◎久しぶりの12月の阪急梅田駅です。
阪急百貨店入口
大阪駅と地下街へ通じる百貨店横のコンコース
名物ショーウインドーもクリスマス仕様
★今期、何故だかドラマを見ても続かず、まだ最終回を迎えていないドラマ、最終回は見ようかな…ぐらいで、どうしたことか・・・。そんな中、最後まで毎回楽しみにして見終えたのは、先日最終回を迎えた「大奥」。男女が入れ替わって(この発想がスゴイ!)幕末までが描かれましたが、徳川慶喜がドラマでこんなに悪役に描かれたのも珍しい、さすが徳川幕府側から描かれたドラマだっただけのことはある…と納得したり。最終回、女性の活躍と言う点で時代を先駆けた津田梅子が登場したのも本当に良かった。原作通りだそうですが、男女入れ替わりの意図が明らかになりました。
現代もののドラマで見ていた役者さんが時代劇で大役をやって素晴らしい、という俳優さんにも巡り合ったり、力が入っているドラマでした。このスタッフが再来年の蔦谷重三郎を取り上げた大河ドラマ「べらぼう」を製作するということですので楽しみです。
★【大奥2】完。この上ない絶望的な展開の合間に見える、希望に満ちた将来を夢見させてくれた (msn.com)
★岸井ゆきのさんが演じた和宮。京言葉も完璧でしたが、やはり上手いですね。有吉佐和子の小説「和宮様御留」の内容通り、ドラマも「替え玉」説で進みました。
★NHK番組プロデューサーの言葉。途中から:
「男女が逆転したパラレルワールド」と、日常を吹っ飛ばす大胆なフィクション設定であり、「女将軍に使える美男三千人」と惹句はセンセーショナルですが、大奥という大きな鳥かごにとらわれた人々の、自由を奪われる悲しみ、大切なものを踏みにじられる辛さ、自分の存在価値を見いだせない虚しさ、そんな中でも理解しあえ支えあえる相手がいることのこの上ない喜び…などなど、現代を生きる人にもバンバン響くエピソードがこれでもか、というぐらい繰り広げられています。
一方男女を逆転することで見えてくる今の社会の「仕組み」もあるように感じられ、いろんな発見にも満ちた作品です。
そんな何層にも広がる魅力を訴え続けると、プロジェクトメンバーの中にも「大奥」に共感する人が増えてきて…。
その調子でどんどん上司にもプレゼンをつづけるうちに、「このようなコンセプトの新枠ドラマ、やってみよう!」ということになりました。実際には、そのころ「大奥」は他局でのドラマ化が進行しており、NHKでのドラマ化という願いは叶いませんでした…。
ドラマ10という新枠ドラマは実現することになりましたが、もう私が「大奥」をドラマ化することはできないのだろうな…とあきらめの境地でした。完結した「大奥」との再会
それから14年、さまざまなドラマを制作し他部署も経験した後に、「ドラマ10」の編集長を務めることとなりました。
今再び「一日の終わりにじっくり楽しむドラマ」として、何が求められているのか。
コロナでいろいろままならず、ドラマを見るときぐらいそんな日常の憂さは忘れたい。でも感動したり共感したり心揺さぶられたりもしたい。
私自身がそんな心境だった時に、とうとうあの「大奥」が完結したという知らせが入ってきました!改めて全編通して読むと、疫病はびこる社会の混乱がよりリアルに感じられたのは時代のめぐりあわせですが、こんなスケールの大きな物語だったのかと驚愕。
実は16年前企画書を書いたときは、歴史的知識が乏しすぎてよく気づいてなかったのですが、「男女逆転」という設定はあれど、登場人物の名前や起こる出来事は、ほぼほぼ歴史的事実に沿っているんですよね。その物語構成が全編貫かれ、大政奉還で現実世界に戻ってくるようになっていて…。
よしながさんの頭の中には、最初からこの設計図があったことがよくわかり、もう「お見事」の一言しかありません。そして、家光の時代から大政奉還まで、「大奥」にとらわれた人たちを追っていくことで見えてきたのは、血のつながりで社会体制を維持しようとすることのグロテスクさでした。
16年前、男女逆転した世界という設定は、男女の「役割」を見つめなおすため、つまりはジェンダー論的な目線なのかと思っていました。が、この「大奥」世界で、「徳川幕府」存続のために人々が志も望みもすべて差し出すことを余儀なくされるたびに、「いや、もう、それ無理でしょ?!」と一緒に憤慨するのですが、ふと我に返ると少子化におびえる日本社会は同じことを人々に要求しています。
男女がどういう役割を担おうが、血脈でシステムを維持しようとすることは暴力的で悲劇的である。
それは、男にとっても女にとっても。
それが「大奥」完結を迎えて一番強く感じたことです。「なんでこんなつらい目に合わんといかんのやっ!!」と何度も思いますが、でも希望もあります。(以下、原作&ドラマ「大奥」のネタバレです)
この物語の最後で、江戸が火の海となるのを阻止し人々の暮らしを守ったのは、徳川家の人間ではありません。
「あの戦国の世に戻してなるものか」と修羅の道を選んだ春日局の思いを引き継いでいったのは、実は徳川家と縁もゆかりもない人たち。
その思いを今の時代に引き継ぐことはできるし、私もその思いを引き継ぐ一員になりたい。
そう感じさせてくれた物語であり、それこそが今の社会に投げかけられる大きな希望だと感じました。
そして「今改めて、ドラマ化したい!」と強く思ったのです。もう一つ、背中を押してくれたことがありました。
さまざまなドラマでお世話になっていた脚本家の森下佳子さんに「今ドラマ10で何見たいですか?」と尋ねたところ「…大奥」とのお返事。
まったく偶然に同じ作品の名前が出てきたのは、森下佳子さんがよしながふみさんのファンでらっしゃったことと無関係ではありませんが、森下さんもさざ波のようなものでなく、大きく心を揺さぶられる切実な物語を欲してらっしゃったのかと。これはもういくしかない、と覚悟を決めました。
出版社にお電話したら、16年前問い合わせたときと同じ権利窓口の方が出てくださって、16年たってもあきらめていないことに驚かれたり。
よしながふみさんも森下作品のファンでいらっしゃったり、いろんなご縁がつながってドラマ化が実現することとなったときには、うれしくはあったのですが、あまり長いこと思い続けていたのでしばらくは信じられない気持ちでした。
脚本を作ったりキャストに声をかけたりし始めてようやく「実現するんだ…」とじわじわ実感していった感じです。(後略)岡本 幸江
ドラマプロデューサー。1992年入局。高松放送局、国際放送局などを経て、現在第3制作センター・ドラマジャンル長。
主な担当番組にドラマ8「バッテリー」、BS時代劇「テンペスト」、連続テレビ小説「ごちそうさん」、大河ドラマ「おんな城主 直虎」、特集ドラマ「風よあらしよ」など。