◎先週の土曜日のTBS報道特集は、18日の衆院法務委員会の混乱の中の共謀罪強行採決を受けて「共謀罪 議論は尽くされたのか」でした。共謀罪(テロ等準備罪)は、麻薬取引や詐欺など277の犯罪を対象に犯罪の計画段階で処罰されるという法案。採決後、「審議は尽くされたとお考えですか?」という取り囲みの記者の質問に金田法相は、「それは委員長の判断。コメントを差し控えたい」とだけ。
その日、国会前に集まった抗議の人々の中に高山佳奈子京大教授の姿も。番組のインタビューに答えて「ここにいる私たちはみんな一般人じゃないんです」「法案のどこを見ても、一般人と組織的犯罪のメンバーがあらかじめ区分けされるような定義は書いていない」「一般の団体として始まったものであっても、一部の集団が性格を一変させて犯罪的になったという疑いをかけられれば、それで摘発の対象になるということ」
◎この共謀罪について、国連の報告者から”人権侵害の懸念がある”との書簡について、22日、定例の記者会見で質問を受けた菅官房長官は、「国連の立場を反映するものではない」として、得意のきめ台詞を今回も「不当に制約する恣意的運用がなされるということは全く当たらない」、そのうえ「抗議した」とのこと。つい最近、二階さんが国連について「多額のお金を出している日本を軽視している」と発言しているのを知って、何のこと?かと思ったら、従軍慰安婦問題(日韓合意見直し勧告)について日本の立場を理解してもらえていないということらしいです。安倍政権になってからの歴史修正主義的な主張に対して、世界ではどういう評価をうけているのか、今の政権は全く考えが及ばないようです。共謀罪についても、国連から何を心配されているのかが解っていない。
◎保坂氏がこの番組でも言っていますが、昭和史を今ほど勉強することが必要なことはないと思います。残念なことに今の政府は、日本が敗戦によって得た民主主義的な要素をことごとく敵視して、歴史を逆行させようとしています。勉強が必要なのは、逆行することで基本的人権や自由を奪われる私たち国民。大垣市の例では、共謀罪がない今でも、警察は密かに政府の進める原発再稼働に反対する人たちの思想や行動をチェックして、親切にも企業にその情報を提供しています。これは驚き!でした。それでは、勉強です。
◎書き起こし始め***********************
<<GPS捜査裁判で見えてきたもの>>◇共謀罪の法案は「捜査機関の監視にお墨付きを与える」という理由から反対の声を上げている弁護士がいる。
弁護士の亀石倫子氏、警察がGPS捜査を次々と行っていたことに今年3月大法廷が「令状なしのGPS捜査を違法」とした判断を初めて勝ち取った。
しかし、そのGPS捜査について、与党と日本維新の会は先週、法案の修正協議で一方的に法案に「GPS捜査の立法措置を検討する」という付則を書き込んだ。この狙いについて亀石弁護士は「これは共謀罪において監視を行うことをはっきり認めたようなもの」
◇「GPS捜査の裁判から見えてきたもの」は何なのか。
亀石弁護士が示したのは、警察が被告人の車に密かに取り付けたGPS装置を利用し取得した位置情報の記録だ。
亀石弁護士「例えば、取得した日時、緯度と経度で位置情報がピンポイントで分かるるんですけど…」「多い時で1分ごとに被告人の位置情報を取得し、リアルタイムで監視していた様子がわかる。さらに警察は被告人だけでなく、交際相手の車にもGPSをつけ数日間にわたって行動を把握していた。
亀石「位置情報を見せたことがあるんですね。そしたら、顔色が変わっていましたね。ある時間帯にどこに居たかがこれで分かるわけなんですが、このことは「絶対に知られたくない」とその方が言ったんですね。監視されるということは、そういうことだと私は思ったんです。別に犯罪していたり後ろめたいことをしているわけではないけど、いつどこに居たか知られたくない。それは人にとってすごく大事なこと。」
亀石「「今後、スマートホンなど通信技術の革新が進み捜査機関にとって監視しやすい環境が整っていく。私たちが想定できないような新たな監視の手法も使われていくと思う。
それを任意(捜査)でできるという風に(国会で)言っている。それは、3月の大法廷(最高裁)の判決を無視していると思うし、GPS捜査がそうだったように、すべてが知らない間に知らないような監視手法で市民の生活が監視されるということを意味している。」
そして、「現在法案に賛成の立場の人も、決してひとごとではない」と指摘する。「時代が変われば自分が少数派になる可能性もあるし、自分が排除される側になるかもしれない。そういう危機感は今はないのかもしれないですね。」
<<一般市民への監視の実態>>
◇一般市民への監視が現実のものに問題化しているケースがある。水の都と言われる岐阜県大垣市、先月、テロ等準備罪に反対する会合が開かれた。この場に警察から不当に監視されたとして現在裁判で争っている人たちがいた。
[原告・松島勢至さん「なんで僕らが大垣の平和を崩すのかね、そのあたりのことをはっきりと警察から聞きたいと思う」
原告・三輪唯夫さん「民主主義の基本であります言論の自由をいかに守っていくかの闘いであります」
◇監視を行っていたのは岐阜県警大垣署の警備課、いわゆる公安部門だ。大垣警察署は計画段階の風力発電について反対運動が起きるとみて情報を収集。その情報をもとに事業者である中部電力の子会社「シーテック」と何度も話し合いを持っていたのだ。
