◎青葉、若葉が美しく、風薫る5月を迎えるはずでしたが、
日替わりで雨天、青天の入れ替わり。あいにく今日は雨。
雨雲の上には変わらぬ太陽が。
🔲知床観光船で事故を起こした会社のコンサルは「素手でトイレ掃除」の会社とか:
🔲防衛省は、なぜミャンマー軍の留学生を今年も受け入れるのか:
🔲想田和弘氏のツィッターを覗いたら。このゴールデンウィーク中に見てみようかな:
🔲ロシアのウクライナ侵略に「抵抗するな(降伏しろ)」と言った人として想田氏が取り上げられることがありますが、それは誤解だと。今回の記事の中では「主権国家であるウクライナの対応は、ウクライナ人が決めることであり、僕はその決定がなんであれ、尊重するしかない」と書かれていますので、この点もクリア。あとは、日本の場合について持論を述べておられます。9条を持つ日本としてもしもの時どうするべきか考える上での参考として紹介です:
第111回:ジーン・シャープの非暴力抵抗理論(想田和弘) | マガジン9 (maga9.jp)
前回(3月9日)、僕は本欄に「私たちは軍事国家から侵略を受けたときに、それに対してどう向き合うべきか」と題するコラムを書いた。そして4月15日朝日新聞のオピニオン欄「耕論」には「非暴力抵抗こそ民を守る」と題する談話を寄せた。
以来、僕のソーシャルメディアには批判……というよりは罵詈雑言と呼んだ方がよいような感情的なリプライが怒涛のごとく寄せられている。
それらの大半は、僕が言ってもいないことを、言ったかのように(意図的に? 無意識に? 読解が出来ず?)曲解して、あたかも僕の発言として攻撃するものである。いわゆる藁人形論法(ストローマン論法)という詭弁だ。しかし僕の言っていないことを攻撃しても虚しいだけで、意味がない。
もっとも、藁人形論法が無意識に起きる心理的メカニズムは理解できる。相手が自分と異なる意見を述べていると、不快な感覚と嫌悪の感情が湧いてくるので、それが耐えられなくて相手の主張を聞けなくなるし、受け止められなくなるのである。議論で相手の話を途中で遮るのも、まったく同じメカニズムである。
いずれにせよ、彼らのフラストレーションは、次のように要約できるだろう。
「虐殺事件まで起きているウクライナの状況をお前は知っているのか? お前は家族が殺されたり強姦されたりしても無抵抗なのか?」
そうした反発に、この場を借りて答えておきたい。
まず、これも典型的な藁人形なのだが、僕が唱えているのは「非暴力による抵抗」であり、「無抵抗」ではない。朝日新聞の耕論には「戦うべきか、否か」という表題が付けられていたが、それに対する僕の答えは「戦うべき」である。ただし、物理的な暴力を使わずに、ストライキやボイコット、サボタージュなど、非暴力のあらゆる手段を駆使して侵略者と戦うのである。
また、ウクライナの悲惨な状況は、もちろん知っている。というより、ウクライナの街や村が破壊され、多数の市民が殺され、虐殺事件まで起きているのを見れば見るほど、結局、武力で民を守ることはできないという確信が深まっていく。
忘れてならないのは、ウクライナは非暴力の抵抗ではなく、武力による抵抗を選んだということである。
素朴な主戦論者は「武器を取って国や国民を守る」と口々に言うが、それで実際に国や民を守れているといえるのか?
残念ながら、僕にはまったく守れているようには見えない。
というより、「武力は民を守るための有効な解決策ではない」ということを、ウクライナの惨状は、むしろ明らかにしてしまっているように思うのだ。
では、どうしたらいいのか。
主権国家であるウクライナの対応は、ウクライナ人が決めることであり、僕はその決定がなんであれ、尊重するしかない。
だから私たち日本人が考えるべきは、「ウクライナ人はどうすべきか」ということではない。私たちが真剣に“自分ごと”として問う必要があるのは、日本が他国から侵略されたときに、どのように対応すべきか、ということなのだ。
そのことを考える上で、最近、とても参考になる本を2冊読んだ(3月9日のコラムを書いた時点では読んでいなかった)。
『市民力による防衛 軍事力に頼らない社会へ』(法政大学出版局、三石善吉訳)と『独裁体制から民主主義へ 権力に対抗するための教科書』(ちくま学芸文庫、瀧口範子訳)である。
いずれもジーン・シャープ(1928-2018)というアメリカの政治学者が書いたものだ。
シャープは「非暴力のマキャベリ」「非暴力的戦争論のクラウゼヴィッツ」などと称される、高名な学者である。ノーベル平和賞に何度もノミネートされ、アラブの春やウォール・ストリート占拠運動、セルビアのオトポール! 運動、ウクライナのオレンジ革命などにも大きな影響を与えたと言われている。
ジーン・シャープが世界中の非暴力革命運動に与えた影響の概要を48分にまとめたドキュメンタリー映画『非暴力革命のすすめ』(2011年、イギリス)は、下記のリンクで見ることができる。シャープの理論と影響の大きさを知る上で、貴重な作品である。
シャープの権力理論は、シンプルにして明快だ。
そのエッセンスは、「いかなる独裁者や占領者も、人々の協力なしには権力を行使できない」ということである。
どういうことか。