新しい熱エネルギー利用とアメリカが後押しする原発再稼働(「日米協力イニシアチブ」)

音楽評論家の吉田秀和氏が98歳で亡くなられました。昨夜テレビでこのニュースが流れ、夫と私と息子とが三者三様の声をあげました。夫はクラシック音楽の基礎?を「吉田秀和100選」で聞き込んでいたし、私は夫に遅れること数十年で同じような体験をし、NHKの「名曲の楽しみ」も聞くようになっていました。息子は東京勤務だった時、鎌倉で吉田秀和氏を見たと言っていましたので、それ以前に吉田氏のことは知っていたのでしょう。
小林秀雄モーツアルトとともに、吉田秀和氏の評論は文学としても一時期楽しませていただきました。最後まで評論と水戸芸術館のお仕事をやっておられたのですね。最近は音楽とも音楽雑誌とも昔ほど親しんでいるわけでなく距離ができてしまいましたが、父よりも年長で現役だった吉田秀和氏は、私たちには特別の人でした・・・

ベルギーで開催されていたエリザベート王妃国際音楽コンクールで、27日未明発表のバイオリン部門、札幌市出身でパリ在住の成田達輝さん(20)が2位になりました。5月半ばに発表され、作曲部門でグランリを受賞した酒井健治さんの受賞曲が、成田さんを含むバイオリン部門の最終選考に残った12人の課題曲となっていたそうです。

さて、先週の木曜日のクローズアップ現代眠れる熱エネルギーを活用せよ」(http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3203.html)は排熱利用を取り上げていました。
風力とか地熱とか潮力とかは聞いたことがありますが、排熱というのははじめてでした。
電気を起こすと熱を生じますが今まで熱は捨てられていました。ところが、圧縮することによって高温を保ったまま再利用するコージェネレーションというシステムが開発されました。こうすると排熱を繰り返し利用できて、無駄な熱というのが無くなって、燃料の節約、炭酸ガスの排出削減もできるということでした。
これは既存の発電所(水力でも、火力でも)に設備を併設すれば効果的に熱を循環させられるそうです。
解説では、ドイツのエネルギー政策と比較して、日本の場合は旧来型、ドイツではエネルギー消費量を下げながらGDPを増やしています。エネルギー消費を抑えながら発展していくというのが今世紀型の発展ですが、日本は遅れています。
廃熱利用だけでなく地中熱利用は既に実用段階。スカイツリーを含む一帯の広域冷暖房に利用されているそうです。また、河川熱、海水熱もすでに利用されていて、下水熱利用も。技術的には完成されていて、あとの問題は政策ということでした。
日本は原発神話のせいで、安全面も自然エネルギーでも思考停止状態が続き、その結果が福島の原発事故。未だに最終処理方法が分からないという危険極まりない原発には見切りをつけて、こういった新たなエネルギー産業に方向転換してほしいものです。脱原発したところで、事故補償と事故収束、廃炉とまだまだどれだけ大金を注ぎ込まなければならないか・・・というのに。
ところが、日本の脱原発にとって、とても悪いことに、オバマ政権は日本の脱原発を喜ばず、再稼働の後押し、あるいは再稼働強要をしだしているようです。4月30日、ワシントンにてオバマ大統領と野田首相の会談後発表された合意文書について、日経新聞からです。
日経新聞の26日(日)の3面・「けいざい解読」コラムが指摘している内容が怖いです:

日米エネルギー連携 険しい道 天然ガス 渦巻く政治


 野田佳彦首相とオバマ米大統領が合意した「日米協力イニシアチブ」は、安全保障に加えエネルギーを巡る両国の連携強化に重心を置いた原子力発電の復興を軸に両国の協調関係を深めようとのうねりが生じているが、行く手は険しい。


 イニチアチブの目玉は、福島第一原発の除染や研究開発を手がける「2国間委員会」の設置だ。背景には、米国の極めて強い働きかけがある。
 「いかなる形でも支援する用意がある」。米エネルギー省(DOE)などは日本当局に、ほぼ全面停止状態に陥った原発の再稼働に向け、技術や人的支援の大幅な拡大を打診。再稼働に絡み、関係閣僚と地元自治体の折衝などを抱え慎重な日本の背中を押した


