2年前の幻の遮水壁計画(8/31報道特集より)

先日録画したものをチェックしていたら8月31日の報道特集が残っていました。見てみると、これは記録しておいた方が良いと思ってメモしてみます。
TBS報道特集原発の汚染水対策、なぜ後手にまわったか? 幻の遮水壁計画/漁師の怒り」(8月31日土曜日)より
金平キャスター「取材で実は2年前に汚染水の流出を防ぐ抜本的な計画が作成され公表直前にまで至っていたことが判った。なぜこの計画が葬られまぼろしの計画となってしまったのか?」
新たなタンクの汚染水漏れに加えて2年間の間に流出した地下水は1日300トン、これまで海に流出したのは30兆ベクレルと言われています。
元々、高台を削って造成したので、山から絶えず地下水が海に向かっている。
2年半前の東北大震災の2週間後に総理補佐官に任命され放射線の遮蔽プロジェクトを担当した馬淵澄夫衆院議員に聞く
馬淵氏が中心となった案とは?
馬淵氏「原発建屋の四方を囲み中の水を抜いて表面処理をして封じ込めてしまう。これが唯一の手だと。費用は1000億円、工期は2年あればできるだろう。」
馬淵氏とは別のルートから入手したという東京電力の当時の計画書(日付けは平成23年6月13日)で、翌日が記者発表の予定だった。:「後追いにならない備え」と明記された資料には、遮水壁の全容がかかれている。1号機から4号機を取り囲むように、スラリーと呼ばれる粘土質の材料を使った地下の壁を設置し、深さは水を通さない岩盤層のある地下まで、およそ30m。海側には鋼管による壁を作り二重に防御する。この図を今回の凍土方式による遮水壁の図と比べて見ると驚くほど似ている。
馬淵氏「どこに壁を作るかという境界の確認を吉田(当時)所長らと一緒にやった」
6月11日の段階で確実に一歩進んでいた。記者発表の3日前まで順調に進んでいた計画が、なぜ実現できなかったのか。

金平「何があったのですか?」馬淵氏「巻き返しをはかられてヒックリ返されたと思います」「どこからの巻き返しですか?」「当初から、この案に対して消極的だったのは東京電力です。記者発表を当初13、14日に準備していたが、6月28日に東京電力株主総会が開かれる、その総会に向けて新たな債務が発生するという発表を避けたいという意向が強く働いたようです」
1000億円に上る工事費用を計上すれば債務超過に陥りかねないと東電はおそれたのだという。さらに馬淵氏は現在進めらようしている計画に対して驚くべき証言をした。
馬淵氏「この凍土遮水壁、凍結バリアについては汚染範囲が狭いところでは効果的であるが・・・ということで、選択肢から落とした
凍土方式は2年前にも検討されたが、しかし効果が限定的だとして採用されなかったというのだ。

馬淵案の記者発表が見送られた後、事態は急展開した。わずか2週間後の6月27日、馬淵氏は更迭され総理官邸を去った。
それから4か月後の2011年10月26日、東電が行った発表(プレスリリース)内容は、海側の遮水壁設置を先行して行うというものだった。馬淵氏が主張していた陸側の遮水壁については「総合的な評価を行った結果、現時点においては陸側遮水壁はむしろ設置すべきではなく、海側遮水壁のみで対応することが適当であると結論に至りました。」馬淵案が幻となった瞬間である
「2年前のこんな早い時期に抜本的な汚染水対策が出来ていて、あの時着手していれば・・・」「終わってます!」「今の事態は・・・」「ないです! まー私も言い続けてきました。けれども、残念ながら覆ることはなかったですからね〜」。


8月30日(この番組の前日)東京電力本店での原子力定例会見が17時からあった。
平氏発言「2011年6月時点で当時の統合対策本部が原発建屋とタービン建屋を四方から取り囲む遮水壁の建設工事プランが公表寸前の段階まで進んでいたことを私どもで把握しました。なぜ実現しなかったのでしょうか?」
東電尾野昌之原子力立地本部長代理「四方を囲むとタービン建屋近辺の地下水位が下がり、下り方がコントロールできないと、タービン建屋の汚染水が外に出ていくことを止める手段がなくなってしまう」
金平「しかし、今回の案も同じように建屋を囲む方式だが」
東電「凍土方式の場合は地下水を通す冷凍管だけを設置する。冷却を始めて、海側と山側と同時に周りが凍り始めて、遮水壁が出来上がる。出来上がった所で事態が急変しない」
金平「債務超過や経営基盤的な判断から馬淵案を採用しないという判断がなされるということはまるでなかったということですか?」
東電「そう考えておりますし、我々の当時の判断ということについてはお示しさして戴いてプレスリリースを出しているかと思います。

<漁師の怒り=割愛>

金平「補っておきますと、馬淵案は技術的評価によって採用しなかったんで、債務超過を避けたという指摘は当たらないと全面否定していたが、私たちの取材した中では、東電経営陣(具体的な名前も挙げていたんですが)が債務超過になることを懸念していると明確に反対したんだと、それ故に、仮に記者会見で公表する場合は、着工の時期とか工期とか費用は一切不明だと答えるようにというマニュアルもあったと証言しています。ま、仮に債務超過を理由に抜本的な汚染水対策が先送りされたとすれば、一体この2年5か月は何だったんだというやりきれない思いが残ります。」

東京電力という会社は当時の社長をはじめ福島第一原発事故の直接の責任者達は皆退職金を貰って今は家族で皆海外にいるとか。これだけの事故を起こしておきながら、お咎めなしです。訴えられても、五輪騒ぎのスキに福島地検を東京に移してその日のうちに全員不起訴処分です。そのうえ、その後の事故処理についても会社の利益優先です。抜本的な対策にかかる費用をケチって、計画自体をなきものにする。こんな会社、残しておく事自体間違いです。東電の破たん処理は、福島原発事故の事故処理の大きな一角ではないでしょうか。ぜひ、政府は本腰を入れて処理に踏み切ってほしいと思いますが・・・

◎◎お知らせ
小学校の同窓仲間からの案内です。9月16日(月)NHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」(夜10時〜)で、ロシナンテス(特定非営利法人)理事長川原尚行氏が取り上げられます。案内を送ってくれた同窓生のO氏は卒業後九州へ。小倉高校の後輩の活躍を時々こうやって知らせてくださる後輩思い。川原氏は外務省を辞職し、アフリカ・スーダンで8年前より医療支援活動等を開始。現在はスーダンと東北(宮城県)で活動しています、とのことです。お時間のある方、関心のある方はNHK月曜夜10時をお忘れなく。