8月のメモ(延長50回!とSTAP細胞)


◎8月最後の31日、前代未聞の延長50回の野球の試合!! 4日がかりで決着でした。
甲子園の高校野球が終わった後ひっそりと?全国高校軟式野球選手権大会が明石市で行われていたのに、俄然注目を浴びた準決勝の試合、最後は5000人の観衆を集めて行われたという延長戦4日目。延長50回(普通の試合の5回分以上!)でやっと点が入り、東海代表・中京(岐阜)が西中国代表・崇徳(そうとく)(広島)に3―0で勝利。その勢いで決勝も初出場の南関東代表・三浦学苑(神奈川)を2―0で破り、2年ぶり7回目の優勝を決めました。
決着がつかなかったら抽選と言われていたので、そうならなくて良かったです。決勝戦は、負けた崇徳の選手も父兄も応援団も中京を応援したとか。点が入らないのは、軟式ボールに原因があるんだとか。バットに当たっても軟らかいのでへちゃげて飛ばないし、飛んでも方向が定まらない?ので野手泣かせ、バントも難しいんだそうです。

◎ところで8月と言えば、大阪では21年ぶりに猛暑日(35℃以上)が1日もない夏でした。大雨、長雨、台風つづき。庭の水やりをしないで済んだ夏。夫にとっては大きな山に行けなかった夏に。
そして、どうしてもメモしておきたいのは、とうとう犠牲者が出たSTAP細胞騒ぎ。小保方さんの問題がマスコミで騒がれた最初のころから、この問題を科学と科学主義、科学者とエセ科学者の問題ととらえてブログを書いておられた山崎行太郎氏の眼力?には驚きました。だいたい山崎氏の読み通りの経過を辿って事件?は推移、そして犠牲者が・・・。もうお一人、武田邦彦氏のブログも、科学の問題と科学とは関係のない取り上げ方(騒ぎ方)に対して丁寧に解説されていました。
笹井氏の自殺があった直後、Sさんとお茶を飲んでいて、Sさんから「昨日、理研のだれか、”もう少し頑張ってほしかった”とか言ってたでしょ。解ってないね〜」「よく言うね〜。死者に鞭打つってこういうこと」「ひとりで頑張って、もう頑張れない・・・っていうのが解ってないよね〜」「小保方さん、死んじゃダメよね!」「頑張って証明してほしい」「証明できなくてもいいのよ、死んじゃダメ」。この夏の私用の備忘録として幾つかコピーして保存しておきます。(長いのでスルーお願いします)

★「哲学者=山崎行太郎のブログ『毒蛇山荘日記』」より:

•2014-07-29
NHKの「NHKスペシャル」は、若山照彦の遺伝子解析の結果の「修正」という重大事実を放送しなかったSTAP細胞事件に関心のある人なら、誰でも知っている重大事実である。NHKは、何事もなかったかのように、若山照彦が、最初の記者会見で主張した「マウスすり替え説」を鵜呑みにし、しかも若山照彦が、遺伝子解析の誤り認め、再度の精密な遺伝子解析が必要、と軌道修正したにもかかわらず、その軌道修正という重大事実を無視したまま、放送した。明らかに欠陥商品の偽装販売である。NHKは、佐村河内とかいうニセ作曲家のエセ宣伝番組を、堂々と放送したテレビ局である。「佐村河内はベートーヴェンレベルの天才作曲家である」とNHKが推奨したのである。忘れたのか?ところで、今度は、小保方博士が、佐村河内並の詐欺師だと言いたいために、見え見えの嘘情報を流し続け、嘘に嘘を重ねている。小保方博士を、佐村河内並の「天才的詐欺師」として断罪したいのか?詐欺師はNHKそのものではないのか?


