女たちの「原発ゼロ」アクション(3)

最後の三人目は、映画監督の鎌仲ひとみさん。記事の中の人物紹介では、「富山県生まれ。早稲田大学卒業後ドキュメンタリー制作の現場へ。カナダ、アメリカでの体験を踏まえて、おもにNHKで番組を多数監督。98年イラク取材を契機に自主制作へ」。
彼女の監督した作品が、山口県祝島(いわいしま)で原子力発電所建設に反対する住民の暮らしと、自然エネルギーの先進国スウェーデンを取材したドキュメンタリー映画ミツバチの羽音と地球の回転」。
この映画の自主上映運動が全国各地で広がっているといいます。

鎌仲ひとみさん(映画監督) いまこそミツバチの羽音をひろげよう


 核や原子力を扱った映画はこれが3本目です。「ヒバクシャー世界の終わりに」(03年)では、イラク、日本、アメリカなどで核の被害で苦しむ人たちのメッセージを届け、「六ヶ所村ラプソディー」(06年)では青森県六ヶ所村周辺で核燃料サイクル施設稼働をめぐる人たちの姿を追いました。
 瀬戸内海の小さな島・祝島を初めて訪れたのは07年、「六ヶ所村ラプソディー」の上映会でした。そこには上関(かみのせき)原発の建設に30年近くも反対している住民たちがいました。目の前の海を守る、海や山の恵みをいただいて暮らす生活を守るために結束してたたかっていたのです。


 日本の企業戦士たちは、長いものに巻かれろとか、企業のいうことは絶対とか、経済効率優先とか、そんな常識で生きている人が多いですよね。そうした親世代の価値観にうんざりして、いまの20代30代の人たちは生き方を模索してきました。だから映画を見て、信念をつらぬき暮らしを守る生き方を選んでいる祝島の人たちに心をうごかされるのだと思います。 映画は特に若い世代が自分達の町で上映してくれています。ただ見るだけではない動きも生まれています。

 これまでは、国策である原発推進に異議を唱えるものは排除する風潮がありましたが、徐々に市民が声をあげることがひろがっていると実感しますね。
 ぶんぶんは英語でbuzzbuzz communication=口コミとも掛けているんです。自分で考えて決断して、行動する市民になりましょう、それをみんなで語り合いましょうということです。ひとりひとりの「ぶんぶん」は小さいかもしれないけれど、「ぶんぶん」なしには民主主義はないと思うんです。


 福島であれだけの事故を起こしておいて、いまだに原発にしがみつく人々がいます。なぜでしょう。私たちが怒ってないから、怒り足りないからではないでしょうか。
 私たちは抑えつけられたり排除されたりして、力がないとかやっても無駄だと思わされてきました。力を取り戻すためには、つながりあうことです。何もかも同じ考えでなくてもいいので、エネルギーならエネルギーの問題で、地域でつながりあう。行政や政治ともきちんとパイプをもって戦略的に動いていく。そうやって草の根の民主主義をきずいていくべきときです。この映画の上映運動が民主主義のエクササイズになるといいなと思っています。


12年前に湾岸戦争後のイラクに行き、劣化ウラン弾によって白血病やがんになる子どもたちと出会うまでの私は、無自覚に電気をつけ、原発は安全だと思い、日本に原爆が落とされたことも自分には関係ないと思っていました。でも、たまたまイラクに行ったために、人生が変ってしまった。借金を抱えても自分の言葉で語れる自主制作のドキュメンタリーを作る道を選びました。放射能によって子どもがどれだけ傷つき、命を奪われるのかを知ってしまった以上、これ以上子どもを被曝で死なせたくないと思ったからです。


 世界で使われている自然エネルギーの技術は日本にもすでにあります。だから日本でもいったんやり始めたら普及は早いはずなのです。
 一方、日本で被曝しながら原発で働いている労働者は30万人。ドイツでは世界一の風力発電によって62万人の新しい雇用が生まれています。日本でも自然エネルギーにきりかえることで雇用も増やすことができる。
 祝島ではエネルギー自給100%をめざす取り組みが始まりました。小さな希望が大きな転換につながることを願っています。 


上関原発祝島の反対で実現していないことは、3・11以後の反原発関連の本を読んで知りました。鎌仲監督の以前の2本の作品も、見ていないし、作品の名前も存在も知らなかった。原発に関しては「推進」は湯水のようにシャワーのように受身でじっとしていても自然と身体に浴びていて、その自覚もないぐらいです。でも、逆に「反・脱原発」の情報は、意識的に自ら求めない限り与えられるものではないということがよくわかります。
落合恵子さんのメッセージにあった「知らされてない」ことが分るのも、「知ろうとする」行為を通してしか自覚できないわけです。その為には知っている人、新たに知った人からの働きかけ「知らせようとする」行為が鍵を握っています。小さな声をどのように束ねて大きな声にしていくかが相手を変える力の鍵。

一人ひとりが一歩踏み出して、署名に応じたり、署名を集めたり、デモに参加したり、誘ったり、が大切かなと思っています。
3人の女性、さすが、粘り強く、着実に、ゆるぎなく生きてこられています。
今度は反・脱原発の側が変るだけでなく相手を変えて、減・脱・反原発を実現し、少子化の日本の子どもたちを守らなければ。
3枚の写真は比良のピッツァcafe”季気HOUSE"のお庭
◎「さようなら原発1000万人署名」については:http://sayonara-nukes.org/shomei_faq/