是枝監督に聞く「 委縮し自己規制する放送局 知る権利を奪われている」とカンヌ映画祭(「怪物」と「首」)

◎是枝監督といえば、新作「怪物」がカンヌの最優秀賞が取れるか気になりますが、先日から切り取ったままになっている5月18日の朝日新聞文化欄の記事を先にご紹介です。書き移してみます。

 先ず、放送法第4条について、「放送局の取締法ではなく、政府に介入するなという法律」なのに、政府も肝心の放送局も間違った解釈をしているのではというところから:

放送人 政治介入をなぜ語らないのか

  元BPO委員・是枝裕和監督に聞く

 安倍政権当時の行政文書が3月に公表され、放送法の政治的公平性について官邸側が総務省に解釈の追加を求めていた経緯が明らかになった。だが、「本質的な議論に向かわなかった」と映画監督の是枝裕和さん(60)は嘆くテレビドキュメンタリーも手掛け、放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理憲章委員会で委員も務めた是枝さんに話を聞いた。

―――文書では当時の官邸側と総務省のやり取りが明らかになった一方、当時総務相だった高市早苗氏は内容をねつ造と主張しました。

 高市さんが辞めるか辞めないか。捏造という言葉が適切か。そこに終始して、本質的な議論に向かわなかったことが一番の問題だ。

―――番組編集について定めた4条のうち「政治的に公平であること」をどう解釈するかが焦点でした。

 政治の報道への介入は憲法違反ではないか、放送法をどう運用すべきか。歴史を検証したうえで、そう言った議論をもっとすべきだ。

 放送法4条を、行政が放送局を規制するための法規範と考えると放送の不偏不党を保証する1条にも番組は誰からも干渉・規律されないとする3条にも、そして表現の自由を保障する憲法にも違反するだから4条は、放送局が自主自立的に守る倫理規範と考えなければいけない

 いつの時代も権力は放送をコントロールしたがる。だからこそ放送法は放送の不偏不党を保障しているこの法律の名宛人は放送局ではなく、政府介入しないから真実を追究しろという趣旨だ

放送法文書 本質的議論に向かわなかった

 ただ、一番批判されるべきは放送局だ。

―――なぜですか。

 放送局自身が放送法を「放送局取締法」と考えてしまっているように思う。もしくはそこに甘んじていれば危ないことにはならないと考えている。

 でも、放送法は武器、少なくとも盾だ介入を許さないと訴え、憲法違反にならない放送法の運用を考え、政府に突き付けるべきだなのに自らのこととしては語らないのはなぜか。

―――放送局側が委縮してしまっているのでしょうか。

 実際に自己規制してしまっている間違っていることを間違っていると言い続けて来た人が番組を外されたり、局を去ったりしたのを何度も見てきた

 昔の話だが、2005年頃にフジテレビで憲法の番組を作り、僕は9条を扱った。護憲派改憲派を両論併記で出す形にはしたくなかったので自分史を通して憲法を考える企画にした。それでも途中でフジの上層部から「両論併記にしてほしい」と言われた。

番組一つの中で政治的公平性を保つ必要はないこと、倫理規範であることなどを説明し、そのまま放送されたが、今だと難しいんじゃないか。

委縮し自己規制 知る権利を奪われている

 BPO委員時代、時々放送局への研修に呼ばれた。政治的公平性をどう考えるかが話題になった時に「ゲストの発言の秒数を同じにしている」と言われた。量でなく質的な公平を考えて欲しいと説明してきたし、BPOも意見を公表しているが、なかなか伝わらなかったのは力及ばずだったのかと反省している。

―――今回の問題を国民一人ひとりはどう受け止めるべきでしょうか。

 放送行政に対する政治介入があり、脅しがあった。そして放送局はますます委縮して自己規制する。市民は知る権利を奪われていると考えるべきだと思う。

 放送人もこのままで良いはずがない。攻撃されるのが怖いのだろうけど、権力に煙たがられているうちが花だ。僕は放送界に育ててもらったから、次の世代へのエールとして諦めずに関わりたい。              (聞き手・田島知樹)

フランスのカンヌで開催されているカンヌ映画祭で、是枝監督最新作「怪物」が注目です(日本公開は6月2日):

カンヌ映画祭(2023)東京出身の是枝裕和監督 最新作「怪物」に注目 | NHK

世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭が開幕しました。

最優秀賞を競うコンペティション部門には、東京出身の是枝裕和監督の最新作のほか、渋谷を舞台に役所広司さんが主演を務めた、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」(原題)がノミネートされ、賞の行方に注目が集まっています。

ことしで76回目となる世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭がフランス南東部のカンヌで開幕しました。

ことしのカンヌ映画祭には、最優秀賞にあたるパルムドールを競うコンペティション部門に、東京出身の是枝監督の最新作「怪物」がノミネートされています。

1つの出来事を、子どもや親、それに教師などさまざまな視点から描くことで「怪物」が何を意味しているのか問いかける作品で、音楽はことし3月に亡くなった坂本龍一さんが担当しました。

17日夜の上映会の前には、是枝監督脚本を手がけた坂元裕二さんが、出演者の安藤サクラさんや永山瑛太さん、それに2人の子役と一緒にレッドカーペットに登場しました。

北野武監督の「首」(省略コピーで)

北野武の新作「首」にカンヌ熱狂、西島秀俊や加瀬亮も手応え「胸がいっぱいです」(最新映像あり) - 映画ナタリー (natalie.mu)

 

北野武の監督最新作「」が第76回カンヌ国際映画祭でフランス現地時間5月23日に上映され、北野とともに出演者の西島秀俊加瀬亮中村獅童浅野忠信大森南朋が参加した。

公式イベントの前日5月22日には、6人そろってメディアの前へ。翌23日、カンヌの青空に映える爽やかな装いで集まった6人は、各国の報道陣を前に堂々たる表情で撮影に応じる。夜になるとレッドカーペットが敷かれた会場に移動し、フォトコールでのカジュアルな装いとはうって代わって6人は正装で姿を現した。その後ドビュッシー劇場にて「カンヌプレミア部門」での公式上映が行われ、「首」を世界初披露

11月23日に全国公開される「首」は、北野の著書を自ら実写化した“戦国スペクタクル映画”。本能寺の変を軸に、戦国武将、忍、芸人、百姓それぞれの野望、裏切り、運命が描かれる。YouTubeでは新たなプロモーション映像が公開中だ。

(写真は別記事から)