•2014-07-28
NHKは、何故、NHK記者=カメラマンによる暴力取材事件を報道しないのか?他のテレビ局では報道したではないか?それとも、NHKは、小保方博士を、「犯罪者」だとして認定し、小保方博士相手には何をやってもいいと判断しているのか?昨日(7/27)、途中からだが、NHKの「報道スペシャル」(小保方博士批判番組)を見て、テレビ局、テレビ芸人(エセ科学者たち)たちのレベルの低さ、思想性の欠如、エセ権威主義に愕然とした。NHKもここまで落ちたか?と。

•2014-07-27
NHKの暴力取材の基ずく「報道スペシャル」を、即刻、放送中止しろ !!! NHKは、本日放送予定の「NHK報道スペシャル」の取材過程で、小保方晴子博士を、ホテルのトイレまで、追いかけ回し、障害事件まで起こしている。小保方博士側に謝罪までしているらしいが、それほどの報道犯罪を犯しながら、放送を強行しようとしているらしい。見上げたものである。小保方博士側弁護士は、NHKの記者やカメラマンを、即時、 告訴せよ!!!それにしても、NHKの「報道スペシャル」は、「小保方博士=捏造犯」を前提に取材していたことが分かる。本日の放送予定の内容も、「小保方博士=捏造犯」を前提にしたものだろう。何処に証拠があるのか?NHK報道を決して許してはならない。

★同じく山崎氏8月19日のブログ(http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20140819)から:

どちらが科学的か?シカゴ大医学部教授=中村雄輔の「STAP細胞騒動論」を読む。中村教授は、STAP細胞問題を「スキャンダル報道」の材料にしたマスコミや、それに協力したエセ科学者たちの言動を、激しく批判しているが・・・。NHK毎日新聞を筆頭とするマスコミの「小保方晴子博士バッシング報道」を擁護する片瀬久美子や大隅典子、森岡正博らと、マスコミの「バッシング報道」批判する中村教授と、どちらが「科学的」か?」という前書きで紹介されている記事:

中村祐輔シカゴ大学医学部教授ブログ
http://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2014/08/06/105539


(続)STAP細胞の悲劇;愚かなメディアと研究者集団

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ネットニュースに流れる「ノーベル賞候補だ」「山中先生に劣らない」という文言を目にして憤りが増してきた。一人の研究者が自分の命を犠牲にしなければ、再評価されないのだろうか。一つの汚点が、その個人の長年にわたる業績が帳消しにしてしまうのか?


「笹井先生が追い詰められていたようだ」とよく他人事のように記事にできるものだ。誰が追い詰めていたのか?これでもか、これでもかと、痛めつけていたのは誰なのだ!! 長時間、さらし者のようにされれば、追い詰められて当たり前だ。今さら、美辞麗句を並べて、亡くなった人間が生き返るのか!


それにしても、この問題が「なんとかスペシャル」で特集を組むような問題なのだろうか。笹井先生ほどの研究者なら、再現性のない論文を報告すれば、後にそれによって失うものが如何に大きいかくらい十分に認識できるはずだ。自分が積み上げてきたものを、すべて失うリスクを冒してまで、詐欺のような行為をするはずがない。そこから考えれば、誰が問題の元凶なのか、議論する必要がないほど明白ではないのか。



最初に派手に花火を打ち上げすぎたことやデータを確認していなかった管理責任を問われても致し方ない。それが、命をもって償わないといけないほど大きな過失なのか。だれが考えても最大の責任の所在が明らかな事柄なのに、いつまでも処分を打ち出せずに、精神的に苦しめ続けた理化学研究所の執行部の責任は免れない。


また、「日本の科学の信頼性を揺るがす大問題だ」と大騒ぎをした研究者集団があったが、ここまでくると、結果的に魔女狩りのような行動だと非難されても反論の余地はない。これまで日本の科学の発展に貢献してきた研究者を死に追いつめたことは、科学の問題を超え、日本人そのものの品性を問われることにならないのか? 過ぎたるは及ばずで、「魔女狩り」的行為が有能な研究者を自殺に追い詰めることに加担したことが、日本という国の誇りをもっと大きく傷つけたという事実は消せない


何か事があるたびに、集中砲火を浴びせるように個人攻撃が続き、その人間が命を絶つときれいごとを並べて、何事もなかったかのように終わらせるメディア。自分たちの不健全な姿を振り返ることは永遠にないのか! 国営放送よ、この事態を検証するスペシャル番組を作成すべきではないのか!?

