<子ども・被災者支援法、「基本方針」で骨抜きに>(そもそも総研)

◎昨日25日、特定秘密保護法を審議している衆議院の特別委員会は、福島市地方公聴会を開き、公述人からは、原発事故の教訓も踏まえ慎重な審議を求める声や法案に反対する意見が出されました。
この中で福島県浪江町馬場有町長は「国の存立に重要な法案だが、範囲が非常に広く明確でない。浪江町民は、政府が避難経路の道筋を明らかにしていれば、低線量の被ばくは避けることができた。秘密でなく情報公開がいちばん大切だ。特定秘密保護法案についてはもう少し慎重に対応し、国民のために論議を尽くすことが大切だ」と述べました(NHK/NEWSWEB)。
この公聴会の意見は今日の国会で取り入れてもらえるのでしょうか?
◎さて、雨の昨日は、先週木曜日の<そもそも福島の支援法が骨抜きになっているのではないか?「子ども・被災者支援法」の問題点/そもそも総研(2013年11月22日)>録画分を見ました。動画でソックリ見ることができます(http://www.at-douga.com/?p=10101)が、メモ代わりに私なりに内容を起こしてみます。
●まず、昨年2012年の2つの法律についておさらい。
1つは、昨年3月に出来たいわゆる「特措法」と呼ばれる、福島県限定で年間20ミリシーベルトを超える地域への支援法。
2つ目は同じく昨年6月に出来た、いわゆる「子ども・被災者支援法」と呼ばれる法律で、事故後1年間を経過し、自主避難した人も留まっている人も等しく対象にしたものとされ、地域については、福島に限定せず、(主に年間20ミリシーベルト以下で)放射線量が「一定の基準以上」の地域とされたが、数値が示されず、そのまま1年以上放置されたままだった。
今年、8月に被災者が国を提訴。この10月、「基本方針」が示された。

子ども・被災者支援法の問題点(岡山に避難した被災者に聞く)

原発事故当時次女の出産を控えた妻と長女の3人で福島市内に司法書士の事務所を経営していた丹治(たんじ)泰弘(36)さんに聞く。現在は岡山市で、妻と長女(6)、次女(2)、長男(7か月)と、5人家族、司法書士として働いて暮らしている。
丹治「2011年の4月に2番目の子が生まれたので、簡単に移動できず1年くらい福島に残ったが、やはり子供を外で遊ばせる環境ではなかった。避難指示区域ではなかったが、自宅付近の放射線量は年間10mSv以上だった。自分なりに放射線について勉強したが、結局低線量の長期的な影響というのは、正確にはおそらく「わからない」というのが私なりに出した結論だった。私の原点は”子供の健康を守る”の一点なんですね。当然「わからない」のであれば、親としてできることをやろうと思いまして、妻とかいろんな人に相談して最終的に移住の結論をだした。」
玉川「被災者支援法には『一定の基準以上』の場所という記述があるんですが、結局それが示されないんですよね。それについてはどう思われますか?」
丹治「条文に書いている以上、そこを決めずに地域だけを決めるというのは一寸問題かなと正直思いますね。」「支援法は、そもそも、地域行政区画ではなくて人に着目してできた法律と言われている。つまり放射性物質は県境なんて関係なく流れますから、どこのエリアなんて決められないと思う。なおかつ条文に書かれているんだけど「科学的影響がはっきりしない」。そうであるなら、『安全か危険か』は個人が決めるしかないだろうと言うことだと思う。それなのに、行政区画でカチッと決めちゃうと、法律の理念から離れちゃうという心配がありますね。」
玉川「最終的に決めるべき基準は何だと思いますか?」
丹治「私は少なくともシーベルトって基準に関しては、年間1ミリシーベルトだと思います。」
玉川「それは何故ですか?」
丹治「それは事故前が公衆被曝限度が1mSvだったから。別に原発事故が起きようと起きまいと人間の身体って変わらないですよね。それで事故が起きてそれが守れなくなったからと言って、数字を上げ下げするのは、スポーツとかゲームをやって、負けたからルールそのものを変えちゃうというような、そうしたことをやっているんじゃないかと私は思っちゃうんですよね。」
スタジオ「非常にわかりやすいですね」
玉川「なんで基準を決めなかったか、中心になって法律を作った民主党の議員に聞きます。」

支援法で放射線量の基準を決めなかったワケは?民主党荒井聰衆院議員に聞く)

