日曜日(4日)の朝5時からNHKのEテレで、哲学者の梅原猛氏の番組があることをeireneさんのブログの予告で教えてもらって予約録画しました。<心の時代〜宗教・人生〜 シリーズ/私にとっての「3・11」>『86歳 新たな哲学に挑む』です。
「生き生き箕面通信」さんは日曜の朝(私時間の)にはもうブログの記事にされていました。それを読んで楽しみにしていましたが、やっと私も見終わりました。「生き生き」さんのブログでは内容が簡潔に紹介されていますのでコチラで:(http://blog.goo.ne.jp/ikiikimt/e/35f98b625b478bdc061feb1924cfbc86)
六甲にいた頃か箕面に来て直ぐの頃(35年ほど前)に、「水底の歌 柿本人麿論」と「隠された十字架 法隆寺論」をこの順番で読み一時期夢中になって、ゼミの恩師への年賀状にまで「読みました」と書いた覚えがあります。私にとっては哲学者というより歴史ロマンの作者として懐かしいお名前で番組を楽しみに見ました。少し聞き取りにくいところがあってメモが不正確かもしれませんが、番組内容を書いてみます。
聞き手は山田誠治さんで、京都は左京区の哲学の道に近いという梅原氏の自宅を訪ねてのインタビューです。
梅原氏は、生まれは仙台、母の里は被害のひどかった石巻、母方の祖父は昔、網元で、船が沈没したので家屋敷を投げ出して仙台へ出た。今回の大震災はだから他人事とは思えなかった。また復興構想会議の名誉議長であり、原発抜きの会議なら辞めると言って原発を取り上げる会議となった。菅さんが脱原発に変わったのも会議の功績の一つだと思うという梅原氏、4月の復興構想会議の第一回ではこう発言しました:「自然災害の地震・津波と、人災である原発、今回の大震災は文明災である」。石炭から石油、それで終わるかと思えば原子力に手を出した。安上がりのエネルギーだと思われたが、地球上にないものを作り出して生物に危険を与える。それを使う便利な生活・稚拙なものを使ってまで豊かな文明を続けたいかが問われている。
西洋哲学は17世紀、デカルトに始まった。世界で唯一確かなものは自分自身である、一方、目の前の自然は容易に数式に置き換えられ、人間が支配できると考えた。合理的にものを考え、人間中心。技術開発をして豊かにしてきたが、今、そのことの限界が来ている。
今度の震災でもわかるように本来自然は、凶暴な父であり慈悲の母である両面を持っている。その自然を西洋文明では奴隷の如く使ってきた。今回の震災は、その自然の怒り、自然に罰せられたように思う。私は、原発に関しては15年程前から反対してきた、しかし、どこかで黙認、はっきり反対できず、容認してきたところがあった。しかし、震災で、また、役目上、思い切って語ろうという気になった。
現代文明と環境問題 このまま続けていくと破壊は収まらず人類の存続も危ない。
人類を存続させるための考えが東洋の、日本文化の中にあるのではないか。
若いころの北海道アイヌ文化のフィールドワークで梅原さんは衝撃を受ける。アイヌ文化では魚や植物や動物、木の実などすべてを神の恵みととらえ、必要以上の収穫はしない。一本の木を切ると必ず接ぎ木をする。自然への感謝と畏敬で、自然と共存している。これは日本人の古来の考え方、縄文文化が残ったもので、狩猟採集世界は相当高い精神性と質の良い文化を持っている。
60歳を過ぎて世界各地の文明を旅することに。日本の外にも自然との共存の考えがあったことを知る。大きな転機は2008年のエジプトでのフィールドワーク。西洋文明の原点にも太陽や水を神として崇拝する思想があった。ラー(太陽神)とナイルの水が肥沃な小麦を育てた。日本での稲作と同じである。中国の長江にも、マヤ文明にもある。
自然科学は天動説から地動説に変わったが、哲学においては逆で原点回帰ではないか。
梅原さんは、3・11以後、今までにないくらい勉強したと言います。その原動力はと聞かれて、「戦争体験」と答えます。
66年前の20歳で、徴兵令が来た、86歳の今、2度目の徴兵令がきた感じ。20万人の犠牲の上に生きながらえてきた。この国難に少しでもお役に立てればと。戦争で生き残った自分に新たな文明の枠組みを考える義務があると考えた。
その新たな枠組みの中心にあるのが「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」である。
これは仏教の言葉で人間も自然の一部、地球の一部、という縄文以来の自然と共存する日本人の考えです。
今まで遠慮して言えなかったが、日本の哲学者は実は西洋哲学研究者であって、偽哲学。
「草木国土」とは、草や木や土も生きていて仏になる、地球上で生きているものは誰でも仏になるという考え。
日本の文化は自然中心。俳句も文学も、山水画も自然を写してきた。たとえば、伊藤若冲の絵の中には食物連鎖が描かれている。生あるものは滅びる。人間、植物、動物、鉱物、すべて滅びる、ゆえに、生は素晴らしい!と訴えている。
たとえば宮澤賢治の童話。植物にも動物にも物を言わせ感情を描いていて、イソップとは違う。
生き方を変えなければならないと考えている。科学技術が支配する世界から、自然と共存する科学にー脱原発に。
脱原発は必然的な方向だと思う。となると自然エネルギーということになる。自然=昔の地水火風に光です。(地熱・水力・火力・風力+太陽光)
アメリカのエコロジーは環境運動の一種で、文明批判までは行っていない。エコロジストは近代文明を批判していない。西洋人としては文明を批判することは大変なことだが、突き詰めれば批判に至る。新しい文明を作ったヨーロッパ人も気付き始めている。
自然エネルギーは金がかかると言われるが、本気ですれば人類の知恵で5分の1で入手できる可能性があるし、必死になれば20年先には可能だ。共生の思想、自然と人間、人間と人間の共生の思想、「草木国土悉皆成仏」でやればできる。
自然林のようなお庭の自宅は和辻哲郎旧邸→