺産は含まれない予定」「世界遺産に対応する新たな制度として、文化財保護法に基づく『史跡』などとは別の体系とする。」
「登録の審査は、文科省文化審議会が行う方向で検討」「同省では、国が指定する『重要文化財』の英語名称を、現在の「インポータント・カルチュラル・プロパティー」から「カルチュラル・トレジャー」に変更することも検討している。「国宝(ナショナル・トレジャー)」と合わせて「宝(トレジャー)」と位置付けることで、「外国人にも歴史的価値の高いものと印象づけられる」(文化庁幹部)と期待している。」

●●次いで同じく一面囲みの「よみうり寸評」には先ごろ亡くなられた夏八木勲さんについて。デビューのNHK朝の連続テレビドラマの「鳩子の海」(1974年・次年から半年シリーズに)や最後の映画「希望の国」にも触れています。少し端折りながら:

◇11日、73歳で亡くなった俳優・夏八木勲さんは慶大を中退、俳優座養成所に入る。同期に栗原小巻太地喜和子原田芳雄地井武男前田吟林隆三小野武彦……が顔をそろえていた◇のちに<花の15期生>と呼ばれる。まさに<花の>にふさわしい面々だ。うち太地、原田、地井の3氏に続いて夏八木さんが世を去った
NHKの朝ドラ「鳩子の海」で子役の斉藤こず恵と共演した脱走兵役で名を上げた。個性的で幅広い役をこなす名バイプレーヤー。昨秋公開の「希望の国」で久々に主演、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した◇死してなお何本もこれから公開の出演作があるという。生涯現役の役者魂に敬服する。

鳩子の海」の斉藤こずえさんと夏八木さんは鮮烈な印象でした。鳩子は山口県の上関(原発予定地)で育てられたことになっていたのですね。そういえば、”♪にっぽんよ〜、にっぽん、愛する日本・・・・ドドンガ、ドン”という歌?がありました。ところで夏八木さんは、病気のことは伏せておられて、「役作りで痩せている」というのを親しい方たちも信じておられたようです。夫の父が同じすい臓ガンで亡くなって、その最晩年のやせ方が夏八木さんと似ていたので、ひょっとして…と心配していました。遺作の主演映画「希望の国」はDVDを借りてでも是非見たいと思っています。
●●●3つ目はNHKの「にっぽん微笑みの国の物語」(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20120107/1325898577)で大きく取り上げられた明治時代の日本を世界に紹介した女性旅行家イザべラ・バードの完訳本が完成したというニュースです。記事のリード部分と記事の途中までを:(大河ドラマの「八重の桜」の八重さんとも会っている!)

 明治の日本紀行 完全翻訳
金坂・京大名誉教授「探偵のように」作業


19世紀後半、南米、南極を除く全大陸に足跡を残した英国人旅行家、イザべラ・バード旅行記「日本奥地紀行」を、金坂清則・京都大名誉教授(66)(人文地理学)が完訳した。原著を手にバードの旅を辿ったフィールドワークを基に、歴史や地理学の知見を生かし、バードが見た明治期の日本がリアルに描き出されている。(木須井麻子)


 バードは1878年明治11年)5〜12月、日本に滞在し、本州や北海道を旅した。2年後に本国で見聞記2巻を刊行。その後、内容を半分弱にまとめた簡略本1巻が出された。世界的には簡略本が知られているが、金坂さんは最初に世に出た2巻を底本に、4巻に分けて翻訳した。
 昨春から、「横浜―日光―会津―越後」「新潟―山形―秋田―青森」「北海道・アイヌの世界」を相次いで刊行。今年3月の第4巻「東京―関西―伊勢 日本の国政」で完結した。原著の付録や地図も網羅しており、一切省略のない日本語訳は初めてという。
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 第4巻に収録した関西・伊勢方面の旅は、簡略本では削除されていた部分だ。
 神戸港に上陸したバードは、外国人居留地などを巡った際の印象を「晴れているときにはいたるところに光があふれているし、雨天の時でさえも、色調に温かみがある」と記した。
 続いて訪れた京都については、日本の他の都市とは違っているとして、「美と装いと遊興が全てという芸術の本場である」「女性は美しく、<髪形>も帯もうっとりするばかりである」などと表現している。
 この際、バードは同志社女学校(現・同志社女子大学)に滞在。原文では、「女主人」と一緒に名所を回ったと表現されているが、金坂名誉教授の考証の結果、当時、舎監を務めていた新島八重の母、山本佐久を指していることを突き止めた。滞在中、英国帰りの西本願寺の僧侶や、新島襄・八重夫妻を訪問、仏教やキリスト教について問答するなど精力的な姿が印象的だ。 
 奈良では、「自然のみごとな美しさが、宗教建築や古代の哀愁漂う衰微と相まっていや増している」とたたえた。
 さらに、最も好奇心をそそられるものとして正倉院を挙げ、22の宝物を記述。「カール大帝やアルフレッド大王が収集したもののために、私たちは一体何をしただろう」と、宝物が受け継がれてきたことへの感慨をもらしている。
 伊勢神宮については、「イスラム教徒にとってのメッカ、ギリシャ人やラテン民族にとってのエルサレムの聖地のような所」と説明。外宮の正殿など中心部や、内宮の構造について詳細に記録している。
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「完訳 日本奥地紀行」は平凡社東洋文庫。第4巻は3200円(税別)。