1月のお茶のお稽古


今年初めてのお稽古日を迎えました。夕方から雨が降るという予報で折り畳み傘をバッグに入れて出ました。
先生のお宅へ着いて、ガレージには車がなかったので、玄関先に置いてある信楽の狸をゆっくり見ることに。ぶんぶく茶釜のタヌキ、その横に大福帳を持ったタヌキ、玄関脇には徳利を持った大タヌキ。ぶんぶくと大タヌキの谷間に何やらカップルで並んでいるのもよく見るとタヌキ?ご挨拶を済ましてから、「ごめんくださ〜い」でした。

お二人が来られるまでの間、床の間を拝見。掛け軸とお花・・・松が活けてあります。先生によりますと、これはお茶の生け方ではなくて、お茶とお花のお正月ということです。お茶の席の場合は、もっと控え目の紅白の蕾の椿だとか、柳を活けたりするそうです。先生は未生流のお花の先生でもありますので、未生流のお正月飾りが置いてあります。金銀の水引も、本当だと15日を過ぎるとはずすそうです。香合は京焼で扇面に華やかでお目出度い松竹梅を描いたものが紅白の敷紙の上においてあります。お軸は「彩鳳舞丹宵」、「彩鳳(さいほう)、丹宵(たんしょう)に舞う」と読むそうです。彩り鮮やかな鳳凰が、これまた華やかな朱に染まる宵の空に舞うという情景でも思い浮かべればよいのでしょうか。

お棚は少し大ぶりの黒漆が艶やかに光っている高麗卓(こうらいじょく)と呼ばれる棚。当然木製かと思っていたら先生から「一貫張りで軽いのよ〜」という意外な言葉。棚なのに一貫張り?とは不思議です。黒漆の上に金彩で松を描いた棗(なつめ)が飾ってあります。水差しは薄いブルーの上品な色で繊細な風景が描いてある陶器で砥部焼だそうです。そういえば蓋と身が一続きの絵で繋がって描かれている水差しは初めてです。このふっくらとした形は芋頭(いもがしら)と呼ばれる形。
さて、お点前の順番は私が最初ということに。水屋に入って仕組み茶碗を準備して、お茶碗を選びます。松に金彩が施してあるお目出度い柄のお茶碗と、珍しい白地の大ぶりな無地のお茶碗を選びました。ここで私が失敗です。後から教わったのですが、絵柄の入ったお茶碗と無地のお茶碗では無地のお茶碗の方が格が上なので、先に使うのは白い方だったというのです。2服点てた後で教わりました。楽焼きのお茶碗の赤楽とか黒楽が代表的な無地のお茶碗ですが、私が選んだのは萩焼のものに黒い貫入が全面に入ったもので鬼萩というそうです。(粗い砂を入れた土の土台が白い釉薬の貫入越しに黒く見えるのを鬼萩と呼ぶらしい)
年を越して初めてのお茶のトップバッターで出来るかしら?でしたが、袱紗で棗の上を拭く時、左手でやってしまったのは大失敗でした。お茶は右手が優先ですので、それだけでも大間違い。どうしてそうなったのか?・・・注意、注意。N2さんがビックリして大笑いしていました。
最後に水差しから水を汲み足して、柄杓返しをして、棚に柄杓を飾ります。私が選んだ蓋置は白地に松の形が繰り抜いてある陶器で「雪松」と呼ばれるもの。繰り抜いた穴を通して中に塗ってある緑色が見えるようになっています。「京焼の大したものじゃないけど・・・」と先生、「アイディアがいいですね」と私。N2さんがお点前の時には、最後の飾り置きで、この雪松の蓋置を下の段の片隅に置く初めての変わった置き方でした。こんな置き方も大ぶりの棚だからできるのだとか。
主菓子は先生手づくりの花びら餅。ゴボウが甘くて美味しかったです。(表の場合お正月のお菓子は薯蕷饅頭のような白いお菓子の上に緑の松が描かれた”常盤の松”と決まっていて虎屋さんが作っているそうです。先生は手作りですので、お正月のお菓子だけはお裏さん式で)。二人が終わって、次はN1さんの立礼式に移りますのでここで先生が炭を片付けます。
菊炭(きくずみ)が真っ赤になって火箸の先でカラカラと乾いた音を立てています。先日ニュースで池田の菊炭の後継者不足が取り上げられていましたが、作っていればお茶の関係の方からは求められるので需要は十分あるのでしょう…という話になったのですが、先生の仰るには、最近公共施設で作られる茶室には炉が切ってあっても消防法に引っかかるとかでコンセントがついていて電気コンロでやるところが増えているそうです。そういうところでお茶を習えば、炭についての作法や知識はゼロということになります。

