先月末のこと、君が代不起立の元教諭が勝訴というニュースをテレビでチラッと見ました。「勝った!」ということで、「良かった!」と思ったのですが、それ以上騒がれず? 内田樹氏が16年前(1999年)の「国旗国歌について」を再掲して応じておられたのを、あぁ、あの記事で私は内田先生を偉いな〜と思ったんだ・・・と、ブログを始めて「内田樹の研究室」を知り、先生の過去の記事を遡って読む中でこの記事を見つけた時のことを思い出したりしていました。
参照:「内田樹の研究室」
*5月28日「国旗国歌について」(http://blog.tatsuru.com/2015/05/28_1617.php)
*4月28日「国旗・国歌に関する国立大学への要請に反対する声明」(http://blog.tatsuru.com/2015/04/28_1921.php)
◎まず、勝訴の記事をヤフーニュース(http://news.yahoo.co.jp/pickup/6161617)から:
2015年5月28日(木) 21時22分掲載 .
君が代不起立で都に賠償命令=停職処分は違法、元教諭ら勝訴―東京高裁
卒業式などの君が代斉唱で不起立を繰り返し、停職処分を受けた元都立学校教諭ら2人が、都に処分取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。須藤典明裁判長は、1人の訴えのみ認めた一審東京地裁判決を取り消し、2人に対する処分を違法と認定、都に計20万円の損害賠償も支払うよう命じた。(時事通信)
教育長「今後も厳正に対処」
君が代不起立で懲戒処分 高裁が取り消す判決
一方、東京都の中井敬三教育長は「誠に遺憾だ。教職員の職務命令違反に対しては、今後も厳正に対処していく」とするコメントを出しました。NHK(2015年5月28日)
君が代不起立、元教員が逆転勝訴 停職処分取り消す
須藤典明裁判長は「積極的に式を妨害しておらず、前回の停職3カ月を超える処分は重すぎる」と判断。北海道新聞(2015年5月28日)
再雇用拒否は違法との判決も
君が代を歌わないだけで「再雇用拒否」は違法ーー東京地裁が東京都に「賠償命令」判決
弁護士ドットコム(2015年5月25日)
◎ところが、つい先日、「週刊金曜日ニュース」(6/5)の記事で「根津公子さん勝訴を無視した三大紙」というタイトルが目に入りました。読み進んでみると、君が代勝訴の件です。そうか〜、新聞では何故か取り上げられなかったのか…と初めて気が付きました。署名入りの記事の一部です:
東京都の教育政策は異様としかいいようがありません。法廷闘争も後を絶ちません。しかも、国政に目を転じれば、安倍政権は国立大学に対しても「日の丸・君が代」を押し付けようとしています。自民党の憲法草案では「国旗・国歌の尊重」の名のもとに、「日の丸・君が代」の強制がうたわれています。そうした状況における勝訴なのです。大きな報道価値があります。
しかし、『朝日』『毎日』の紙面には記事がありませんでした(『朝日』は東京北部の地方版のみに掲載)。もちろん『読売』はスルーです。『産経』は〈君が代不起立、「処分重過ぎ」逆転勝訴〉の見出しで200字弱の短信を載せています。当事者が会見しているのですから、各社の司法担当記者は記事にしているはずです。『朝日』『毎日』とも上司の判断でボツになったのでしょう。それにしても、現場から「これは大事なニュース」と突き上げがあればボツはありえないですから、担当記者の報道センスも疑わざるをえません。
そもそも全国紙は、石原都政に対して厳しい姿勢を見せてきませんでした。「日の丸・君が代」強制に関してもそうです。もし「10.23通達」以降、徹底的に批判キャンペーンを展開していれば、都の教育行政を変えることができたかもしれませんし、安倍政権による国家主義的教育戦略の歯止めにつながった可能性もあります。今回の報道をみると、全国紙もまた反省が足りないようです。(北村肇、6月5日配信「きんようメルマガ」)
○(引用元の記事全文はコチラ:http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5229)
