ドラマ「父よ、あなたはえらかった−1969年のオヤジと僕」

ご近所仲間で生協のグループ購入を何十年と続けていますが、そのお仲間にあのタレントの相武紗希さんのおばあさま(H)がいらっしゃいます。デビューの時には高校の制服姿の紗希さんを連れてご挨拶に廻って下さって、それからアレヨアレヨという間にビッグになられて、今ではいくつかのCMでテレビをつければ毎日のようにお目にかかれるほどの売れっ子さんです。
そのHさんから先々週の生協の集配のときに2つの番組の紹介がありました。一つは鶴瓶がやっている夜11時からのAスタジオというインタビュー番組。もう一つが16日に放送のあった特別番組のドラマでした。

ツルベの番組ではHさんの娘さん(=紗希さんの母親)を久しぶりにお見かけしたり、紗希さん自身が、姉である宝塚の娘役でエトワール(大階段から一人で歌って降りる大役)を務めている音花ゆりさんに小さい頃からコンプレックスがあって、タレントとして自立してやっと普通の姉妹関係になれたというお話をしていました。
子どものころから優秀なお姉さんにどうしてもプレッシャーを感じて育ってしまって・・・ということですが、親との関係、子供同士の関係は小さい頃はそれだけが子供にとっては全世界ですから、大問題です。やがて成長してやっとその頃が有難かったり、苦い戒めとなったりで、思い出の中、過去に紗が掛かりセピア色に変色し大人になれるんですね。紗希さんも東京へ出て、大人になれたという、お話でした。
 先日の金曜日にお逢いしたときはこの番組のみで、ドラマの方は録画でまだ見ていなかったのですが、これがなかなか良いドラマでした。
16日(月)の夜、TBSの2時間ドラマ:JNN50周年記念「父よ、あなたはえらかったー1969年のオヤジと僕」、脚本は浅野妙子
父親役が西田敏行、母親が泉ピン子、僕はだれ?(加藤成亮) 相武紗希さんは泉ピン子の娘時代を演じています。お葬式の場面から始まって、団塊世代の夫婦二人が夫の田舎の母親を引き取って最後まで面倒を見て、結婚した長男は銀行員で、次男の僕は家でマンガを描いて引きこもり? 父親は昭和22年生まれで、62歳、会社では定年後も残って閑職を得ていたが、肩たたきにあって、仲間と「戦おう」と抵抗を覚悟していたところ、会長から息子の就職を世話するからと言われる。

息子にその話をするが、親子口喧嘩の末「出て行け、出て行く」と息子は家を飛び出し、ビルの屋上へ。そこで、手すりに手をかけた時に運悪く不吉なカラスが一鳴き。僕は身体ごと落ちながら・・・ 目を覚ますと、1969年の12月、70年安保前夜、「社青同」のヘルメットをかぶって機動隊と長いゲバ棒で戦っているまさにその只中へ落ちることに。そこで、かつての父、母の青春時代を一緒に生きることに、という意表をついたドラマに。

1969年は私が結婚した年です。この年の3月30日が結婚式でした。パリの学生運動で女性が犠牲になり、その死を悼む歌が流行しましたが、あの日が結婚式でした。ということは、この団塊世代まっ只中のこの人たちの時代のことは数年違いで同時代とは言えない世代です。すぐ下の妹や高知のSさん、長野のKさんたちの世代が体験した騒然とした時代の空気は、やはり私にとっては、一枚のヴェール越しの遠い世界のようでした。特にお二人から聞いた東京の様子は関西に居ては一寸想像がつかないものでした。その時代へドラマとともに遡っていきました。

若き日のチチに助けられてラーメン屋の2階の下宿に転がり込んで、時代を体感する息子のボク。ラーメン食堂の娘で二階のチチの部屋へ出前にやってくるボクの母さん? この辺、とっても面白い設定。福島の貧農の出で明治大学生のチチはリーダーではなくシンパ。黛ジュンのポスターも押入れの扉の内側に貼っているし、少年ジャンプの「あしたのジョー」を読んでいる。ボクの耳には総決起集会の全共闘のリーダーたちのメガホンの演説・ベトナム反戦アメリカ帝国主義反対、沖縄侵略反対の中身はサッパリわからない。なんでこんなことで世の中が変わると思えるの?的なボクの言動が納得ですが、可笑しいような悲しいような。「連帯を求めて孤立を恐れず」の演説をするリーダーに憧れの眼差しで見つめるハハのはるみに恋心を察知するボク。

就職を巡って仲間やリーダーから「君の闘争は一時の祭りか」と非難されるチチ。仲間から離れて一人たたずむチチ、そこへ慰めに来るボク、そしてはるみも。チチに「お前のやりたいことは?」と聞かれて話し始めるボク。ハハはやりたいことがあるだけで素晴らしいことと励ます。チチも自分には余裕がないから、君のような人こそやりたい事をやってほしいと励ます。ボクは「初めて親の前で正直に話せて、初めて親から励まされた。それは年が近いから? そうではなくて、同じ時を過ごしたから。初めて親をじっと見つめたからだ。」と解る。「あいつら今頃、戦いから逃げたと言ってるだろうな〜」というチチに「逃げてなんかいないよ。働くことはそれだけで戦いなんだから」とリーダーよりチチを選んだハハの一言。

結局、父親は、息子には自分で自立してもらってと、仲間の二人と不当解雇断固反対の座り込みを始める。意識を取り戻したボクは家に帰り、朝のテレビに写っている父親を見て、ギター片手に駆けつける。「あの時」覚えた岡林信康の「友よ」を歌って。そして、初めて自分のやりたい事、自分の将来について宣言する。父親は息子に「仕事って、働くって・・・」と言いかけると、そこへ差し入れのお握りを作って応援に駆け付けた母が言葉をつなぐ、「働くって、それだけで戦いだもの」。「友よ〜夜明けまでの闇の中で〜友よ戦いの炎を燃やせ 〜 〜 夜明けは近い、よあ〜けは〜ちか〜い」 終。

若い頃の父親を堤下敦(インパルス)が演じていましたが、相武紗希さんと二人、好演でした。顔の輪郭が西田・泉に似ていて、違和感なく大人に、という感じにも。紗希さんに気を使ってか「お母さん、若い時はキレイ」と言わせてましたが。西田敏行さんは実年齢と同じ?かな。ボクを演じた役者さんは知らない役者さんでしたが(「NEWS」のメンバーとか)、表情が良くって、いまどきの育ちの良い若者像が上手に表現されていました。
団塊の世代、昭和22年生まれといえば、鳩山さんも菅さんも同世代ですね。マニフェストに縛られて一旦言いだしたら融通が利かない?というのも全共闘世代なんでしょうか〜 この世代が子どもたち世代と理解し合えないかという物語ですが、なかなかテーマも面白いし、楽しめました。
熟年団塊団塊ジュニアがどんな生き方をするかは関心もあり、期待もしてま〜す。]