「2015年安全保障関連法案の全体像」(藤木邦顕氏)

◎昨日は先日もみじ便りで案内のあった憲法についての講演会のある日です。
それに先立って、最近のトラックバック欄に昨年の7月の蛙ブログの記事を見つけました。一体どんな記事だったっけ?とその記事を私も読んでみました。記事のタイトルは「解釈改憲は2012年の第3次アーミテージレポートの要望]で昨年7月16日の記事です。読み直してみると、ここ最近国会で取り上げられている安保法制への野党の質問とそれに対する政府の回答をめぐるやり取りの大元がここにあるという流れが見えてきます。
昨年7月1日に政府は『閣議決定』で集団的自衛権行使容認を決めてしまいました。そのことについてのブログでした:(引用元:http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140716/1405464620

自民党の歴代政権が堅持してきた集団的自衛権行使は憲法がそれを禁止しているとの解釈を、安倍政権が強引に変更した背景には、17年ぶりに改訂される日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)に集団的自衛権の行使を反映させることがアメリカからの至上命令であり、それを実行することが安倍政権に課された最大の課題となっているからである。


これは、既に2012年の「第3次アーミテージレポート」から要望されている事でもあった。


アーミテージレポートでは、「3つの危機から成る3.11とトモダチ作戦は、米国と日本の軍事展開に興味深い皮肉を提示した」とあり、あれは災害を利用した軍事リハーサルだったことがわかります。レポートの主語は「米国の軍艦」で、北海道の陸上自衛隊を東北に移動させて、災害救助と支援活動を行い、仙台に飛行場を設ける作業をした。トモダチ作戦では(原発事故の犠牲者を出したものの:by蛙)憲法9条との解釈や、(ソマリア沖)エデン湾やインド洋での海賊行為撲滅の任務に参加するため法的問題を再解釈しているが、「しかし皮肉なことに、日本の利害の保護を必要とする最も深刻な条件の下で、我々の軍隊は日本の集団的防衛を法的に禁じられている。(レポート)

◎米軍と共同軍事行動をとるために、憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を認めるか、あるいは、平和憲法そのものを「改正」するか、日本に迫っているのはアメリカです。それは米軍の利益であり、アメリカの国益だというアメリカの論理です。日本には日本の考えがあり、日本の憲法があります。米軍の事情に自国の憲法を踏みにじってまで合わせる必要はありません。米軍・米国の利益がそのまま日本の利益であるというのは日米一体化そのもので、普通の国家ではありえません。安倍政権は、2012年のアーミテージレポートを忠実に実現し、軍事的な日米一体化を実現しようとする政権です。
●さて、昨夜7時からの「みのお9条の会」の勉強会。講師は弁護士の藤木邦顕氏。200円払って、レジュメと昨年7月1日付の国家安全保障会議閣議の決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」のコピーを頂きました。会場は4階の会議室。一杯の人でした。1時間半。詳しい説明がありました。
レジュメのタイトルは「2015年安全保障関連法案の全体像」で、弁護士の藤木邦顕氏の解説。
1)経過。14年7月1日『閣議決定』、その後動きがなかったのは解散・総選挙があったため。(この法案の国会での審議が選挙に不利に働くという判断があったってことですね)
今年に入って、3月20日、自公合意。4月27日法案概要についても自公合意。4月28日阿部総理訪米・ワシントンにて日米ガイドライン最終合意(・米議会で安倍首相演説)。5月14日、新法1、法改正10、閣議決定2を決定し、国会上程(89頁に及ぶ提案)。6月24日通常国会会期最終日(70日延長か?)


2)安全保障関連法案の概括的特徴
(1)武力攻撃に至らない侵害について自衛隊の武器使用の範囲を拡大
  自衛隊法95条を変えて(「自衛隊」⇒)「米軍」等武器の防護に武器使用可。米軍に対する弾薬・情報の提供可。在外邦人保護のための武器使用可。(過去、これを口実に来中国やシベリヤへ出兵した)。 
(2)周辺事態から重要影響自体へ(拡大)/span>  「我が国の周辺における地域」を削除=地理的条件(極東)をはずし重要影響事態となれば中東でもアフリカでもアメリカの要請があれば)どこでも行ける、また船舶検査活動というのは『臨検』のことであり戦闘行為=戦争になる。「現に戦闘行為が行われている現場」では実施しない。原則事前承認=いざとなれば事後OK。

(3)自衛隊海外派遣について活動範囲を拡大
  これはPKOに関するもので、今までのイラクアフガニスタンでは個別の特措法で時限立法だったが、いつでも対応できる恒久法にする。国連決議・関連決議があること。
憲法9条1項 国際紛争を解決する手段としての武力の行使、武力による威嚇を禁止:だから「武力行使と一体化しない範囲」で活動する=地理的には「非戦闘地域内」で、内容的には「武器・弾薬・武装兵員」を除く補給・輸送。だが、「イラク自衛隊派遣訴訟 名古屋高裁判決」では、航空自衛隊が米軍兵員を輸送し、バクダッド空港に離着陸していた。これはイラク特措法に違反。
しかし、今回の法案では「非戦闘地域」⇒「現に戦闘行為が行われている現場」に変更。これは、どんな危険な地域でも、発進準備中の米軍機への給油もOKとなり、名古屋高裁判決は二度と出ない事態になる。


