「武器ではなく 命の水を〜医師・中村哲とアフガニスタン〜」(Eテレ)

10日(土)の夜11時から放送があったEテレの番組、夜更かしが続いていた私は、録画して翌日11日に見ました。ペシャワール会の会報で毎回写真も掲載して報告されているので知らないわけではないのですが、18年間の活動の記録をまとめて映像で見るとまた感慨ひとしおでした。そして、内容が明らかに、9・11を意識したもので、アメリカが憎しみを駆り立てて力による報復を進め、世界がそれに同調する中(残念なことに日本まで)、一人の日本人医師が白衣を脱ぎ棄て医者や薬よりも水と思い立って、用水路の建設に乗り出します。
中村哲さんは、昨年箕面でも講演会があり中村氏をこの目でも見たのですが、小柄な方なのに、とても大きな見通しと深い洞察力をもった人だと思いました。番組の最後、中村氏は、自分たちのやっていることは平和運動ではない。医療の延長であって、命をつなぐ活動が結果として平和でなければならないということに繋がっているだけと仰っていました。これこそが、「平和学」のガルトゥング博士が唱えた”積極的平和主義”ではないかとも思いました。
川端柳(かわばたやなぎ)の美しさ。柳が蛇籠(じゃかご)の石の間に根を下ろし堤の補強になる。景観の美しさは用水路の維持と補強の理屈にかなっているんですね。
◆在米映画監督の想田和弘氏のツィートから:

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda · 5時間5時間前


911から15年が経ちました。僕も当時ニューヨークにいたので本当に怖い思いをしましたが、改めて思うのは、怖いからといって米国がアフガンやイラクに攻め入ったことは、致命的な過ちだったということですあれはソリューションではなく単なるリアクションでした。


実際、世界は平和に近づくどころか、ますます暴力的になりつつあります。完全な失敗であったことを、みんな認めるべきですでは何がソリューションであり得るのかといえば、きっと中村哲医師のような活動が挙げられるのでは。それは一見回り道のように見えて、最も近道のような気がしています。

◆再放送のお知らせです(写真は想田氏のツィート欄からお借りしました)(あとの2枚は番組を私のカメラで)

NHKEテレ1
9月17日(土曜) 午前0時00分〜 午前1時00分
「武器ではなく 命の水を〜医師・中村哲アフガニスタン〜」


アメリ同時多発テロから15年。今も戦乱の続くアフガニスタンで干ばつと闘う日本人がいる。医師・中村哲(69)。「武器や戦車では解決しない。農業復活こそがアフガン復興の礎だ」。中村は白衣を脱ぎ、用水路の建設に乗り出した。15年たったいま、干ばつの大地には緑がよみがえり、人々の平穏な営みが再び始まろうとしている。戦乱の地アフガニスタンに必要な支援とは何か。15年にわたる中村の不屈の歩みを通して考える。

◆この番組を見て、18年間、カメラを回して中村哲氏の活動を記録していた人がいるんだということにも感心しました。プロデューサーでカメラマンの谷津賢二氏の記事です。(引用元:http://d.hatena.ne.jp/shuuei/20160910/1473453092

【番組の見どころは?】

長い戦乱状態にあるアフガニスタンで、戦火以上に人々を苦しめているのが「干ばつ」です。いまでも国民の3分の1の760万人が食料不足に苦しんでいると言われています。医師・中村哲さんは用水路を建設し、乾いた大地を農地に復活させようと奮闘しています。数々の苦難を乗り越え用水路に水が流れ始めると、奇跡のような光景が現れます。乾いた大地が広大な農地へと蘇り、人々の穏やかな暮らしが戻り始めます。武器や鉄砲でな無く水が取り戻した平和を見ていただければと思います。


【この番組を企画したきっかけは?】

私が初めて中村哲医師の取材をしたのが1998年、以来18年間、断続的に現地取材を続けてきました。干ばつの酷さ、用水路建設の困難、甦る緑の大地などを記録し続けてきました。911から15年目の今年、悲劇の記録ではなく希望の映像記録を残したいと思い企画をしました。


【心に残ったもの、あるいは心に残るものは?】
用水路建設は中村医師一人の力で行ったものではなく、アフガン農民の力がなければ出来ませんでした。彼らは用水路の建設を自分たちの村を再生させる活動だと信じ、雨の日も酷暑の日も中村医師と共に水路を掘り続けました。その姿には同じ人間として共感、尊敬できるものでした。巷間言われる怖いアフガン人のイメージは微塵もありません。


【見てくださる方に一言】
泥沼化するアフガン問題に対処するために国際社会は軍隊の派遣や様々な支援を行ってきました。しかし、アフガン和平はいまだ実現していません。そんな中、中村医師の用水路の水が小さな地域ですが、穏やかな暮らしを取り戻しました。戦乱と干ばつの地に真の平和をもたらす物は何なのか、静かに問いかける15年の記録をご覧ください。

日本電波ニュース社 プロデューサー&カメラマン 谷津賢二)

◆もっと詳しい谷津氏情報は:

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda · 15時間15時間前

谷津さんのETV特集「武器ではなく 命の水を〜医師・中村哲アフガニスタン〜」がNHKで放映され、大きな反響を呼んでいるようですので以前メルマガに書いた文章をFBに再投稿しましたhttps://www.facebook.com/kazuhiro.soda.9/posts/10153767091902201