 オバマ政権は米電力の80%を2035年までに原発も含む低炭素の「クリーンエネルギー」に置き換える目標を掲げる。米電力供給の約2割を占める原発「依然として重要な電源の構成要素」(DOEのポネマン副長官)として、長期的に拡大を目指す方針を打ち出している。
 日立製作所ゼネラル・エレクトリック(GE)など複数の日米原子力連合が形成され、米の輸出と国内雇用を大きく左右しかねない事情もある。


東京電力に過重な補償責任を負わせれば、原発ビジネスが立ち行かなくなるのでは」。日本当局筋は複数の米政府高官に責められた日本の原発が衰退すれば米も共倒れになる相互依存の構図で、イニチアチブは米の焦りの裏返しでもある。   (つづく)

またぞろ、日本の政治の背後にアメリカの意向アリです。
野田政権、藤村官房長官が「再稼働は電力の需給と関係がない」と言ったのはコレが背景にあったからですね。沖縄と原発が根っ子のところで問題は同じというのもここにあります。脱原発を国民の大多数が望んだとして、現政権がアメリカの意向に刃向ってまで脱原発ができるのか。問いかけ自体が無駄というもの。現政権はそんな気は端(はな)からありません。
何時になったら、日本のことを日本人で決めることが出来るのか…。日本人が自分のことを自分で決めることが出来るようになるまで、私たちの「戦後」は終わらないとも言えます。

(つづき)
 一方、日本側の要請にもかかわらず、今回のイニシアチブでは明記されなかった項目がある。米から日本への天然ガス輸出の解禁だ
 日本は値段の高い原油の輸入を増やさざるを得なくなっており、政府はできるだけ廉価な天然ガスの調達ルートを広げたいのが本音だ。
 米ではシェール(頁岩=けつがん)層で形成される天然ガスの生産が猛烈な勢いで進む。市場価格も大きく下がっており、日本ハイニシアチブでガス輸出に一定の方向性を打ち出すよう米に再三要請した

 エネルギー業界は輸出解禁に前向きだが、大量のガスを使う化学大手ダウ・ケミカルなどが価格上昇を懸念して強く反対。明文化を見送る代わりに、首脳会談でオバマ氏が「検討している」と語ることで折り合った

 11月の大統領選を前に米の政治情勢も複雑だ。エネルギー族の大物、ワイデン上院議員オレゴン州)は「本格的なガス輸出開始には大きな疑問がある」と阻止の構えを強める。「大統領選後のエネルギー・天然資源委員会の有力委員長候補だけに、同氏の発言力は大きい」(日本側関係者)との声もある。
 ある米政府筋は「ルース駐日大使を窓口に、日米エネルギー安保の深化に向けた動きが加速している」と明かす。だが、消費税問題や大統領選で日米両首脳とも政策の指導力を充分発揮できない状況にあり、どこまで連携が前進するかは見通せない。(ワシントン=矢沢俊樹)   

アメリカにはアメリカの事情が、日本には日本の事情があって当然です。
日本が、昨年の3・11の世界最悪のレベル7の事故を起こし、事故そのものがまだ進行中で、被害の状態も良くわからない、その上放射能汚染の実態も良くわからない状況にあるということを説明して、とても原発再稼働は、安全性の問題もあり、国民感情としても受け入れ難い状況であることを訴えれば、世界は理解してくれるでしょう。地震頻発国に54基もあったこと自体、不思議だと言われてもいました。
ところが、ここにきて、アメリカでは、規制委員会でただ一人原発稼働に反対していたヤッコ委員長を辞任に追い込んだりして、昨年の福島原発事故当時と一年経った今とでは、風向きがおかしくなってきています。ガンダーセンさんも著書に書いていましたが、原発推進派の遣ることはどこの国でも同じです。脱原発の前に立ちはだかる力の大きさが不気味です。