「焼き場に立つ少年」”


昨日は買い物に出たついでにお団子を買ってきました。
3時少し前、母が「お父さんがやりたいものがあるから来てほしいんだって」と声をかけてくれました。
何だろうと思いながら隣の応接間に行くと、コインコレクションの箱です。父がコインのコレクションをしていたのは知っていました。母が言うには、昔、石橋のコイン屋さんで退職記念にコインを整理するアルバムを買ったとのこと。母が、「お父さん、あのコレクション、売ったらお小遣いになるけど、どうする?」と言ったら、父は、「・・・(わたしの名前)にやるんや」と言ったそうです。

「そうなの、お父さん、ありがとう。じゃ、私も売るわけにはいかないわね〜」と私。そして、母が、古い計算機があるんだけど〜と。
昔、家に置いていた娘時代に使っていたアンダーウッドのタイプライターを私が捨てて後悔したことがあるので、今回は、引き取ることにしました。ついでに、買ってきたお団子があるので、「お茶にしない?」と誘って我が家で3時のお茶にすることに。
コインの箱の中には、私たちの神戸時代の住所で夫宛の封筒があって、中にはタイの紙幣と外国コインが入っていました。
封筒の差出人は印刷された字で研究社出版株式会社とあり、押してあるハンコは「時事英語研究編集部」になっています。夫が転職前後に勉強していた商業英語(コレポン)のやり取りと関係がある封筒です。
懐かしい40年ほど前の封筒です。夫はあの頃必死に勉強したコレポンの原稿は全部残していて、そのファイルを持ってきて見せてくれました。両親もビックリです。「偉いね〜、すぐ取り出してこれるのがすごい! ちゃんと整理してはるんやね〜」と母は整理の良さに感心です。きっと父がコインを集めているというので海外出張で余ったコインと紙幣を手元の封筒に入れて渡したのがそのまま残っていたのですね。おかげさまで4人で40年前の話になりました。お団子を食べて両親に「ごゆっくり」と言い置いて、夫はファイルを手に自分の部屋に戻っていきました。
3人で話しているとテレビの「ちちんぷいぷい」(毎日放送)では敗戦前日のためか戦争の体験を特集しています。母が「なんであんな戦争をしたんやろうね〜」と言いながら父に、「お父さんはあの天皇陛下のムニャムニャムニャ(玉音放送)はどこで聞いた?」と聞いています。熱海の療養所に入っていたと聞いていたので私が「熱海よね〜」と。父も「熱海や」と。母が話し始めました。「福井の空襲を終えたB29がブルン〜ブルン〜という独特の低音のプロベラ音をたてながら大聖寺の父の実家の二階の真上を飛んでいった。1歳の私を抱えて小さくなって怯(おび)えながらやり過ごしていた時のあの気味の悪い音が今でも耳元に残っている」。金沢方面に飛んで行ったけど金沢には落とさず富山を襲ったのだそうです。お父さんがこのまま帰って来なかったら父の実家を出て私を抱えて一人で生きていく覚悟をしていたとか。初めて聞く母の戦争体験でした。

そこで私はパソコンを取り出して、昨日のブログの「焼き場に立つ少年」の写真を両親に見せて、文章を読みました。
二人とも初めて見る写真だったようで見入っていました。母が、「どこ? 長崎?」。「どうしたんやろうね〜親に行って来いと言われたのかしら、親もいないのかもね〜かわいそうに」「戦争はアカン、戦争だけはやったらアカン。何でやったんやろうね〜 言論の自由も無くて」「戦争反対なんて言えなかった・・・」「ん〜とんでもない!」「でも安倍さんは、また戦争の道を辿ってるよ」「そんなことないでしょ」「武器を輸出したり、憲法解釈を変えたり・・・」「そんなことないでしょ」「読売新聞を読んでいると分らないけど、他の新聞は批判しているよ。読売は昔の新聞と同じで、安倍政権の言うことそのまま賛成で報道しているけど・・・」「そう〜、なんでやろう〜 読売新聞だけ読んでたらアカンね〜」「そうよ。そのせいかは分らないけど、讀賣、読者数が減っているって」「そう、これ(「ちちんぷいぷい」)は毎日放送やね〜」「そう」と私。
やっと言えました。前から読売新聞愛読者の母にちょっと気を付けてほしいと言いたかったのですが、なかなか受け入れてもらえそうな気がしなくて機会を逸していました。今日はあの少年の写真のお蔭で話が出来ました。戦争はダメ、戦争だけは二度とやってはダメと思っている母は、今どき戦争への道をなんて考える人はいないと思っていますので、安倍政権がアブナイ・・・なんてことはあり得ないと思い込んでいます。讀賣の論調をそのまま信じ込んでいるのでは母の本当の思いは裏切られてしまうと心配していました。何時か言わなきゃと思っていたのですが…写真のお蔭です。この少年のお蔭です。(少年の写真:http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140814/1407968115
(上の写真は、今朝小雨の中で咲きだしたベラドンナリリー、下は差し芽で一株増やした木立性ベゴニアのツボミ)