桜咲いて連続ドラマ最終回と映画「12人の…」と「いなくなれ、群青」

 桜並木の北半分、古木の桜が咲き始めました。さすがの貫禄!

でも、老木ゆえの痛々しい姿も。枝の先が台風でやられたり

大きな枝でも落ちそうな枝は伐採されたりしています。

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◎スカーレットが終わってから…と思っていたら遅くなってしまいましたが、メモ代わりに冬の連ドラの最終回を振り返って:

〇スカーレット(NHK朝の連続ドラマ)

大団円を最終話にもって来ないで早めに琵琶湖畔で済ませて、最終話では2年後、息子の武史(伊藤健太郎)は白血病で26歳で死去、夫の八郎(松下洸平 )とは元夫という関係のまま、最後は喜美子(戸田恵梨香)が登り窯に薪を突っ込む姿とスカーレット色に燃え盛る炎と見つめる喜美子のアップで終わりました。実在の人物がモデルだということですが、人生、いいことばかりじゃないし、また悪いことばかりでもない。幸せは人と人の関りにこそあるし、最後はみんなまた一人に。

滋賀県出身の俳優、林遣都さんや歌手の西川貴教「自由は不自由やで」の世界的芸術家)が出演。隣人に財前直美。ふらっとやってきた陶芸志望で弟子入りして夫の八郎を誘惑?する女の子に黒島結菜。喜美子の作品のファンで風来坊のアンリを烏丸せつこ。喜美子の両親に北村一輝富田靖子。妹に桜庭ななみ福田麻由子、幼馴染に大島優子林遣都、大阪時代の新聞記者に水野美紀帽子デザイナーの羽野晶紀、下宿のおばさんに三林京子。それぞれの登場人物の個性を丁寧に描き分けてとても印象に残っています。脚本家のインタビューです:

朝ドラ「スカーレット」最終回 喜美子と八郎「好きがこぼれてる」10年ぶり“敬語”再会シーンの秘話 | 文春オンライン

〇やすらぎの刻~道~(テレビ朝日

徹子の部屋」の後、倉本聰脚本で1年間連続ドラマの劇中劇「道」が25日『完』を迎えました(その2日後に最終回)。橋爪功風吹ジュンの90代半ばの老夫婦が、息子の一人の借金のため家屋敷田畑失って長男夫婦に引き取られることになり、最後の墓参りを済ませ、道に迷いながら何とか帰り道を辿る後ろ姿を映して終わりました。山梨県小野が沢を舞台に戦前、戦中、戦後を描いて見ごたえがありました。倉本さんの言いたいことをすべて言い終えて・・・という感じがしました。若いころを演じた風間俊介清野菜名のコンビも良かったです。戦後、大量生産、大量消費で山の暮らしが一変しますが、日本は本当にこれでよかったのか、便利になりすぎたのではないか・・・と屋根の上で徴兵忌避の自死を選んだ三平がそのままの姿で現れて二人に問いかけます。

娘や息子、孫を通して、日本の戦後のあらゆる問題を描き、東北大震災と福島の原発事故では津波で孫娘を失います。徴兵拒否で山へ逃げ込んだ鉄平の遺志を継いだ孫の炭焼きや蚕を飼って養蚕業を起こす夢も親が高齢者相手の詐欺で警察に捕まって全てはぶち壊される。惨憺たる家族の様子を描いて倉本聰さんは三平さんになって私たちに問いかけています、本当にこれでいいのか・・・。

テセウスの船(TBS)

22日の日曜日に拡大版で最終回を迎えましたが、期待が大きかったせいもあってかガッカリでした。毎回、父(鈴木亮平)と息子の心(竹内涼真)のやりとり、母(榮倉奈々)と子供たちの楽しい暮らしがどん底に落とされるのを、あんなにハラハラしながら見ていたのに、明かされる秘密がなぁ~んだという感じ。みきお(柴崎楓雅)が青酸カリを使ってまでたくさんの人を殺す理由が・・・最後の最後まで引っ張って、黒幕が逆恨みで・・・一寸それはないでしょというくらい拍子抜けでした。残念!