(4)他国の紛争に自衛隊が参戦

 いままでPKO活動は人道支援だったが、これからは紛争にも対応して、「安全確保業務」=住民保護、また、今までは自衛隊の正当防衛の際の武器使用だったのが、「駆けつけ警護」=他国のPKO部隊の警護だけでなく「司令部業務」「統治機構の設立再建援助」となると、新政府応援・再建=他国の紛争に積極的に介入する=政府転覆を助けることになり住民からは侵略と取られることもある。また、国際連携平和安全活動には、「国連決議」から始まって、最後には「当該地域の属する国の要請に基づき」まであり、これはイラク新政権でもOKとなる。その内容は、武力紛争の再発防止、新政府の政権援助、検問、完治駐留、厚生事務の指導助言、教育訓練まであり、一体どういう事態を想像しているのか、イラク? こんなことまで自衛隊に期待されている? 
●「武力攻撃事態対処方から事態対処方へ」のところは、「存立危機事態」についてです。
存立危機事態」とは? 自衛隊法3条から侵略という言葉を削除し、侵略が無くても必要なら(安倍さんが?)自衛隊を出すということです。自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務と死、必要に応じ、公共の秩序の維持にあたるものとする。」
存立危機事態」は自衛隊法76条で定義:「我が国と密接な関係になる他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の声明、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を追加
 では、「存立危機事態」になると、どうなるか? 「自衛隊が防衛出動、米軍行動措置支援、特別部隊の編成、予備自衛官の召集、海上輸送規制、いわゆる国民保護法制の発動、自治体・民間の協力」=第二次大戦下の日本と同じ言論統制や弾圧、マスコミ挙ってのプロパガンダが行われ、学校では自衛隊の皆様へ頑張ってくださいと手紙を書かされたり。戦時下になるだろう。

<まとめ>憲法9条1項「国際紛争(海外)での武力行使は禁止」されている。憲法に反する法律は作ってはイケナイ。憲法審査会での3人の学者の「違憲」発言以来、やっと自民党内でも、このまま突っ走っていいのかという意見が出てきた。保守層にも訴えて憲法9条を70年守って来たことを誇りに、自衛隊が海外で戦争する法案を葬り去りたい。*******************


◎「みのお9条の会」の方の発言から:今まで街頭で署名活動をしていても、冷たかった。「中国や北朝鮮を見ろ!」とか「非国民」といわれることもあった。ところが、あの憲法学者違憲発言があってから、署名に立つと、”温かいまなざし”を感じる。3人で駆け寄ってきて署名させてほしいといわれたり、特に中年の女性が署名に応じている。変わったと実感している。
質問のところで、ガイドラインとの関係を説明してほしいという発言と、砂川判決を安倍さんが持ち出しているがあれは?というのがありました。持ち出すこと自体見当違いというお話でした。ガイドラインについては解説の中でも触れておられ、アメリカの国防総省国務省のジャパン・ハンドラーたちが中国と対決して軍事的貢献をと日本に迫っている、TPP含めて、というお話。砂川判決については、また機会を改めて・・・
藤木氏が解説を終えて最後のところで:フィリピンやベトナムの弁護士と話していると、中国の圧力を感じてはいるが、北朝鮮は6か国協議で圧力をかけて、我々は武力行使をしないという前提で東南アジア諸国との連携を深めて解決したいと言っている。日本だけ、アメリカの政策に乗っかっていていいのか?、真の集団的安全保障という外交が今こそ必要なのではないかと思う。本来日本は有利な立場、位置にあるのに、わざと怒らせて、軍事的危機を煽ったり、本当に戦争になって自衛隊員が一人でも犠牲になれば日本はまとまると思ってるんではないか…と危なさを感じる。
◎「アーミテージレポート」が頭に入っていたので、紛らわしい法律の文言が何のためなのかが良くわかりました。憲法改正をしてからでは間に合わないし、反対されたのでは困る。ここは、無理矢理にでも現憲法の解釈変更でやってしまえ、という乱暴で姑息なやり方が透けて見えます。四苦八苦してでも何とかアメリカの要望に応えたい、そのためには策を弄して法律の文言を切った貼ったに解釈拡大、アメリカの要望とあらば、いつでもどこでも自衛隊を海外へ出します、出せます、そういう事に致します、ということです。愛国ならぬ売国とはこのことか・・・です。
◎5月25日に続いて脱戦争ポスター展(http://renounce-war.org/)から:


kurumi

この人たちに戦争をさせる。そんなことをわずか19人の安倍内閣が勝手に決めることは許されません。