「田園」と「運命」の夕べ

昨日は夫の知人から頂いたチケットで箕面グリーンホールでベートーヴェンを聞いてきました。
戴いたチケットを見ますと4000円。「がん患者支援チャリティーコンサート」となっています。
主催は株式会社バルゾ研究所、演奏はフォンタナ・フィルハーモニー管弦楽団、指揮はなかむらゆういち。
あまり聞いたことのない会社、オケ、指揮者ですが、演目がベートーヴェンの「田園」と「運命」なので夕方6時開演のコンサートに二人で出かけました。
客席が申し訳ないほどの人数で、好きな所に座れるので、真ん中に席を取って開演を待ちました。
      6月にアヴィニヨンで「第九」を聞いて以来の生オケで、「あのときは指揮者がずいぶん長時間お喋りしたけど、普通はいきなり音楽。最近は司会者付きの音楽会も増えたのでどうかな・・・」なんて言いながら待っていると、定刻より10分ほど遅れて、指揮者が入って早速マイクでご挨拶が。
「田園」と「運命」はベートーヴェン初演(1808年12月22日)と同じ組み合わせで、初演当時すでに耳が聞こえなくなっていたそうです。オケはコントラバス3人が全員女性で4,50人の編成。コンサートマスターはかなり高齢の男性。「有名な人でN響でも演奏したことが」という指揮者の小さな声の解説があったような。フォンタナ・フィルというのは「唯一無二の世界初の株式会社オーケストラ」なんだそうです。演奏者は社員?なんでしょうか。

さて演奏が始まると、特別の思い入れのある演奏がどうしても甦ってきてしまいます・・・
1992年、巨匠テンシュテットがロンドンフィルを率いて東京でこのプログラムを演奏することになっていたのが、体調不良で降板。サブで控えていた若干32歳、オーストリア出身のフランツ・ウェルザー・メストが代役を務め、素晴らしい演奏で大絶賛をうける。それがNHKで収録され、オンエアー。たまたまその演奏を見た私は二度目のショック! 今回はオーケストラに目覚めました。メストさんの指揮するベートーヴェン交響曲5番を繰り返し見て、聞いているうちに音楽の構造とか構成とかが分かる?ようになってオーケストラ音楽を楽しめるようになりました。その記念すべき2曲でした。

指揮者によって見えてくるメロディが違います。最初は余りに鮮明にメスト版田園が残っていますので、困ったな〜と思っていたのですが、甦るメスト指揮の残像を楽しみつつ、時々、現れる異なるフレーズも楽しめるようになりました。描かれる田園風景、空に雲、鳥のさえずりや葉のそよぎ、天候の変化、雷、雨、嵐・・・ ベートーヴェンの心の中にあった音なんですね〜

休憩前に指揮体験サービスがあって、休憩。いよいよ、「運命」です。何度見たことか、聞いたことかというウエルザー・メストの指揮する「運命」。
音楽は再現芸術と言われ、楽譜を読めない私のような者には、演奏されない限り存在しないわけで、オーケストラ曲になれば指揮者が再現する音楽を享受することになります。メストさんの音楽は再現というより「体現する音楽」でした。今ナマの楽器の音を聞きながら身体に染込んでいるメスト版が蘇ってくるという不思議な体験。勇壮な最終章まで、メスト版は一気に猛スピードで30分ほど。なかむらさんの指揮は細部まで丁寧な指揮ぶりですが、金管木管が良く響いて華やかで推進力も十分、とっても楽しめました。
久しぶりの生の楽器の音、弦楽器、管楽器、打楽器と贅沢なオーケストラの演奏、そして思いがけない17年前の思い出の演奏の記憶の再現。歩いて帰ることができるホールで、と満足な夕べの「田園」と「運命」でした。