売れる「21世紀の資本」とピケティ氏の勲章辞退

◎今や主婦でも知っている噂の経済本、トマ・ピケティ「21世紀の資本」。内容は、いまや資本主義経済の行きつくところは世界中の資本主義国家での富の集中、格差の拡大であり、この問題が焦眉の問題として解決されなければならないという事が書かれているらしい。和訳本が出て、6000円近くする本が良く売れているそうです。


 最近、幾つかの書店を覗いて見たが、ピケティの「21世紀の資本」(税込み5940円)が品切れになってモックが展示されていたのには吃驚した。小生のアフィリエイトでもかなり売れていたが、極めて硬派で高価な書物が売れていると云う事は、


≪経済的格差は長期的にどのように変化してきたのか? 資本の蓄積と分配は何によって決定づけられているのか? 所得の分配と経済成長は、今後どうなるの か? 決定的に重要なこれらの諸問題を、18世紀にまでさかのぼる詳細なデータと、明晰な理論によって解き明かす。格差についての議論に大変革をもたらし つつある、世界的ベストセラー。≫


≪本文より 「本書の答えは、これまでの研究者が使えたものよりもはるかに広範な、長期的で比較可能なデータに基づいた答えとなっている…格差の根底にある仕組みについて、もっと深い理解を与えてくれるような、新しい理論的な枠組みに基づいたものでもある」 「1970年代以来、所得格差は富裕国で大幅に増大した。特にこれは米国に顕著だった。米国では、2000年代における所得の集中は、1910年代の水準に戻ってしまった――それどころか、少し上回るほどになっている」 「私の理論における格差拡大の主要な力は、市場の不完全性とは何ら関係ない…その正反対だ。資本市場が完全になればなるほど、資本収益率 r が経済成長率 g を上回る可能性も高まる」 「格差の問題を経済分析の核心に戻して、19世紀に提起された問題を考え始める時期はとうに来ているのだ」 「あらゆる市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に、真剣な興味を抱くべきだと思える…数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなど、まずあり得ないのだ」≫


この本が売れると云う事は、かなりの部分で資本主義の変調が顕著になってきていると感じる人々が増えてきていることを示唆している。単に、世界のベストセラーだからと云って、5940円の本が売り切れるほど売れるには、それ相当の根拠があるわけで、日本人もまだまだ捨てたものではないと心強くも思うのだが、なにせ、民主主義はマスの最大公約要求を具現化するだけに、果たして、そのシステムの溶解と時間競争している場合、人間の頭脳の方が歴史の流れに負けるのではないかと、他人事のように気にしている今日この頃だ。

引用元:「世相を斬る あいば達也」(http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/3155afe9fd17599157c827446ad971de

◎次は、この本の著者ピケティ氏がフランス国家のレジオンドヌール勲章を辞退したというニュースです。

日経ビジネスオンライン
ピケティ氏、レジオンドヌール勲章を辞退
「誰が栄誉に値するかを政府は決める立場にない」http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150107/275909/
FINANCIAL TIMES

2015年1月8日(木)


(前略)
 ピケティ氏は、オランド大統領の経済面における実績を痛烈に非難する中で、政府はこんなこと(レジオンドヌール勲章の受章者を決めること)をするよりも、「フランスと欧州の経済を回復させることに専心した方がよい」とも指摘した。


 オランド氏率いる社会主義派が政権を握って以降、フランス経済はどの経済指標を見ても失望的な数字が続き、景気回復への期待も幾度となく裏切られてきたことが、このピケティ氏の発言につながった。


オランド大統領にとっては痛烈な打撃


 2014年末までに雇用環境を改善させるとの政府の公約にもかかわらず、フランスの失業率はかたくななまでに高止まりしたままだ。フランス経済が2014年初来6カ月にわたり足踏みを続けるなど、経済の停滞により、オランド大統領の支持率は近代史上、前例のない低い水準にまで低下している。


 一部に集中している富を再分配することの必要性を著書で主張し、世界的なベストセラーにした実績を持つ経済学者によるレジオンドヌール勲章の辞退は、オランド大統領にとっては痛烈な打撃となった(ちなみに同著は、英フィナンシャル・タイムズコンサルティングの世界大手マッキンゼー・アンド・カンパニーが選ぶ2014年の「ビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤー」を受賞している)。というのも、オランド大統領はまさにこの日、富裕層に対する特別課税(富裕税)の枠組みを廃止したからだ
(後略)


(引用ここまで)

〇引用元「仏経済学者トマ・ピケティがレジオン・ドヌール勲章を拒否した意味」(http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-6240.html