ETV特集 ふたりの道行き「志村ふくみと石牟礼道子の“沖宮”」

午後11時00分〜 午前0時00分
ETV特集 ふたりの道行き「志村ふくみと石牟礼道子の“沖宮”

水俣を描き続けてきた作家・石牟礼道子さんと、長年の友人で人間国宝の染織家・志村ふくみさん。二人が最晩年をかけ挑んだ「能」にこめられた思いに迫る。


水俣を描き続けてきた作家・石牟礼道子さんと、長年の友人で人間国宝の染織家・志村ふくみさん。二人は最晩年をかけて「能」に挑んだ。舞台は、石牟礼さんの故郷、天草。人々を干ばつによる飢え死にから救うため雨乞いの生けにえとなった少女。その死と再生を描いた石牟礼さんの物語を、志村さんの衣装が彩る。齢(よわい)90を超えたふたりが、日本の行方を案じ、甦(よみがえ)りを念じた“道行き”を見つめる。


放送日       1月19日(土) 午後11時〜
再放送日      1月24日(木) 午前0時〜(水曜深夜)
オンデマンド配信  1月20日(日) 午後6時〜2月3日(土)午前0時 ※日本国内のみ


番組放送を記念して、アトリエシムラ 京都本店では、
この度制作した竜神の衣裳・狩衣《竜神》を特別展示いたします。

展示期間:1月19日(土)〜29日(火)まで


<展示に関するお問い合わせ>
アトリエシムラ Shop & Gallery 京都本店
京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2 壽ビルディング2F
tel:075-585-5953  11:00〜18:00(水曜・木曜定休)



また、京都本店、東京・成城では、「沖宮」の衣裳の小裂を使った『「沖宮」記念の額装』や、
石牟礼道子さんと志村ふくみの対談と往復書簡 『遺言』(ちくま書房)、
写真家・石内都さん撮り下ろしの『「沖宮」オフィシャル・イメージブック』(求龍堂)も取り扱っております。

◎土曜日のETV特集、今日は何だったっけ❔と思って、NHK教育を見てみると、このお二人でした。途中から慌ててカメラで画面を写しました。
石牟礼道子さんのお話は、最近訃報を聞いた梅原毅さんの「文明災」を克服する考え方「草木国土悉皆成仏」と共通する考え方です。石牟礼さんは、生きとし生けるもの、みな等しくこの世に存在している.として『生類』という言葉を生み出します。


「いのちの声ですね。人類愛とは言うけど、そうすると足らんですね。それで『生類』という言葉を思いついて、作り上げたんです。」
「志村さんの緋の色というのは?」という質問には、「草木染めというのは天然の草や木ですね、栽培したのではなくて。そうすると、海に目が行く、山にも目が行く、それから海岸線にも」「さっきの生類というお話とつながりますね」
水俣病にかかわり始めてから日本の近代を考えざるを得なくなった、日本の。文明とは何か。人類の行く末はどうなるのか。日本のみならず、民族の情念はどこへ行くのか。」

<京都>
この日、志村さんは病を押して「あや」の緋色を染めることにしました。
「おお、こんなものかな」「石牟礼さんと約束した緋色の能衣装」
「一本でもいいから自分が染めた糸を、あやの衣装に織り込んでほしいと思ったのです」
「ありがたいわ、お染めなんて何年ぶりだろう」

2018年10月 熊本水前寺公園
熊本市新作能「沖宮(おきのみや)」が初めて披露されます。
「ほっとはうす」の胎児性水俣病患者で石牟礼さんの著作のモデルでもあった半永一光さんたちも石牟礼さんの遺作を見届けにきました。
【雨乞ひの生にえにせんことを申し定め候】
村人を飢饉から救うために雨乞いの生けにえに選ばれたのは身寄りのない少女・あや。
戦で死に 亡霊となった天草四郎が迎えに来ます。

【あやに装束 すすむれば】【あーめーを、たもれー】
緋の衣をまとったあや、雨乞いの舞を舞い、命をささげます。
あやの命と引き換えに、竜神が雨を降らせます。


四郎は やがて
あやの手をひき、
命が 再生を果たす
沖宮へと向かいます。
【沖宮へ 道行は はじまりぬ 
 道行は 今はじまりぬ】
2週間後の10月20日、京都での公演が行われた。

志村さんは、ようやく「沖の宮」を見届けることができました。
「石牟礼さんの魂がやどってたの あやに」
「ありがとうございました。
ごくろうさまでした」と手を合わせる志村さん。
<嵯峨野>
よく晴れた秋の日。

少し体調が上向いた志村ふくみさんは、
久しぶりに臭木(においぎ)を摘みにきました。
「これ、臭木ですよね、ほら〜」
「まだ、実がね、こん中に入ってんの。これが青色に染まるんです」
石牟礼さんの故郷は天草。
ご両親とも天草で生まれ育ったとか。
天草四郎の衣装は、臭木から染められた水縹(みはなだ)色。
あやの衣装は、紅花で染められた緋いろ。
四郎とあやの道行きは、新作能「沖宮」を
創作し、染色した二人の道行きともなって・・・

◎天然素材の臭木で染めた水縹色と、紅花で染めた緋色。素晴らしい色合いでした。
糸の色がよくわかる写真がありましたので貼り付けておきます:


さて、本日は『新作薪能 沖宮(おきのみや)』のご案内です。作家の石牟礼道子さん原作、染織家の志村ふくみさんが衣裳を手掛けられる新作能だそうです。
お二人は30年来のご友人だそうで、お互いの作品に触れながら対話を続けてこられたそうです。


志村ふくみさんは、ご自身のHPで、このように触れられています。
「沖宮」の登場人物である少女あやの緋色と、天草四郎の水縹色を追い求めて衣裳制作に励んでいるときに、この(石牟礼道子さんの)突然の訃報に接することになりました。
「沖宮」完成までに石牟礼さんにお尋ねしたいことは多くございましたが、今はもうそれも叶いません。
私たちは悲しみを乗り越え、石牟礼さんから託された新作能「沖宮」の上演に向けて、より一層身を引き締め、力を合わせて努力していく所存でございます。
(「しむらのいろHP お知らせ」より引用)


お二人を始め、関わったすべての方の強い思いが込められた舞台となりそうです。
10月6日の水前寺成趣園能楽殿を皮切りに京都、東京で上演されます。二つの京、そして熊本での公演ということで、またとない機会となります。一般チケットは2018年7月1日販売開始予定だそうです。お着物でのお出掛けも、より一層いいお時間となりそうです。。