武田邦彦氏のブログからはコチラ:「STAPの悲劇を作った人たち(3) 2番目は学問より政治が好きな学者たち」(http://takedanet.com/2014/08/stap_83cc.html
STAP細胞の問題で耳障りな言葉は論文不正事件と呼ばれることです。単純ミスなのにどうして「不正事件」と呼ばれるのか・・・このあたり、マスコミの怖さというか暴力的な臭いは、ブーニン亡命の時の新聞・週刊誌・評論家・ファン挙って「甘い」とか「マザコン」というレッテル貼り攻撃の時、民主党小沢一郎氏の事件の時と同じ臭いです。マスコミにとって都合の悪い事実は伏せてでもフィクションの方が流布される・・・こういう暴力に、個人が立ち向かわなければならない。

STAPの悲劇を作った人たち(3) 2番目は学問より政治が好きな学者たち


先回の記事にまとめたように、理研の調査報告書ほど奇妙なものはありませんでしたが、1)論文は複数の著者で書いていて、故笹井さんが中心になって執筆したとされているのに小保方さんだけを研究不正の調査対象にしたこと(筆頭著者が責任

を持つというのは特定の学会の掟に過ぎない)、2)不正とされた写真2枚はすでに調査委員会が調査を始める前に自主的に小保方さんから提出されているのに其れに触れずに不正としたこと、3)写真を正しいものに入れ替えても論文の結論や成立性は変わらないこと、4)理研の規則には「悪意のないときには不正にはならない」と定めているのに「悪意がなくても悪意とする」としたこと、などが特に奇妙でした。

そして、調査結果に対して不服があれば再調査するとしておきながら、再調査はしないとしたり、調査委員長がSTAP論文と同じミスをしていたのに辞任だけで研究不正とはしなかったことなど、実に不誠実な経過をたどったのです。


しかし、その後の展開もさらに奇妙なものになったのです。2014年5月にSTAP事件に関する理研の最終報告書がでると、メディアは「論文の不正が確定した」と報道し、さらに論文が取り下げられると「これですべてゼロになった」としたのです。つまりメディアと理研で、研究者を不正として非難を展開し、論文を取り下げざるを得ないようにし、2014年7月2日にSTAP事件は、論文が取り下げられたことによって、
1)不正が確定し、
2)もともと何もなかったことになった。
のです。しかし、その後、さらに社会は奇妙な方向に進みます。それは
3)STAP細胞の再現性が得られれば良い、
4)STAP論文にさらに別の不正がある、
と言い始めたのです。この奇妙な仕掛けをした人はまだ特定できませんが、もともとこの事件はSTAP論文にあり、その論文が取り下げられたことで「ゼロになった」としたのですから、STAP細胞があるかどうか、つまり研究が成功したかどうかも問題ではありません。



(もちろん、「再現実験」などは科学的にあまり意味のないことで、価値のある研究ほど論文の再現性には時間がかかりますし、再現性があるかどうかは科学的価値とは無関係です。)


ですから、日本社会が正常なら、STAP研究は社会の目から遠く離れて、また2013年までのように「理研内で静かに研究ができる」という環境に戻ったのです。今頃、笹井さんも小保方さんも通常の生活に帰り、理研かあるいは別の場所で研究を続けていたでしょう。


小保方さんは研究は順調で、論文にケアレスミスはあったけれど、ウソやダマシはないと言っていましたし、笹井さんも記者会見や取材で「自分のチェックが甘く論文に欠陥があったことは責任があるが、研究は順調だ。論文に示された4本のビデオからも研究が有望であることがわかる」ということを言っておられました。


ところが、この経過の中で再び火の手が上がったのです。それが、若山さん、メディアの登場していた研究不正に関する専門家と言われる人たち、そして分子生物学会を中心とする学者や日本学術会議でした。私はメディアに登場する専門家の方の論文を調べてみましたが、暗闇の中で苦しく創造的な研究の経験のある人はおられませんでした。


その中で、若山さんは何が目的であったかはっきりしませんが、共同研究者でなければわからないような日常的で小さなことを何回かにわたってメディアに暴露を繰り返しました。特に「マウスが違っていた」とか、「小保方さんがポケットにマウスを入れて研究室に入ることができる」など、研究内容より人格攻撃と思われることを言われたのにはびっくりしました。


私は研究者が身内をかばう方が良いと言っているのではなく、犯罪も被害者もなく、論文も取り下げたのですから、研究の内部の人だけが知っている細かいことを言う必要がないのです。特にマウスの問題は若山さんのほうが間違っていました



次に、研究不正の専門家ですが、理研内部の人、東大東工大グループと称する匿名の人、京都大学の人、それに医学部出身者を中心にして、きわめて厳しいコメントが続きました。すでに理研の調査が終わり、「不正が確定した」とし(わたしはそう思わないが)、論文が取り下げられ、もしくは取り下げの手続きが進んでいるのですから、その論文の欠陥をさらに追及したところでまったく意味がありません。


また、論文を執筆したのは最初は小保方さんと錯覚されていましたが、すでに3月ごろには笹井さんが中心になって書き直したことがわかっていましたし、若山さんの力では論文が通らないので、笹井さんの知識をもって論文をまとめたこともわかっていたのです。研究不正の専門家は研究不正という点では知識があると思いますが、研究そのものについてははるかに笹井さんのほうが力があると考えられますから、普通の学者なら「私より力のある人が書いたものだから」と遠慮するのが普通です。


それに加えて分子生物学会が学会としての声明を出しました。3月11日の理事長声明をはじめとして、7月4日の第3次声明が続き、論文が撤回された後も、「不正の追及」をするように理研に求めました。この声明に答えて、学会幹部も声明を出しました。たとえば大阪大学教授が理事長声明を支持することを社会に向かって表明し、「STAP論文はネッシーだ」という趣旨の発言もあったと伝えられています。


学問というのは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というような不合理を排するものですし、STAP論文で指摘されているのは(ネットの匿名を除いて)、「写真2枚のミスと1枚の加工」だけであり、「その裏に理研の腐敗体質がある」かどうかは不明なのです。理事長声明はSTAP論文に関する研究に大きな不正があったとして、理研にその返答を求めていますが、学会が伝聞によってある特定の研究者や研究機関を批判するのは、好ましくないことです。



学会は学問的に間違っていることを明らかにすることはその役目の一つですが、組織の運営や研究者個人の人生にも活動を及ぼすものではありません。普通なら笹井さん、若山さん、小保方さんの発表を聞きに行って、自分が疑問に思うことを質問するとか、学会単位なら、研究者を丁寧に研究会にお呼びして、ご足労をお詫びし、疑問点を質問するということをします。


このような活動は「学者は学問的なことに興味がある人」だからで、「運営、管理、虚偽などには興味がなく、また自分の研究時間を犠牲にしてそんなものに関係する時間も惜しい」のが普通です。


私は、ネットの人、理研内部の人、研究不正の専門家という人たち、それに分子生物学会の学者の方は学問には興味がなく、管理運営などにご興味があるということなら、学会から去っていただき、別の仕事をされたらよいと思うのです。学問は比較的簡単で、人を批判しなくても自分でよい仕事をすれば、みんなは評価してくれるからです。


「学者なのにいやに政治家のようだな。自然より人間に興味があるのかな?」というのが私の感想です。この人たちがSTAPの悲劇に加担することになりました。

平成26年8月10日)