炭櫃にはいろんな道具が入っています。真っ赤になった墨を火箸で消壺に入れて、炭のかけらが残る炉の上を白い紙で作った屋根を二つ合わせて覆います。助炭(じょたん)というそうで、 炭火が永く保つように炉の上にかぶせておく道具です。 木の部分は桐、丈夫な和紙が貼ってあります。炭の扱い方は炭手前(すみてまえ)という作法があります。
炭のついでに、今日は可愛い手焙りの火鉢が出ていました。背中に瓢型(ひさご型=ひょうたん型)の型抜きがしてあって、ドームになっているところに手を当てて暖を取ります。
立礼式に使う漆塗りの扇形のテーブルの上には、これまた漆に金彩で豪華な鳳凰を描いた手桶の形をした水差が置いてあります。ここで先生からご注意です。この桶には足が3本ついています。足は正面が1本で、後ろに2本が正式です。今日は炉ですが、風炉釜の場合は風炉の足が1本正面に向いて置いてありますので、この桶を水差しに使う場合は、重なることを避けますので、足2本を前に置くというのです。ややこしいですが、そういうものなんだそうです。鳳凰の柄が蓋と身にかなり大きく描かれて孔雀の羽のような羽の先は丸い模様が入っていて螺鈿(らでん)がキラリと輝くという見事なもので、とってもお目出度いものです。そこで、鳳凰と言えば、お軸にも鳳凰の言葉が使われていますので、今日はここまでで、3つ(ぎりぎりOKの時も)、4つと重ねては使わないということです。合わせる妙とずらす妙ということです。
さて、この蓋が中割れで真中で二つに分かれています。正面の真ん中を摘まんで手前に引っ張ってもはずれないように細工されています。知らなければ引っ張っているところです。先生がどちらか一方を斜め上に上げてから手前に引くと外れるとアドヴァイス。その通りすると上手に外れますので三手で蓋を立てかけます。
私が使ったお茶碗はそのあとお二人とも使われなかったので写真には撮れず、京焼のお茶碗を写真に撮りました。

右端のお茶碗の柄は三角ですが、この三角は今年の干支の蛇のウロコを表すのだそうす。巳年は蛇ということでお茶碗の柄としては気持ちが悪いので三角のものが巳年は良く出ているそうです。そういえば歌舞伎の舞台で見たことがあるとネットで調べると:古来より三角の形は魔物や病を示すとも言われ、能や歌舞伎の衣装では鬼女や蛇の化身を表す文様ですが、「鬼瓦」然り、転じてこの鱗の文様も「魔除け」や 「厄除け」の意味で使われます。「鱗」と言っても魚ではなく龍や大蛇の鱗を表し、家紋やお守り、着物などにも見られる文様です。
巳年と言えば控えの間に飾ってある蛇の絵のお盆が話題に。
先生のご主人が生前、金沢で仕事の関係でお付き合いがあったという奥田瑛二さんに描いてもらったものをお盆にしたということでした。
奥田瑛二さんと言えば、今年の大河ドラマ「八重の桜」の初回で佐久間象山を演じていました。
象山先生、なかなか良かったですが、その奥田瑛二さん、絵もお上手なんですね〜、みんなで感心して見ました。12年前の作品で、尾が直角に上に向かう右横に「瑛二」と名前がありました。真中は印です。2月のお稽古日を決めて1月のお稽古は終わり。雨は降らずに帰ることが出来ました。