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〇その逆だったのが「シロでもクロでもない世界でパンダは笑う」(日本テレビ

タイトルからして見る気が削がれるドラマでしたが、これはダメかと思いつつ半分過ぎたあたりから徐々に面白くなって、二世代の役者(佐藤次郎横浜流星山口紗弥加清野菜名)の演技合戦にもなり、最終回は意外な展開になって終わり良ければあとは気にならないという感じに。最後まで突っ込みどころ満載でしたが、まさか直樹が自分自身に催眠をかけてパンダ(父親の復讐)の呪縛を解くため、リコを消しレンから直樹の記憶をそして自分の側でも一切の記憶を消してしまうとは。最後、記憶を失ったもの同士が喫茶店でパンケーキにシロップの直樹掛け、ふと視線が合っても他人同士というラストシーンがちょっと小粋でお洒落。

絶対零度~未然犯罪潜入捜査(フジテレビ)

これは最初の事件を起こした犯人の姉(水野美紀)と弟(高杉真宙)が、犯罪を未然に防ぐ組織を作る同じ思いで敵味方になって・・・という一寸複雑な物語になっていますが、リーダーの沢村一樹が熱演でしたし、一話一話も面白かった。仲間の横山裕、本田翼、水野美紀のアクションも。弟が施設を抜け出して以後、本田翼の前に現れるまでが謎でしたが・・・柄本明さん、こんな老人?が現役も謎?

〇知らなくてイイコト(日本テレビ

脚本の大石静さん、さすがの最終回でした。同じ時間で倍ぐらいの内容が詰まった最終回。そう簡単にめでたしめでたしで終わらせない。父親(小林薫)の殺人事件が実は無罪だという記事を書いた娘の雑誌記者・吉高由里子の原稿は没に。せめて父親にと届けた先でも父親は燃やしてしまう。実の息子の身代わりを最後まで貫く覚悟であり娘を認知しないのも殺人犯の娘にしないため。『知らなくていいこと』だと思い知る。一方、不倫の決着は意外にもカメラマンの柄本佑に子供を押し付けて妻は家出。子連れで一緒にならないかというプロポーズを吉高は断るも、思い通りにならなくなると「結婚しちゃうか」と言ったりする。今度は柄本に断られて・・・「最っ低男」の重岡くんが雑誌社を辞める時の捨て台詞どおり流行作家になって登場! 脚本の面白さはダントツでした。 

〇10の秘密(フジテレビ)

これも、毎回どうなるのか?と思いながらヒーローとは程遠い普通の建築会社の社員を演じた向井理に感情移入しながら見ました。渡部篤郎がなかなか敵か味方か、善か悪かの見分けがつかず、その境界線上でうまく立ち回る役が最後は魅力的でした。仲間由紀恵、自分の母子関係が娘との関係でも連鎖するのではという不安を持つ一寸キツくてエグイ女性を凛として演じて凄みがありました。

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🔲映画「12人の死にたい子どもたち」 

安楽死を望む12人の集いを描いた冲方丁(うぶかたとう)の原作を堤幸彦監督が映画化。12人の子供たち:杉咲花新田真剣佑北村匠海高杉真宙黒島結菜吉川愛萩原利久、淵野右登、坂東龍汰、古川琴音、竹内愛紗、橋本環奈。
 1月31日にテレビで放送がありました。原作を文庫本で読んでいましたので、どのように映画化されるか興味がありました。原作の内容が、映像で、より分かり易くなっていました。杉咲花と集いの仕掛け人の高杉真宙はピッタリの配役で好演。

🔲映画「いなくなれ、群青」

河野裕(こうのひろし)の原作を柳明菜監督が映画化。3月20日にディスク化されたので見ました。これも今年になってから原作を文庫本で読んでいました。階段島から出るきっかけになる小さなエピソードが省略されていましたが、その分、七草(横浜流星)と真辺(飯豊まりえ)の二人の関係に一層焦点があてられ、階段島の景色や空気が映像にシッカリ映されています。

映画は七草のモノローグで始まります。「ここは階段島と呼ばれる。島にはおよそ2000人が暮らしている。どうしてこの島にやってきたのか、知る人はいない。真辺由宇。この物語はどうしようもなく、彼女に出会った時から始まる」

悲観主義の高校生の七草は理想主義者の真辺が階段島にやってきたことが許せず、魔女と取引をして真辺を送り出すことに懸命になる。そのこと自体、七草がこの島にいる自分を自ら否定していることになる。なぜなら、階段島は自分自身によって捨てられた人格の一部がいる島だから。ミステリーですが幻想的でちょっと難解、そして究極のラブロマンスでも。モノローグの最後の一節が映画の最後にもう一度七草によって繰り返されますが同じトーンではない。七草はもう一人で島に着いた頃の七草ではない。青春の、思春期の自我の成長物語ですが、群像劇としても描かれていて、とても瑞々しい。

柳監督インタビュー:

横浜流星、素顔とのギャップと“気”をまとえる演技力とは? - 映画 Movie Walker

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