NHKの番組「NHKスペシャル」は夫と一緒に私も見ました。丁度若山氏がマウスの件で、小保方氏が若山氏経由以外のマウスを使っていたようなことを若山氏自身が言ったのに、それは間違い(ウソ?)だったということが新聞にも書かれていたので、NHKの番組がこの事実を取り入れて放送しているのか注目していましたが、触れず。ということはNHKのこの番組は事実に基づく番組ではなく、二人して”なぁ〜〜んだ”と呆れてしまったものです。笹井氏の不幸はそのあとの8月5日のことでした。
★コチラの記事も山崎行太郎氏のブログに紹介されていたもので、NHKの番組の徹底検証です。引用元は「Business Journal」:http://biz-journal.jp/i/2014/08/post_5714_entry.html

NHK、STAP問題検証番組で小保方氏捏造説を“捏造”か 崩れた論拠で構成、法令違反も
(文=大宅健一郎/ジャーナリスト)


<4月9日、会見を行う小保方晴子氏(撮影=吉田尚弘)* 写真省略>


 8月5日、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター副センター長の笹井芳樹氏が自殺した。

 STAP騒動で追い込まれた結果の悲劇だ。しかし、これは単なる悲劇ではない。デマと妄想で膨れ上がった“狂気のバッシング”によって“殺された”といっていい。8月12日に笹井氏の代理人が公表した遺書にも「マスコミなどからの不当なバッシング、理研やラボ(研究室)への責任から疲れ切ってしまった」と書かれていた。

 筆者はいわゆるSTAP問題(本記事では科学的な検証をSTAP問題、それをめぐる一連の世間的な騒動をSTAP騒動と分けて表現する)を取材してきたが、およそ科学とは程遠いゴシップ報道とヒステリックな科学者の反応が時を追うごとに大きくなり、理研小保方晴子ユニットリーダーと笹井氏を包囲し、追い込んでいく様子を目の当たりにしてきた。

 小保方氏の代理人である三木秀夫弁護士が「集団リンチ」と形容したが、「集団リンチ」に加わったのはマスコミだけでなく、本来、科学の自律性を守るべき立場の科学者やサイエンス・ライター、一般人までがその輪に加わり、バッシングを執拗に続けた。理研も小保方氏と笹井氏を守るには十分な対応もせず、小保方氏はNHKの暴力的取材で怪我を負い、その直後に笹井氏は自殺を遂げた。

 笹井氏の死後も、小保方氏に宛てた遺書に何が書かれていたか、というゴシップ報道が相変わらず続いている。警察が保管してあったはずの遺書がマスコミにリークされ、日を追ってその内容が少しずつ開示されているというこの異常な状態が、STAP騒動の狂気を物語っている。

 STAP現象が完全な捏造だという確たる証拠はいまだにない。一部報道によって小保方氏による捏造と信じている人も多いが、7月27日に放送されたテレビ番組、NHKスペシャル『調査報告 STAP細胞 不正の深層』では、信じがたいミスリードが行われていた。なんと小保方氏が若山照彦山梨大学教授の研究室にあったES細胞を盗み、それを混入させた細胞を実験に使っていたかのような内容だったのだ。本番組には騒動の本質が詰まっているので、ここで番組の内容を検証してみたい。


 

●異様な番組内容


 まず指摘したいのが、この番組の最後にあるべきクレジット(制作に関わった人物名)が一切出なかった、という点だ。NHKスペシャルでは毎回クレジットが流れるのだが、この放送回だけは流れなかった。匿名によるバッシングが公共放送で行われるという、異様さがさらに際立った結果となった。 

 また、番組タイトルで「不正」という文言が使用されていたが、一般社会で使用される「不正」には、自らの利益を優先した悪意ある行為、という意合いがある。しかし、サイエンスの世界での「不正」とは、作法に間違いがあった、手続きにミスがあった、という意味でも使用される。</span>