「シーテック」が作成した警察との議事録がある。日付は4年前、2013年の8月。この10日前に行われた風力発電の勉強会について警察はこう記載している。
議事録にある警察の発言:「勉強会の主催者の三輪氏や松嶋氏が風力発電に拘らず”自然に手を入れる行為”自体に反対する人物であることをご存知か。」
◇代理人を務める山田弁護士は、この警察の発言からある事実がわかると。
山田弁護士「風力発電に拘らず『自然に手を入れる行為に反対』と警察はなぜ知っているのでしょうか?」「勉強会を始めたから警察が目をつけたわけではない、犯罪の嫌疑があったから、この事件が起きたのではないのです。犯罪とは関わり合いなく情報収集・情報交換が行われています」
◇同じ日の議事録には、警察のこんな発言がある。
「大垣市内に自然破壊につながることには敏感に反対する『近藤ゆりこ氏』という人物がいるがご存知か。60歳を過ぎているが、東大を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、厄介になると思われる」
◇近藤さんは、当時、風力発電の計画すら知らなかった。だが収集された個人情報が本人の知らないところでやり取りされていたのだ。
3年前の5月の議事録にある警察の発言は:「今後過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えるれる。身に危険を感じた場合はすぐに110番してください」
原告・近藤ゆり子さん「収集した情報をある意味では加工して1つのストーリーにして、こんな形で使うんだということに関して、なんていうか、公安って、こうやるのね、情報操作するのねということは、すごく感じましたね」
◇大垣駅前で開かれた共謀罪の反対集会、近藤さんの隣に立つ船田伸子さんについても警察は密かに「シーテック」と個人情報をやり取りしていた。「三輪唯夫は『船田伸子』と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことも懸念している」「現在、船田伸子は気を病んでおり、入院中であるので、速、次の行動に移りにくいと考える」
この警察の情報がすべて誤りだという。船田さんも風力発電の計画を知らなかった。
船田さんは、街頭で訴えます「決して特別な人だけが監視の対象になるわけではありません。私を含めて少しだけ何か世の中がおかしいなと声を出しただけで監視の対象になる」
◇裁判で警察側は情報収集や提供についての認否を拒否している。船田さんは監視の対象になったのは、以前、原発の再稼働に反対するデモを企画したからかもしれないと考えている。
船田「裁判をおこしても警察は何も言ってこない。公共の安全を守る治安を維持する警察の義務の一環なんだと言われたら市民は本当に何も言えないでしょう。何か言ったらそうなると決まってるんだから、本当に物言えぬ社会になっていくと思います」
<<監視と抑圧の歴史が問うもの>>
かつて治安維持の名のもとに国民が厳しく監視され人権が抑圧されていた時代があった。そこに戻る危険性はないのかと懸念する人たちもいる。
今月16日の衆院法務委員会での海渡雄一弁護士の意見陳述「政府は『乱用の恐れはない』と言っているが、実は治安維持法のときもそういっていた。しかし、それが10〜20年たつうちに、とんでもない法律になっていった」
◇1925年(大正14年)に制定された治安維持法、この法律の下で、どのような監視が行われていたか。社会運動を研究してきた渡部富哉氏は戦前に日本の警察が作った捜査資料を入手した。アメリカの議会図書館に保管されていたものだ。
◇これは、1933年(昭和8年)労働組合の摘発状況をまとめた内務省の資料だ。
摘発された小学校の教員の数などが一覧になっている。
「小学児童又ハ地方青年ニ対シ共産思想ヲ注入シ、イヨイヨ深刻化スル傾向アル」
その3年後の資料には「選挙運動状況 警視庁」の文字。
1936年(昭和11年)特高警察が帝国議会選挙を監視していたときのもので、候補者の演説内容がそのまま書き取られている。
ノンフィクション作家の保坂正康氏は、治安維持法などの戦前史を研究した立場からこの資料「各派における代表的人物ならびに警察取り締まり上注意を要すると認められるものの演説速記」を見て:
「本質的には日本の取り締まり当局が膨大な予算と膨大な人員を割いて一人一人の思想調査・動向調査をやるわけですね。それで一定の社会の枠組みから出さないようにするのが『一般人』ですね」
◇治安維持法は2度の改正を経て捜査機関の裁量が拡大。国の政策に異を唱えようとする一般市民は厳しい弾圧を受けた。
保坂氏は共謀罪が国会で審議されている今だからこそ治安維持法があった時代を振り返る必要があると指摘する。
保坂「昭和の歴史の勉強が今ほど必要な時はないと思うんですよ。怖い、怖くないと自覚できること自体が平和であり、まともということですね」
金平キャスター「金田法務大臣が、『あぁ、これは一般の人には全く関係ありません』と言ってますが…」
保坂「政府の言うことを聞いて何の体制(?)的なことも考えずに日常を一生懸命働いて、そして政府の言いなりになっている人が『一般人』だということになりませんか?想像力も日常の批判の目も、現実に対する意識も全部捨てなさいと、それが『一般人』じゃないですか? ということじゃないですか?
