◎先月末、5丁目の楠マンションのクエ料理店「大海」前でクエが届くのに出くわして女将(おかみ)さんらしき方と話したのをきっかけに、昔からあそこの前を通るたびにいつか一度は食べてみたいねと言っていたことを実現することに。先日の夫の誕生日の前日、あと2か月もすると私の誕生日も来ますので二人合わせてお祝いを兼ねて…ということで、お店に電話してみたらいつでもOKのようで、いつにします?となって、じゃ、明日の夕刻、と言ったら、お店は8時までなので、ということで5時半を予約しました。
◎住宅街を抜けて少し行くとマンションの下のお店の前に幟が立っていました。初めてお店の中に入ることに。マスクをした女将さんが出迎えてくれて消毒を済ませて一番手前の個室へ。掘りごたつ式になっていて、コートを掛けて、座りました。抗菌マスクケースが置いてあったので外して抗菌の紙の間に挟みました。
まず、注文を取りに男性の店員さんが出てこられてクエ鍋のコース名を聞かれたので、最初なのでアラ煮や唐揚げが入っているAコースをお願いしました。上に特別フルコースというのがあり、他にBとCのコースがありました。
お酒を選ぶのが大変。試し飲みをさせてくれて選びましたが、夫がおススメの銘柄を一杯飲んで次にはもう少し辛口を選びなおし。女将さんが選んでこられたのか全銘柄の味を知っていて、お酒談義。夫が伏見のお酒で気に入ったのがあるというと、関西のお酒の辛さは東北とは比較にならないのだそうです。関西の人の辛口と、東北の人の辛口は基準が違って、東北の人の辛いが+5だとすると関西の辛いは+10以上でないとだめなんだそうです。女将さんは自分は東北の辛さが丁度いいので、もっと辛い方がお好みかと思っていたと。その通りでしたが、私は最初の辛さ(甘さ?)が美味しいと感じました。(メニューの横に+数字で辛さ表示)
突き出しのクエの皮の酢の物とお造り
唐揚げと荒煮
唐揚げの左横はウロコのお煎餅。皮とウロコを分けて、ウロコは一度油で揚げたものを砕いておせんべいにしたものだそうです。
唐揚げのクエの身の分厚いこと!
荒煮の背骨の丸い骨の大きいこと!
皮の裏にもコラーゲンたっぷり!
いよいよクエ鍋。女将があたたまった鍋から昆布をとり出して野菜を入れるのを見ながらお話を聞くことに。
ご自分は一人娘で大阪生まれの大阪育ちだけど両親が九州出身。先代の父親が出身の種子島や屋久島のクエを食べて育っているので60を過ぎて関西の人は本物のクエを味わっていないと一念発起、クエのおいしさを味わってほしいと天然クエだけを扱う店を20年前、ここで始めた。「ところが5年ほど前からその先代が認知症になって私が後を継ぐことに。今日のクエは27キロのクエですからどうぞ味わって下さい」。
部屋に写真が飾ってあったので、「あれ、大きいですが、あれは?」「38キロありました。私が一番大きいのを捌いたのは42キロありました」「えっ、私の体重より重いですよ」「その大きさだと捌くというより格闘というか解体工事と同じです。天然物は汚れているのでまず洗うのが大変。歯も歯ブラシで磨くんですよ。アブラがどっさりついているし、アブラと腸の区別がつかないくらい。手を突っ込んでいるとまだ動いていたりするので、頼むから早く死んで・・・成仏して・・・きれいに食べてあげるからと」「それでウロコから全部」「そうなんです」「それで何人分ぐらいとれるんですか?」「40人分以上」「そうなんですか~(一人分1キロということね)」
「白身の魚は煮崩れがしますが、天然物のクエは煮崩れしません。見てください、身がキュッとしまって崩れません。これで見分けがつきます。和歌山のクエもほとんど人工、近大育ちが出回っています。煮崩れするかしないかで天然物と見分けがつきます。このまま煮込んでも煮崩れしないので、あとはご自由にやってください」と言って引き下がっていかれました。お餅も並べてありましたが、お腹がいっぱいでお餅は止めて最後の雑炊へ。
「女将さんのお話を聞いてさっき話していたんですが。私たち20年間、このお店の前を通るたびにいつかは食べてみたいねと言い続けていたことになるんです」「テレビで4,5回紹介されていて俳優さんや芸人さんはよく来られるんですが、地元になじみがなくて。これから是非いらしてください。シーズンオフの7,8,9の三か月は休んでいますが10月から6月までやっています。秋もいいですよ。」
雑炊とどんなにお腹が一杯でもこれは別腹のアイスクリーム
「春と秋で味が違うんですか?」「違いますよ~春は春で美味しいです。ぜひ、味わってみてください」と言われました。私が雑炊を少し残したので、胃の3分の1を若い時に取っているのでと夫が口添えを。「お一人ずつ別コースで頼んでもらってもよいので、是非お越しください」とのこと。これから一年に一回ぐらいは贅沢してもいいね~なんて気持ちになりました。
8時前にお店を出ることに。靴を履きながら、送り出してくれる女将さんに夫がパンフレットに載っているのは貴女ですか?」「はっ? あれは、そうです、若かりし頃の私で、年々、たくましくなってます」と笑いながら。「ごちそうさまでした」とお店の外へ。初めてのクエ鍋料理、堪能しました。