荒井「◆税制当局を説得できなかった。1mSvにすると範囲が物凄く広くなる。例えば栃木の一部とか千葉や群馬の一部も入り、被災者の数がぐんと増えて、財政負担が増える」。玉川「お金を出したくなかった?」「そういうことですね」。<事故当時1ミリシーベルト以上(環境省のデータ)の地域⇒>
荒井「◆避難している被災者に対して、政府とか県、町村としても、なるべく戻ってきてほしいという期待がある。この法律が実質的に機能すると戻って来なくなると考えた。支援法では地方に避難している人にも同等に救済するわけだから、福島に戻らなくてもよいと考える、という推測がある。浪江の町長さんは独自の考えを持っておられるが、それ以外の町長さん、県知事さんは、福島から人口が減るということを恐れている。」
玉川「当時の民主党も、福島県の市長村長さんや国会議員の方々の抵抗に負けてしまったということですか、簡単に言うと」荒井「そうですね。私が負けたんですよ。」「そんなに強い抵抗だったんですか?」「選挙区にしている人たちや、町村長さんにとってみたら地域がなくなるということですから。」
スタジオ「優先順位をまちがっていますよね~」


基本方針で「一定の線量」を決めなかった復興庁の見解とは?(佐藤紀明参事官に聞く)

玉川「今回の政府の基本方針では『一定の線量』が示されていませんが?」
佐藤「1とか2という数字、固定の画一的な数字では確かにお示ししていないんですが、幅のある数字と我々は理解しているんですが『相当な線量』として数字を示している。(蛙・「相当な線量」は数字ではなくて言葉ですよね
法律の立法過程で、市町村の途中で線を引いてコミュニティーの分断を招かないようにしてほしい、あるいは総合的に配慮して決めてほしいといったような答弁がございまして、そういうことも考えられるように『相当な線量』ということにいたしました。」
玉川「それは法律の主旨から離れるんじゃないですか? 『一定の基準』と書いてあるんだから示すべきじゃないですか。分断しないためには準支援地域を設けてもいいわけで・・・」 
佐藤「我々としては『相当の線量』という幅を持ったものが『一定の基準』なんだという理解をしておりまして…」
玉川「じゃ、『相当』ってどこからどこまでなの?」佐藤「20mSvは下回るけれども、当時それなりに高い線量地域が連続して広がっていた地域、そこが相当な線量が広がっていたという風に…」(蛙:「なかには連続しているので1mSvやそれ以下もある」というのですから結局ハッキリしているのは20mSv以下ということです

ナレーション:「基本方針」では「準支援対象地域)は定めたものの「支援対象地域」を福島県内33市町村に限定、多くの被災者の期待を裏切るものとなった。

玉川「元々の支援法の主旨というのは、自治体単位ではなく人単位にしましょうということで議員立法されたわけですよ。ところが結局自治体単位になったじゃないですか?」
佐藤「一定の基準以上と地域を限定する以上、どこかに線を引く、中通り浜通りという所で最終的には線を引いて、そこを支援地域にしました。」
玉川「結局、選を引いてるじゃないですか! (復興庁の)みなさんがどう考えるじゃなくて、厳然とある数字を基準として支援を受けられる人を決めましょう。つまり、恣意的な運用が入らないようにしましょう、というのがこの法律の主旨であるわけですよね?」
佐藤「役所が勝手に決めるわけではなくて、いろんな被災者の声ですとかそういうものを聞きながら決めていくことにはしております。」
玉川「今回、支援対象区域を福島県だけに限定しましたよね。ところが、1mSv以上ということであれば福島以外の場所だってありますよね。そうなると財政的に膨らむので敢えて『一定』というものが作られなかったという指摘について、どうですか?」
佐藤「今回の支援対象地域を考えるにあたって、財政的なこと、ここまで広げるとお金がいくらになるからとか、ここまでなら出来るから広げようとかはハッキリ言って考慮しておりません。」
こういうのを東大話法というのでしょうか。聞いていても、書き起こしていても、嫌になります。のらりくらり言質を取られないよう細心の注意を払って言葉は丁寧ですが、言ってることは、冷たいby蛙
最後に玉川さんの結び:「1ミリシーベルトを基準にすれば確かに地域は広がり、お金はかかります。しかし、お金がかかるのを避けたいがためにというのは本末転倒で、やっぱり原発の事故が起きたらお金ってかかるんですよ。こういう方たちにも等しく支援して、これくらいかかるという金額が原発事故のコストなんです。それが払えないなら、ごめんなさい、本当はこれくらいかかるんだけど、ここまでしか払えませんと謝らなければイケナイ、当局が。だから本末転倒、原発のコストを低く見せようとしているんじゃないかと、私なんかは思っちゃう。」