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膳場「今の保坂さんの言葉、想像力も日常の批判の目も捨てて、というのは非常に重たい言葉でしたね。将来国家が要請する枠の中でしかものを考えない、想像しない、発言もしない、ということに繋がってしまうのではないかと思わされましたね。
金平「警視庁の捜査資料が段ボール4箱分なんですけど、とても全部読み切れなかったんですが、その中から一寸ですがご紹介したいんですが。
これ、その文章なんですが、特高警察が作ったものでチャートですよね。これ、見るとビックリするんですが、労働運動の取り締まりの資料ですが、ここにコミンテルンという国際共産党があり、下のここに日本共産党っていうのがありますね。この下にですね、日本の労働組合の一覧がダァーとぶら下がる形で書いてある。つまりこういう位置関係っていうのを当時の特高警察は見てたんだな〜というので、とっても恐ろしくなりました。
もう一個ですね、市民社会にどれだけその対象が及んでいたか。これ鳥取県の特高警察ですが、これを見るとレコード、柳家三亀松さんのレコードが取り締まりの対象になってます。本当に保坂さんが言うように歴史から学ぶべきだと思いますね。
日下部「今後、安倍総理のサミットの出席に合わせて23日に衆院本会議で可決され参議院に送られる見通しです。その後も、採決ありきで日程が組まれている。我々の生活に密接に関係ある重要法案にもかかわらず、こんな非常に奇怪と言いますか…」(書き起こし:終わり)
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◎番組の最初は18日、共謀罪が強行採決された時間に国会前の共謀罪反対の集会とデモを取材している金平氏から始まっていました。その後夕闇の集会の中で高山佳奈子教授が発言している映像が。
高山氏の冒頭の「一般人じゃないんです」という言葉、初めは分からなかったのですが、この番組を見終わって、保坂氏の最後の言葉と併せて考えてみると、解りました。
まさに、あの場にいる人たちは一般人ではありません。そして、ブログを書いている私も・・・「政府の言うことを聞いて一生懸命働いて、想像力も日常の批判の目も、現実に対する意識も全部捨て、政府の言いなりになってる人が『一般人』じゃありませんか」。普通に考えたり、発言したりする自由が奪われる危険な法律は廃案です。
ところで、政府は国際組織犯罪防止条約(TOC条約=パレルモ条約)」締結のために共謀罪が必要と主張しています。「今年4月現在187か国・地域が条約を締結し、国連加盟国で未締結は日本を含め11か国のみ」です。日経昨日夕刊の「ニュースぷらす」という特別頁では、<「共謀罪」何が問題?対象が不明確 法律乱用も懸念>として問題点を特集しています。
そこにも、「締結する際の条件の一つが、共謀罪又は参加罪の導入です。参加罪はマフィアなど犯罪組織の活動に参加すると処罰されます。日本では憲法で結社の自由が保障されているなど参加罪の創設は難しいということで、共謀罪の導入を目指しています」と。
ところが、報道ステーション(5/16)では、「共謀罪がなければ条約を締結できないのか?」という質問に、TOC=パレルモ条約を作ったというノースイースタン大学のパッサス教授が「条約に入るための条件を満たしているか審査する機関はない」「それぞれの国が条件を満たしていなくても各国が批准することは可能です」と答えています。オリンピックに間に合わないというのなら、国会では、共謀罪を作らなくても早くTOC条約を批准をするよう政府に迫ればいいのではないのか?と思います。とにかく、市民生活に多大の影響を与えるこの共謀罪は廃案にして、もし本当にテロ対策のためのテロ等準備罪を作りたければ、今度は、野党の賛成も得られるような法案を出して国会でよく議論してほしいと思います。