◎そこで、勝訴のニュースを探してみました。レイバーネットが写真も付けてたっぷり記事にしています。これは、知っておいて良い大きなニュースだと思います。レイバーネット日本(http://www.labornetjp.org/news/2015/0528nezu)の5月28日の記事「 画期的判決!勝ったぞ!〜東京高裁(須藤典明裁判長)が根津さん「停職処分」取り消し 」を写真部分縮小してコピーします:
画期的判決!勝ったぞ!〜東京高裁(須藤典明裁判長)が根津さん「停職処分」取り消し
5月28日、東京高裁は、根津公子さんに対する2007年3月30日に出された卒業式における「君が代不起立」停職6か月処分について、地裁判決を覆し処分取り消しの判決を出した。また根津公子、河原井純子さんに対する損害賠償についても地裁判決を覆し、10万円の賠償を都教委に課す判決を出した。
判決が言い渡される824号法廷に参集した弁護士、控訴人(根津さん、河原井さん)そして傍聴者42名のほとんどが、根津さんの処分が覆るとは思っていなかったのではないか。裁判が始まる数分前まで「また控訴棄却。判決いいわたしは30秒ぐらいかな」「都教委はすでに判決を知っているのではないか。だって石津弁護士も来ていないし、来ているのは見慣れない若い女性が一人だけだ。判決文だけもらいに来たのだろう。都教委はこの裁判を馬鹿にしているのか」など、そこかしこから悲観的で、悔しさのにじむ声が聞こえていた。
2時30分、左右陪審を従えた須藤典明裁判長が入廷してきた。また「棄却」と言い、そそくさと退散するのだろうとだれもが思った。しかし須藤裁判長はゆっくりと着席し、傍聴席を見まわし、おもむろに「主文読み上げ、判決要旨を述べます。静かに最後までしっかり聞くように」と述べたのだ。「え!どういうこと?」。勝訴するなど思いもよらないと、その時も信じて疑わない傍聴席は、不思議な雰囲気に包まれた。裁判長「主文、控訴人らの控訴に基づき、原判決中、控訴人らの敗訴部分を取り消す。根津さんに対する懲戒処分を取り消す」。「根津さん勝ったの。本当」まだ疑心暗鬼。法廷内も、なんとなくもやもや。
裁判長が判決要旨を読み上げる。そして10数分要旨に解説を入れながら読み上げる。まだ事態を飲み込めない傍聴席は裁判長の説明に食い入るように聞き入っている。私もしかりで、根津さん、河原井さん、そして弁護士の様子をうかがうも喜びの表情はなく、途中「棄却、・・・棄却・・・・棄却」と裁判長が述べるのを聞き、もしかして根津さんらの控訴が棄却されたのではと不安になる。
「根津は停職3ヶ月処分を受けたのち、『停職出勤』と称して鶴川2中、や立川2中などに赴き、『処分は不当』などとプラカードを掲げた。しかしこの行為が具体的に学校運営に妨害を与えた事実はない。また勤務を外されているのであるから、勤務の妨害などは当てはまらない。6ヶ月処分は均衡を逸した加重処分と言わざるを得ない。また停職期間の上限は6月とされており、残されているのは免職だけであり、多大な圧力を根津にかけることになる。以上述べてきたようにこの処分は、処分に値する十分な根拠もなく、裁量権の合理的な範囲を逸脱している。この処分は不当である」
「国旗・国歌法制化の国会審議で、内閣総理大臣、文部大臣が『学校における国旗・国歌の強制は、憲法が保障している思想・信条を侵害してはならない。処分は機械的、一律的にしてはならない』と答弁しているのを都教委は熟知していたにもかかわらず、国歌斉唱時に起立しなかった教職員に、職務命令違反として、1回目は戒告、2回目は給与1月の月額10分の1カット、3回目は6月の月額10分の1カット、4回目は停職1月、5回目は停職3月、6回目は停職6月の各処分を機械的に運用してきた。これは国会答弁に違反し、なおかつ被処分者は最終的に職を失う。憲法に保障されている思想・信条を侵害することになり、控訴人に多大な精神的圧力、損害を与えたことになる。東京都は損害賠償10万円を支払うのが妥当である。」傍聴席から「勝訴したんだ!」「やったー!」と拍手が起きたのであった。
急遽行われた記者会見では、いつにもまして大手報道記者(NHK、読売、朝日、共同などほか)が集まり充実した報告がなされた。すでに共同通信、朝日新聞、NHKテレビ、東京新聞、地方新聞などがこの判決について報道していることは周知のことと思う。
最後に判決直後の根津さん、河原井さんの喜びの声を載せておく。根津さん「本当にうれしい。こんなことが起こるとは夢にも思わなかった。長い間闘ってきてよかった。この判決は今も不起立を続ける田中聡史さんや他の教員に対して、背中を押すのは確実だと思う。都教委はその人たちを懲戒免職にはできない。みなさんありがとう。」
