NHKスペシャル「それでも、生きようとした」

内田樹氏のリツィートで知ったのですが、想田氏が毎日新聞の記事を紹介しています。汚染土の黒い袋がズラリと並んでいる写真が不気味ですが・・・・

想田和弘 ‏@KazuhiroSoda 1月9日
環境を守るのが仕事であるはずの環境省が、環境汚染をゴリ押ししようとしているという最低な事態。→(毎日新聞: -http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170109-00000007-mai-sctch)

<規制庁>汚染土再利用、諮問認めず「環境省、説明不十分」


 
東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土を再利用する環境省の方針に対し、管理方法の説明が不十分などとして原子力規制庁が疑義を呈していることが分かった。再利用に伴う被ばく線量については本来、規制庁が所管する放射線審議会に諮られるが、同審議会への諮問も認めていない。規制庁は環境省の外局で、再利用は「身内」から疑問視されている。【日野行介】

◎この汚染土の入った真っ黒なフレコンバッグの集積。これが人の生きる意欲をそいでしまうことがあります。成人の日に見たNHKスペシャルからです。

福島で放射能汚染のため、外見上無傷の立派な家屋敷と田畑をおいて避難しなければならなかった方が、東京でも同じように三世代同居で暮らしていました。いつかは戻ってまたコメを作れると希望をつないで。ところが除染事業は進まず、若い者は仕事を求めて地方へ去っていきました。孫も生活があるからと東京を離れることに。
一人になった89歳のその人は、2015年の11月、一時帰宅で故郷の南相馬市小高(おだか)へ帰ってみました。家のすぐ前にこの汚染廃棄物の黒い袋が並んでいるのを見ました。その時同行した友人が語ります「これを見たらもうここでは農業はできないと落胆したんだろう」。翌朝もその人は黒い袋をずっと見続けていたそうです。それから、東京へ帰って……亡くなりました。5日後のことです。震災後ずっと書き続けられた手帳の最後には「新相馬節」の一節が記してありました。『はるか彼方は相馬の空か / 相馬恋しやアーなつかしや』。

◎研究者の先生のお話では、<あいまいな喪失>と<コミュニティーの分断>の2つが原発事故後4年目にしての自殺者急増の原因だということです。
上の方の例では、家は残っているので”希望”、帰ることができるという希望はあるが、その希望を持ち続けなければならない、けじめがつけられないという困難がある。そして、3年以上たつと境遇の違いからそれぞれの進路がバラバラになり地域や家族からも孤立する。


◎もう一組の相馬市川内村の30代の夫婦は、2012年、避難解除後すぐ家に戻って、結婚もして張り切って農業を始めました。でも周辺の山からの汚染が雨とともに流れ込んで来ます。汚染物質を吸着する作業に精を出しながら最初は小規模に米を試し作りします。このころはボランティアの支援も受けて、品評会でも一位のコメができました。翌年、規模を大きくしてコメを生産、放射能汚染も不検出でした。ところが、コメの値段は以前の3分の2、確実に赤字。売れ行きもままならず。2014年5月、たまたまNHKがこの一家を取材、収録していました。母親と35歳の兄と34歳の彼、そして33歳の妻。インタビューには「原発事故前の生活を続けるだけです、米を作って、畑をして、山へ行って、バーベキューをして、以前と同じように暮らしていきます」と答えて二人はうなずいていました。農業だけで食べていけるようになるまでと採石場でも働いていました。
この一年後の2015年の4月のある日、彼と妻は母と兄を誘って、母が行きたいと言っていた青森の弘前へ一人で運転して一泊2日の旅行に出かけます。桜を見る母の笑顔に息子が「幸せだな」と小さく言ったのを、母親は覚えているそうです。福島までまた一人で運転して帰った一週間後、若い夫婦二人は車で集落を抜け山に入って命を絶ちます。「もうすぐ田植えを始める肌寒い春」だったそうです。
◎つらくて悲しい番組でした。原発事故とはこういうことになるんだと思いました。
☆番組ホームページ(http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170109)より:

シリーズ東日本大震災
それでも、生きようとした 〜原発事故から5年・福島からの報告〜
2017年1月9日(月)
午後10時00分〜10時49分


去年、世界的な医学誌に、日本の医師がまとめたあるデータが掲載された。年齢構成などをならし他県と比較した福島県の自殺率が震災4年後から上昇しているというものだ。現場からもそれを裏付ける現象が報告されている。福島で心の問題を受けつける電話相談には1日平均150本の相談電話が寄せられ、その数は全国と比較すると3倍以上。相談内容は年を追うごとに緊急性の高いものが増え、一件当たりの相談時間も長くなっている。


今になって増加の傾向を見せる福島の自殺。背景の一つとして指摘されるのが、時間を経るごとに複雑化する原発事故被災者を取り巻く環境だ。また、個々の境遇にも違いが現れ、かつて親しかった親族や知人との間に分断が生まれ孤立感が深まっているという指摘もある。番組では、死を防ごうと福島で奔走する医師やNPOの取り組みを中心に、震災から5年半が過ぎた今、被災者の心に何が起きているのかを考えてゆく。

(消えたかと思っていたウインタークレマチス、緑色の葉が出てきて蕾も。その蕾が年を越して開いてきました)