映画「バンクーバーの朝日」を見て


「行くぞ!」という夫の掛け声で、今日は午後1時15分からの映画にでかけました。
帰りにパソコンを修理に持ち込むため車です。妻夫木聡主演でカナダの日系移民の野球の話ということしか知らないで観ました。80人ほどの映画館がほぼ満員でした。
映画は実話でした。丁度今朝コーヒータイム直前、カナダのSさんから電話があったところでした。25日に出した年賀状を入れた封筒が今朝着いたということでした。今まで暖かかったのに、今日はマイナス15度とか。彼女は今カナダのトロントで年金暮らしですが、美大を卒業してすぐカナダに行ったという最初の街はバンクーバーでした。
そのバンクーバーの日本人移民たちの子供世代が厳しい労働を終えた後、「朝日」という野球チームを作ってカナダのチーム相手に野球をするお話です。引っ込み思案で何かと言えば「ソーリー」と謝ってばかりの青年の家族がメインでチームメートたちの生活ぶりが描かれますが、セリフは必要最小限。克明に再現された1930年代末から、日本が真珠湾攻撃を仕掛けて戦争に突入する直前の頃のバンクーバーの港町と製材工場と日本人街と野球場が主役です。
身体の大きな白人相手の野球はバットに当たってもボールが飛ばず、編み出す戦法がバント。大柄な白人選手がきりきり舞いさせられて、ヒットなしで試合に勝つことも。このバントと盗塁の戦法を現地の新聞が”頭脳野球”と名付け、面白い試合だと評判になります。青年の父親を佐藤浩一。なかなか白人社会に溶け込めない父親世代と英語を話しつつ現地の仕事を得て働く青年世代。このあたりも家族の愛憎劇を通して描かれています。
そして、日中戦争から、日米開戦。隣国カナダも敵性外国人として日本人を強制収容所に送り込みます。朝日のチームも解体、戦後2度と再結成されることが無かったのに、61年後の2003年・・・・という最後のお話が紹介されます。
実話だということ、カナダの移民も強制収容所送りになったという事実、知らなかった・・・と思いました。
本国が戦争すると、海外に暮らしている日本人は、白人たちの差別の中、苦労してきたことがすべて水の泡になるということなんですね。
戦争だけはしてはダメ、というのはこういうことでもあるんだと思いました。
ところで、バンクーバーの朝日を見て、昨日のブログで書き足りないことが思い浮かんできました。
1日、4人で見たタモリさんの戦後70年を振り返る番組、最後は伊集院静氏の3・11を忘れてはいけない、忘れることはできないという文章で締めくくられました。堺雅人さんが言っていた、戦後のすべては戦争から始まった、戦争の反省から平和を求める戦後が始まったという言葉を重ね合わせると、3・11は太平洋戦争以後の「二度目の敗戦」として新たな戦後を始めるきっかけであるはずでした。
それなのに、そのことを忘れている人が増えた。忘れさせようという力も働いている。戦争は敗戦の日を境に戦前、戦後と明確に線引きができるけれど、3・11の大震災と3・12の原発事故は境界線のない敗戦がいつまでも続くという点で皆が意識できるかどうかという難しさがあります。だから、忘れさせようという人たちも出てくるのしょう。しかし、忘れ去られる犠牲者からすれば、こんなに残酷なことはないと思います。日本の中にあって置き去りにされて無視されていく・・・・こんなことをしてはいけない。忘れてはいけないし、忘れることはできないのです、は正しいと思います。