健さんとオスプレイと「基地はなぜ沖縄に集中しているのか」

NHKでは土曜と日曜日、6年ぶりの映画「あなたへ」で主演した高倉健さんの密着取材とインタビューを「プロフェッショナル」の枠を越えて放送しました。81歳の高倉健さんが「年を重ねてみないと分らない」と語った内容には引きつけられました。87歳の俳優大滝秀治さんの「今日は久しぶりにきれいな海だった」(あってるかな?)という一言のセリフに平戸の漁師の万感の思いを感じて涙する健さんには少し驚きもしました。
月曜の番組は土曜の特集に重なる部分もありましたが、北野武さんが感じる「健さんの孤独」は孤高の存在であるという一面と同時に家族を持たないことと関係があるのではないかと思いました。家族があって子どもがあれば血筋は伝わりますし思いも繋がります。それのない人は老い先を考えると健さんのように若い人たちに伝えていきたいという風に思うのも当然ですし、孤独の影が漂うのも当然という感じがします。日本にはそういう人たちが我が息子たちも含めてこれから増えていくのだな〜と思い、今より15年ほども前に村上龍氏が「寂しい日本人」といった言葉を思い出しました。
ところで、健さんの口からアメリカ映画の「ディアハンター」がスゴイ映画!として名前がでました。これはとても嬉しかった!
ベトナム戦争が終わって3年後にこんな反戦映画が出来た」と健さんアメリカ映画の凄さを語っておられましたが、私はそれよりず〜〜と遅れてテレビで見て、しばらく抜け出ることが出来ないほど感動しました。アメリカの青年群像をベトナム戦争を挟んで叙事詩のように抒情的に描いた名作。音楽ともどもベトナムでのロシアンルーレットや病院のシーン、アメリカでの鹿狩りや結婚式のシーン、そして生き残った者たちがアメリカ国家を歌う最後のシーンなど忘れられない映画です。健さんが仰ったように本当に映画で時代をここまで描けるのだ、映画でこういうことが出来るのだと、映画賛歌になってしまいます。
そうそう、日曜の番組で「プロフェッショナルとは?」と問われた高倉健さんの答えは一言「生業(なりわい)」でした。それで”飯を食ってる”ということよねと夫と二人で納得でした。

◎ところで、総裁候補、代表候補騒ぎに、大阪維新が日本維新に変身している間に、ロンドンのパラリンピックは9日夜で終わってしまいました。ニュースで活躍ぶりを見るくらいしかできなかったのですが、「日本勢のメダル獲得数は金5、銀3、銅6の計16個で23位。1位は中国の231個。日本は北京大会の27個には届かなかった。」
車いすテニス男子シングルスで国枝慎吾選手(28)のストレート勝、北京大会に次いでテニス史上初の2大会連覇の金メダル! 
陸上男子車いすで、伊藤智也選手[49]が、400,800に次いで200メートルでも銀メダル!でした。

さて、9日(日)午後、沖縄では新型輸送機MV22オスプレイ普天間飛行場宜野湾市)配備に反対する県民大会が宜野湾海浜公園を主会場に開かれ、「安全性が確認できないオスプレイは到底容認できない」として、日米両政府に配備計画の撤回と普天間飛行場の閉鎖・撤去を求める決議を採択した。
大会は同時開催の離党の石垣市宮古島市両会場合わせて10万3000人(主催者発表)が参加。県内全41市町村の首長、議長が出席(代理出席含む)した。」(讀賣10日夕刊より)
「米海兵隊が沖縄への配備を予定しているオスプレイが6日夕、米南部ノースカロライナ州ジャクソンビルの市街地に緊急着陸、けが人はなく、機体の損傷もなかったと地元紙『ジャクソンビルデイリーニューズ』が伝えた。同紙によると、機体の異常を示す警告灯がともり、『予防的措置』として約5キロ離れた空き地に緊急着陸した。同機から煙が出ていたとの目撃証言があるという。
オスプレイは今年4月にモロッコで、6月には空軍の同型機が米フロリダ州で墜落事故を起こしている。ニューリバー基地所属のオスプレイを巡っては、7月にも訓練飛行中に緊急着陸するトラブルがあった。沖縄県では墜落事故などを懸念する声があがっており、9日には配備に反対する県民大会が開かれる予定だ。」(同8日夕刊)
政府官房長官の記者会見では、「事故を避けるためで、事故とは聞いていない」。
さて、沖縄問題では、「松岡正剛の千夜千冊」で8月31日付で紹介されている本「基地はなぜ沖縄に集中しているのか」(NHK出版)がありますので、そちらから一部コピーを:

「基地はなぜ沖縄に集中しているのか」(NHK出版) 
シーン1。民間から防衛大臣となった森本敏は、もはや決定的になっている海兵隊オスプレイ普天間基地配置をめぐって、沖縄県知事以下から次々に肘鉄を食らわされた。
シーン2。岩国でも各地でも反対がおこった。
シーン3。これからオスプレイの10月発進に向けて、他県の首長や住民からの反対運動が激昂していくことは目に見えている。
シーン4。反対運動はオスプレイの安全性に対する疑問に発している。
シーン5。2005年から運用が開始されたオスプレイV22は、ベル・ヘリコプター社とボーイング・バートル社が共同開発した高速軍用ヘリコプターで、ローターと固定翼を融合している。最高速度は550キロが出て、STOL(一挙的離陸)ができる。
シーン6。ただし、4回の事故をおこしたことが知られている。
シーン7。アメリ国防省オスプレイの安全性に対する理解が確認されないかぎり、ただちに配備はしないという談話を発表しているが、こんな議論で埒があくはずがない。
シーン8。が、問題はオスプレイの安全性にあるのではない。オスプレイを活用するのは沖縄の海兵隊であって、問題はその海兵隊が日本を発進基地にしたオスプレイに乗って何をするかということにある。
シーン9。沖縄には230平方キロの米軍基地があり、海兵隊の基地はその76パーセントに達する。33の米軍施設のうち、海兵隊が15施設をもっている。
シーン10。沖縄には25000人ほどの米軍兵士がいて、そのうち海兵隊は60パーセント以上を占める。全米の海兵隊は約20万人だが、主力部隊の機動展開部隊が常駐しているのは沖縄だけである
シーン11。あとはアメリカ本土の東海岸と西海岸にいる。沖縄における海兵隊の比重はそうとうに大きい
シーン12。沖縄になぜこれほど強力な海兵隊の拠点があるかといえば、戦略地理的に重要だとみなされているからだ。
シーン13。何が戦略地理的なのか。
シーン14。本書はこのことを浮上させていったNHKスペシャル「シリーズ日米安保50年」プロジェクトから切り出した一冊だった。いろいろ教えられた。
シーン15。ちなみに今夜は、次のことも銘記しておきたい。
シーン16。二カ月前に北方二島にロシアの首相がこれみよがしに訪れて、三週間前には竹島に韓国大統領の一行が乗り入れて記念撮影をし、二週間前には尖閣列島に中国の活動家たちが海上保安庁の制止を振り切って上陸したということだ。
シーン17。これらの島もまた、戦略地理的に際立つところだ。しかし日本政府は沖縄も北方列島も竹島尖閣列島も、日本にとってのコマンディング・ハイツだとは説明していない。そこをどうするかということも、銘記しておかなければならない。
シーン18。さて、沖縄問題をさかのぼると琉球時代や島津の動向をべつにすれば、結局は日本の敗戦と連合国を代表したアメリカの日本列島占領にすべての発端があったということになる
  (と、こういう調子で100シーンまでの全文はコチラで:http://1000ya.isis.ne.jp/1481.html