河原井さん「本当に良かった。この裁判で都教委は根津さんと河原井を分断し運動を衰退させることを目論んでいたと思うが、その目論みを打ち破ったことがとっても嬉しい。しかし職務命令は合法とされた。そして減給処分前の戒告処分は合法とされた。これを打ち破らないと真の勝利とは言えない。しかし一歩一歩前進していると思う。今日、もしかしたらと思い“逆転勝訴”の垂れ幕を書いてきた。この垂れ幕を裁判所前で誇らかに掲げることができて満足です。」勝利判決後、裁判所門前で、河原井さん手製“逆転勝訴”の垂れ幕が、岩井信弁護士によって掲げられた。
また「河原井、根津らの『君が代』解雇をさせない会」からサプライズで、根津さん、河原井さんに祝福と今後も抵抗を続けてくれることを願い、白バラが贈られた事を報告しておく。(解雇させない会・佐藤茂美)
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★いまこそ観たいドキュメンタリー・DVD『君が代不起立』
この問題をもっと知りたい方へ。根津さん・河原井さんの「君が代」問題を描いたドキュメンタリーがあります。ビデオプレスの『君が代不起立』(2006年)は、2003年から行われた「君が代強制」に抵抗した東京の教員たちが主人公です。根津さんには「停職」という過酷な処分が行われましたが、負けることなく、毎日「停職出勤」でたたかいました。ぜひDVDでご覧ください。詳細はこちら:http://vpress.la.coocan.jp/kimi.html
◎10年ほど前、地域のボランティアで、小中学校の入学式や卒業式に来賓として参加したことがありました。国旗国歌の時、歌は口元チェックをすれば別ですが、歌っているかどうかは分かりません。一方、不起立は目立つというより、その付近の者にはわかります。
ある年、来賓席の私の前の椅子の方が不起立だったことがありました。これは、相当の覚悟と勇気が無ければできないことです。私は、君が代を歌わない理由、日の丸で立たない理由については一応理解できます。それに、数年前、NHK大阪の不起立不斉唱を貫いてる方のドキュメンタリー番組で、国旗国歌と反戦・不戦が一体となった強烈な思いを知って、これは認めないとイケナイ、他人がとやかく言える問題ではない、思想信条の自由とはこういうことを言うのだと思いました。
ああいう式典で、自分の思想信条を貫く人の勇気、またそれを許す自由な日本の社会のあり方。大人も子供も、こういう事実から学んだり教えたり出来ることがたくさんあると思いました。強制して北朝鮮(戦前の日本)みたいになりたいとは思いませんね。
◎メモ代わりに、過去のブログ「2004年、秋の園遊会でのこと・・・(国旗国歌について)」(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20090924/1253768102)から、2004年10月28日の赤坂御所の園遊会で、当時東京都の教育長だった米長邦雄永世棋聖と天皇陛下の間で交わされた国旗国歌について、鳥越俊太郎さんのダイジェストで:
先ず天皇陛下がずらりと並んだ園遊会への招待者に一人づつ言葉を掛けて行くシーンでの出来事だ。
天皇さんが米長さんの前に立った時、 米長邦雄さんがこう言った。
「日本中の学校で国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」
天皇陛下の口から出て来た言葉は、これは米長さんどころか周りにいた人々を、 特に記者たちをぎょぎょっとさせるものでした。
天皇さんはこう言ったのだ。 「やはり、強制になるということではないことが望ましいですね」
東京都教委は昨年秋都立校の式典での「日の丸・君が代」の取り扱いを細かに規定し、 職務命令に従わない教職員を大量に処分した。
つまり天皇の意思に反し「強制的に」従わせたんですね。そして米長さんは教育委員として、 こうした方針を推進する発言を繰り返して来たんだそうだ。この時の米長さんの困惑ぶりが目に見えるようだ。 米長さんは天皇に向かってこう答えたんだそうだ。
「もう、もちろん、そう、本当に素晴らしいお言葉をいただき、ありがとうございます」
引用元:http://www.1101.com/torigoe/2004-10-30.html