田口八重子さんの長男と金賢姫さんとの面会

今日3月11日(水曜日)、北朝鮮による拉致被害者田口八重子さんの長男の飯塚耕一郎さんと八重子さんの兄の飯塚繁雄さんと、大韓航空機爆破事件の実行犯で、犯行前に田口さんから日本語などを習っていた金賢姫(ヒョンヒ)さんとの韓国・釜山での面会が実現しました。

テレビで面会の様子をみましたが、耕一郎さんと金さんの対面の様子には涙が出ました。
「大きくなったね」「抱いてもいいですか」「写真で見ましたけど、似てますね」「もっと早く会えたらよかったのに」「希望をもちなさいよ。きっとお母さんは生きていますよ」「努力していれば、こういう風に会える日がきっとあると思います」 3人の話し合いに入る前に公開された場面での言葉は昼間見たニュース番組ではこれだけでした。
1時間半の話し合いが終ったあとの共同記者会見の冒頭、耕一郎さんが上気した表情で「金さんから『私が韓国のお母さんになりますよ』と言ってもらった。嬉しい気持ちでいっぱいです」と本当に嬉しそうでした。

1歳の時に母親が行方不明になり、21歳まで伯父さんに実子として育てられ、就職に際して戸籍を取り寄せて初めて事実を知らされ、それでも母親の実感は皆無。母の面影を取り戻したいという32歳の青年の「母を尋ねて三千里」です。拉致事件は親と本人と子の三代にわたる被害者を生んでいます。
金さんの「抱いてもいいですか」には母親なら解かる万感の思いが伝わって泣かされます。
同じ北朝鮮の非道の犠牲者(金さんは大韓航空機爆破事件ではテロ実行犯という加害者でも)であり、今なおその体制と闘わざるを得ない立場の者同士の心の通い合い、そして生きて帰ってほしいという共通の願いをもつ者同士、田口八重子さんという人を介しての数奇な運命を生きている人同士の固い絆を見ることができました。

夕刊では、金さんが拉致問題の解決に向けて「北朝鮮の自尊心を生かしながら心を動かす方法を考えるべきだ」とも訴えたと書かれています。国を挙げてその方法を考え出さないといけませんね。政治家の知恵を期待します。