 科学論文の世界では「不正」すなわち「ミス」が見つかることは少なくなく、「不正」の指摘があれば「正し」、さらに検証を受ける、という“手続き”の連続である。それが科学における検証のあるべき姿だ。その結果、再現性がなければ消えていく。科学は、そのような仮説と検証のせめぎ合いで発展してきた
  
 むろん、今回のSTAP論文に画像の「不正」があったことは小保方氏も笹井氏も認めており、科学の手続きに則りネイチャーの論文も取り下げた。しかも「不正」と認定されたのは「画像の加工」であり、捏造を行ったという事実はどこにもない。現在、理研では論文を再検証するために再現実験が行われており、ルールに則ったプロセスにある。これまでも多くの学者の「不正」が指摘されているが、マスコミで大きく取り上げられることなく、ほとんど知られることもなかった


 しかし同番組では、一般的な「不正」の意味、つまり「自らの利益を優先した悪意ある行為」という意味を含めており、番組構成も科学的検証とは程遠い、事件の犯人を追うような構成となっていた。これまで質の高い科学番組を制作していたNHKスペシャルとは思えないずさんな内容であった。その結果、小保方氏の「ES細胞窃盗および捏造説」を視聴者に印象づけた事実は大きい。

 番組の冒頭部分で、このような場面があった。理化学研究所の発生・再生科学総合研究センターの見取り図がCGで現れ、小保方氏が実験していた場所へと画面が展開していく。その時のナレーションを、そのまま以下に掲載する。

「2人が共同で研究を進めたのは、C棟4階にあった若山研究室。

小保方氏がいつもいたのは、壁で仕切られた小部屋。

奥まった場所だった。

ここで、一人、作業をしていたという。

どんな実験をしていたのか…」

 低音で静かな女性のナレーション、建物の奥の小部屋へとCG展開される構成は、さながら事件発生現場の再現を彷彿とさせた。



 心理学のテクニックには、相手に意図したイメージを想起させる方法がある。この場面では、多くの視聴者の頭に、「小保方氏は、完全に死角になる場所で、誰にも知られることのない何かをしていた」というイメージを想起させたはずだ。小保方氏の研究場所を示すことに、何の意味があるのだろうか。

 この段階で同番組は、すでに科学的検証番組ではないことがおわかりだろう。なんらかの意図を持って、この番組は構成されていたとみてよい。


●法令違反の疑い


 さらに次の場面で、驚くべきものが映し出される。NHKが独自に入手したという小保方氏の実験ノートのコピーである。視聴者には受けたかもしれないが、これは明らかな秘密保持に対する法令違反である理研の職員は準公務員であり罰則規定のある法律を順守しなくてはならない。参考までに、独立行政法人理化学研究所法の第十四条、第二十三条を記載しておく。

・第十四条  研究所の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。その職を退いた後も、同様とする。

・第二十三条  第十四条の規定に違反して秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。


 さらに番組では、笹井氏と小保方氏が交わしたという私的なメールの文面まで公開され、しかも声優によるアフレコまで付けていた。笹井氏の時候の挨拶と小保方氏を励ます内容を読み上げる男性声優。小保方氏の返信メールを元気よく読み上げる女性声優。これが「検証」となんの関係があるのだろうか。

 私信であるメールを、声優の演出付きで明らかにした意図はなんだったのか。この場面が流れた瞬間のインターネット上のツイートを観察したが、多くの視聴者が、笹井氏と小保方氏は“ただならぬ関係”だったと推測していたことがわかった。言うまでもないが、私信の公開は法令違反である。調査資料として秘匿すべき責務を負っている調査委員会からリークされたのは間違いない。罰則規定のある法令違反を犯しても、STAP論文の「不正」をゴシップ的に報道する理由はなんなのか? 



