二月のお茶のお稽古

お部屋に入ると、まず、炭のいい香りがします。釜のお湯が湯気を立てて沸いています。
このお釜は炭火が見えない羽つきのお釜です。羽というのはお釜の周りの縁というか輪っかのようなものです。五徳にのせないで、縁に桐の木の「透き木(すきぎ)」というものを置いてそれに掛けます。それで「透き釜」と呼ぶそうです。3月に使うお釜で、4月には天井についている引っ掛け金具に鎖を掛けて「つり釜」にします。炭火が見えて、冬ほど炭を盛らないそうです。皆で、まあ〜なんて季節に敏感なんでしょう!と感心しました。

 座る場所に可愛い火鉢が置いてありますが、これは「手焙り(てあぶり)」というもの。
そういえば、片側はそっくり火鉢ですが、もう一方はフードを被ったような覆いがかかって、おおいの上に手を置くとほんのり暖めるられるようになっています。瓢(ひさご)の型が抜いてあるのは空気の通りをよくするため?かな。立杭の丹波焼きです。

お軸は「福臨笑門」と右から書いてある中国の書で、「笑う門には福来る」の意味。香合は中国製の陶器で梅にウグイスならぬ架空の鳥が描かれています。中国では朱肉を入れるのに使うらしいとのこと。お花は黒文字と蕾の椿。黒文字というお菓子をつまむお箸や楊枝に使う木がありますが、その木!初めて見ました。蕾がついています。

二重棚の上に乗せてある棗(なつめ)は「春の野」といって、三月、四月に使うもの。春の野草、つくし、すみれ、たんぽぽ、などが描かれています。秋の野草を描いたものと春秋一双で手に入れることもあるそうです。お薄茶を戴くお茶碗は、モミジと梅の柄で赤絵の秋春共用のものと、珍しい筒茶碗(写真中)。お茶が冷めにくい真冬用で絵柄は梅です。写真右はこれまた珍しい馬上杯の楽茶碗。お稲荷さんを表す宝珠が台に型抜きされていますので、初午茶碗で二月に用いるお茶碗。サーモンピンクのお茶碗に茶筅で泡立てた若草色のお茶が入ると本当に美しい色合になります。もう一つは、初釜の時に白湯(さゆ)を出されたのがお福さんの吸出しでしたが、あれの大きなもの。やはり全部飲み干さないと中に描かれたお福さんの顔が見えませんので、楽しいお茶碗です。これも二月のもの。二服戴きますので、私は梅の筒茶碗と楽の馬上杯でした。

市の施設にある茶室では、毎月お茶会が開かれていて、来月6日のお茶会は先生がお当番。
私たちも参加しますので、今日は、お茶会向けの特別のお稽古です。まずは、白足袋の代わりの白い靴下を用意する事と注意を受け、箱書きについて説明を受けました。待合では箱書きが置かれていて想像力を働かせて本番を楽しみにするそうです。
茶道具の箱入れの時の紐の結び方も教わりました。持ち出されたのは、先生が20年ほども前に手に入れたという立ち雛のお茶碗。二重に桐の箱に入っていて、中の箱の裏に「箱書き」がしてあります。これが値打ちなんだそうです。三月のお茶会で初めてお披露目されます。
お道具拝見の仕方も教わりましたが、茶杓の値打ちが一番高いんだそうです。物によっては1000万円もするモノもあると聞いてビックリ!! 値打ちの分らない者にはトンとわからぬ世界です。茶杓は茶筒に入れてあって、丸い茶筒の削られた一面に花押(かおう)があり、この面は手で触らないこと。その茶筒は桐の箱に入っています。
「即中斎」というのは先代の表(おもて)千家家元の千宗左さんのことです。
先月ハワイに行ってこられたNoさん、お稽古前に、お土産を頂きましたが、Naさんは、来月、息子さんの結婚式でハワイへ行かれます。そこで、先生からリクエスト。以前にプレゼントされたというココナツの実をくり抜いて作った器を見せながら、先生が言われるには、これより、大ぶりのがあれば、中を赤か黒に塗ってもらうと、お干菓子用の菓子鉢に最適なんだそうです。ここで、おさらいです。冬の主菓子(おもがし)の器は塗り物。夏は陶器。ただし、蒸し菓子は、塗りでは跡がつくので、冬でも陶器。しかし、香合は逆。陶器は冬用。なので、娘さんのベトナム土産の陶器のトンボ柄の小さい蓋モノ器は、9月(トンボ)なので、使えないとか。季節と器の取り合わせの細かい決め事がなかなか大変ですが、先生は、それが楽しいのよ〜と仰います。
Naさん、ハワイでココナツの実のよい器が見つかるといいですね〜