開戦前夜の反軍演説(NHK/BS「英雄たちの選択」)<1>

◎12月7日の「森の中の畑は森か」さんのブログ「 歴史に学び、歴史になる」の中で、NHK・BSの番組で政治家斉藤隆夫の反軍演説を取り上げた番組の再放送を教えて頂きました。
録画して見た番組は今の日本の政治状況の中でとても考えさせられる内容でした。まずあの戦争突入直前に斉藤隆夫という政治家がいて、質問という形で戦前の国会で堂々と反軍演説を軍部に向かって行ったという事実、そして、国会除名処分を受けながらも直後の選挙でトップ当選させた支持者がいたということ。戦後は政治家として再スタート、吉田・片山内閣閣僚として日本再建に貢献されたということ。これらの事実をまず知ることも大事だと思いましたし、番組のゲストコメンテーターたちの皆さんの斉藤隆夫のとらえ方にも学べるところがたくさんあると思いましたので、書き起こしに取り掛かることに。以下参照お薦めブログを:

☆◎12月 12日 NHKBSプレミアム英雄たちの選択「開戦前夜!政治家 斎藤隆夫の挑戦〜命をかけた名演説〜」http://www4.nhk.or.jp/heroes/x/2014-12-12/10/25179/

☆12月7日「歴史に学び、歴史になる」:
http://d.hatena.ne.jp/narumasa_2929/20141207
☆12月6日「 斎藤隆夫 こんな政治家がいれば・・・
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20141206

◎それでは、なるべく忠実にと思っていますが、いつものように私なりの書き起こしです。

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英雄たちの選択


昭和16年(1941)12月8日:太平洋戦争開戦突入。そのわずか1年前の昭和15年(1940)帝国議会は軍部の強い影響下にあった。その強力な権力をふるう軍部の前に立ちふさがった国会議員がいた。斉藤隆夫(1870〜1949)である。
斉藤はこれまでも軍部の政治介入を鋭くついてきた。当時厳しく追及したのは開戦からすでに2年半に及ぶ日中戦争の早期解決だった。日本は中国軍の強力な抵抗に遭い戦争は泥沼化していた。国家予算の4分の3が軍事費に当てられ国民の生活は疲弊していた。多くの政治家が沈黙する中斉藤隆夫に軍部追求の期待が高まった。
斉藤のもとには「横暴ナル軍閥を葬り立憲政治ヲ確立セヨ」、「何故に沈黙するか」と葉書がたくさん寄せられた。
「大陸での戦争に当たりわが国民がすでに払いたる犠牲はすでに絶大である。しかるに政府も軍部も戦争の見通しすら明らかにしない。帝国議会で質問演説を行うべきではないか」。

言論で軍部に立ち向かった斉藤隆夫に各界の専門家が迫る。
【司会】磯田道史(歴史家),渡邊佐和子,【出演】井上寿一歴史学者),大橋昭夫(弁護士),萱野稔人(哲学者),筒井清忠(歴史社会学者)


開戦前夜! 政治家 斎藤隆夫の挑戦〜命をかけた名演説〜


司会の渡邉佐和子:1940年の「反軍演説」を国会で行った政治家斉藤。軍部や政権を批判した演説なんですが、斉藤という人物を知らない人が多い・・・
司会の磯田道史静岡文化芸術大学教授. 主な著書に「武士の家計簿」「無私の日本人」など):
そうですね。斉藤が知られていなくて、斉藤のことを考えないから、ひょっとしたら日本の政治、政治家、政党とかがなかなか良くならないんじゃないかなという気がするほどです。
私は斉藤という政治家がいたということは、大げさに言うと日本が信じられる根拠のひとつなんですよ。やぁ〜よく一人、こんな人がいてくれたと実は私は思っている。
国家が国民に対して無責任なことをやろうとした時に、ハッキリ理詰めで、これはおかしいと真っ当なことを言うのが代議士の役目だとはっきり思う。それをやった人だろうと僕は思っている。多分、日本史上の記念碑的な人物ではないかというので取り上げてみようと・・・

筒井清忠(歴史社会学者. 帝京大学教授、大正から昭和の政治、社会、文化状況を研究. 著書に「二・二六事件青年将校」など):
斉藤隆夫は昭和史の中で最も尊敬する人物です。筋金入りの自由主義者。日本では左と右の急進主義が人気があったなか一貫して自由主義者で変わらなかった数少ない人物で心から尊敬する。

大橋昭雄(弁護士. 弁護士活動のかたわら近代日本政治史を研究. 著書「斉藤隆夫 立憲政治家の誕生と軌跡」など):
斉藤隆夫というと政治家の側面が強いが、もともと生粋の弁護士。私ども弁護士法一条に基本的人権の擁護と社会正義の確立が弁護士の使命と謳われています。戦前はどうだったかというと、明治憲法下、今のような弁護士法は無いわけですが、しかし、斉藤は特に若い時代から国民に人権思想が根付かなければ民主主義の発展はありえない、やはり立憲政治、国民が政治の主人公だと確信があってその後の政治活動に繋がった人物だと思っている。

萱野稔人(哲学者. 津田塾大学教授、政治、経済、文化まで幅広く論じ、思想界にあらたなトレンドをつくる. 著書に「国家とはなにか」など):
危機のこの時代に政治家の責務というのが問われたなかで、職業として政治を行うということがどういうことかを体現しているのが斉藤隆夫。

井上寿一歴史学者. 学習院大学学長、日本政治外交史が専門. 斉藤隆夫の日記を精読。著書「第一次世界大戦と日本」など):
言論が政治を動かす. このことに大変な信頼を持ち続けた人物。又、国民の共感を呼ぶような政治的な言葉を発信しつづけた政治家でもあると思う。議会政治家の模範的な存在ですね。(つづく)