 ここで、NHKスペシャルの決定的な「誤り」を取り上げる。小保方氏による「ES細胞窃盗および捏造説」へとミスリードした内容である。

 番組では、論文執筆者の一人である若山氏が登場する。論文関係者では唯一インタビューに応じていた。そして、若山氏の3カ月に及ぶSTAP細胞検証実験の様子が映し出され、タイミングの良いことに、カメラは「STAP幹細胞が若山氏の渡したマウス由来でない証拠」が見つかった瞬間を捉えていた。

 さらに番組では、小保方氏の研究室の冷凍庫から容器が見つかった、と写真付きで解説し(この写真も内部からのリークである)、若山氏のもとにいた留学生の“証言”も放送された。留学生はES細胞を若山氏の研究室で作製し、若山研究室が理研から山梨大学に移った際に持っていったはずだと言い、次のように証言した。

「びっくりした。小保方氏に渡したことはない」

 そして、ナレーションは次のように結んだ。

「なぜ、このES細胞が、小保方氏が使う冷凍庫から見つかったのか。私たちは小保方氏に、こうした疑問に答えてほしいと考えている」

 NHKはこの質問の答えを求めて、ホテルで小保方氏をトイレまで追い詰めるという取材を行い、全治2週間の怪我を負わせた。


●論拠を失った「ES細胞混入説」に基づき番組構成


 ここから同番組の決定的な「誤り」の部分だ。放送された7月27日に先立つ22日、若山教授がこれまで主張してきた「STAP幹細胞は若山研究室にないマウスに由来している」という解析結果が間違いだったと発表した(23日付朝日新聞記事『STAP細胞解析結果は誤り 若山氏、会見内容を訂正』より)

 22日の時点で、解析結果が間違っており、STAP幹細胞が若山研究所のマウスに由来する可能性、つまり、小保方氏がES細胞を混入したことを“否定”する可能性を示していたのにもかかわらず、同番組は「ES細胞混入説」で押し通したのだ。ちなみに22日の時点で番組の編集が終わっていた、という理屈は通じない。なぜなら、小保方氏がNHKの執拗な取材で怪我を負ったのが23日だからだ。

 NHKは、なぜ直前に論拠を失った「ES細胞混入説」に基づき、番組を構成したのか。科学的な検証を行うならば、必ず指摘しなくてはならない矛盾だったはずである。しかも、小保方氏が「あるはずのないES細胞」を冷蔵庫に保管していた、という報道まで行って視聴者を捏造説へとミスリードした責任は大きい。

 最後に、笹井氏について述べておきたい。笹井氏の死後、「ネイチャー」や「TIME」など、海外の有力紙がこぞって「現代科学の偉人」の早すぎる死を悼んだ。世界中の科学者が、その死を悲しんでいる。STAP問題も、本来なら科学の通常のルール通り「不正」を正して、改めて「検証」を淡々と進めればよかったことなのに、メディアや世間からのバッシングにより人格さえ否定され、自殺に追い込まれていったのだ。 



 笹井氏は「不正」発覚後の4月の会見でも、STAP細胞の存在を信じていた。STAP細胞から生まれたキメラマウスにおいて、STAP細胞胎盤にまで分化していたことは、ES細胞でも実現できないことだと当初から発言していた。笹井氏は再三「STAP現象を前提にしないと容易に説明できないデータがある」と語っていたのだ。 

 ノーベル賞を獲ってもおかしくない世界トップの科学者が述べていることに重みがあると考えるのが当然だと思うが、笹井氏は「嘘をついている」という前提が、いつの間にか出来上がっていた

 そしてそのバッシングの矛先が今、小保方氏一人に向いている。私たちは冷静な目でSTAP問題の検証を見守ることが大事なのではないだろうか。欲望や嫉妬、個人的感情により正気を忘れた狂乱騒動で真実を見る目が曇れば、日本における「科学」は崩壊し、科学者も育たなくなるだろう。

(文=大宅健一郎/ジャーナリスト)