ペシャワール会会報より「2016年度を振り返って」(中村哲氏)


毎年6月になると「8・6新聞意見広告」参加のお誘いの封筒が『第九条の会ヒロシマ」からきます。
今年は「ストップ9条改憲!」
今こそ日本国憲法 思いをひとつに アベ政治を終わらせる。」とお誘いのチラシに大書してあります。
都議選の結果で安倍内閣の支持率がこんなに下がることがまだ予測できない頃のチラシです。

「変えたいほどに知ってますか?」
安倍首相は国連の質問にも答えないで共謀罪を成立させ、施行されることになりました。
日本は民主主義国家なの?という疑いは、ますます大きくなっています。
そして、安倍首相、懲りずに、今度は「改憲」と言っていますが・・・・
チラシの2つのイラストがとても良いので写真で紹介です。
さてもう一つ、ペシャワール会の会報も届いています。2016年度の現地事業報告が掲載されています。タイトルは「『20年継続体制』に向けて日本側の支援強化を」と題して中村哲氏が8頁にわたって報告されています。その最後のところを書き移してみます:


2016年度を振り返って
     

     PMS総院長/ペシャワール会現地代表  中村 哲


 ゆく者は斯くの如しか。昼夜をおかず。
 ペシャワール赴任から33年が経ちました。歳をとったせいか、川の流れを見ながら、この間の出来事を夢のように思い返すことが多くなってきました。多くの知人や友人、先輩たちも他界し、ここまで生き延びて事業が続いていることを奇跡のように感じています。


 最近アフガニスタンの報道が絶え、偶(たま)に日本に伝わるのは爆破事件、テロ、誤爆や難民など、恐ろしいことや悲しいことばかりです。いつの間にか「テロ」という言葉が人々の頭脳に定着し、対テロといえば何でも正当化できるような錯覚が流布しています。しかし、いま世界が脅えるテロの恐怖は、16年前の2001年、「アフガン報復爆撃」に始まりました


 あの時が分岐点でした。飢餓に苦しむ瀕死の小国に対し、世界中の強国が集まってとどめを刺しました。無論、罪のない大勢のアフガン人が死にました。そして「二次被害」の一言で、おびただしい犠牲は「仕方ない」とされました。まるで魔女狩りのようにテロリスト狩りが横行し、どんな残虐な仕打ちも黙認されました。平和を求める声も冷たい視線を浴び、武力が現実的解決であるかのような論調が横行しました。
 文明は倫理的な歯止めを失い、弱い立場の者を大勢で虐待することが世界中で流行り始めたのです。別の道は本当になかったのでしょうか。


 他方、干ばつと飢餓はやまず、多くの人々が依然として飢餓と貧困にあえいでいます
 アフガニスタンで起きた出来事から今の世界を眺めるとき、世界は末期的状態に差し掛かっているようにさえ見えます。無差別の暴力は過去の自分たちの姿です敵は外にあるのではありません。私たちの中に潜む欲望や偏見、残虐性が束になるとき、正気を持つ個人が消え、主語のない凶器と臆病が力をふるうことを見てきました。


 このような状況だからこそ、人と人、人と自然の和解を訴え、私たちの事業も営々と続けられます。ここは祈りを込め、道を探る以外にありません祈りがその通りに実現するとは限りませんが、それで正気と人間らしさを保つことはできます
 そして、この祈りを共有する多くの日本人とアフガン人の手で事業が支えられてきたこと、そのことに救いを見るような気がしています。


 今また20年継続体制を打ち出し、事業を次の代に引き継ぐ時がやってきました。この良心の絆を絶やさず、最後の体当たりのつもりで臨みたいと考えています。これまでの温かいご関心に感謝し、ご協力を切にお願い申し上げます。


◎先週、北九州を襲った豪雨。
ニュースを見ながら夫が、「筑後川には中村哲さんが参考にした山田堰があるんだけど大丈夫だったのかな〜」と。
そうでしたマルワリード用水路は暴れ川の筑後川の石畳堰をお手本にしています。その山田堰は朝倉にあるそうです。
また、この会報によると、4月には現地のPMS副院長、ジア医師たちが山田堰の視察にも見えています。
朝倉の山田堰があの豪雨に耐えられたのか気になります。
◎最後に現在「建設中の交通路・連続堤防及び用水路・排水路予定ルート」図と「PMSの水利事業で安定灌漑される予定地 2020年」の図を: