NHKスペシャル「マネー・ワールド 第3集 巨大格差 その果てに」(その1)

NHKスペシャル「マネー・ワールド」◆第3集 巨大格差 その果てに(その1)

第3集は、変容する富の分配と巨大格差。資本主義は、人類が史上経験したことのない「巨大格差」を生み出した。その象徴が、世界におよそ150人いるという年収2400万ドル以上の「プルトクラート」と呼ばれる超富裕層だ。巨大な富と力を得たプルトクラートは今年注目のアメリカ大統領選挙を背後で支え、影で世界の趨勢を握っている、とも言われる。一方で、利益の追求を放棄するニューウェーブが世界各地で起き始めている。自らの年収を10分の1にすると宣言するCEO、給与体系を変更し全従業員の賃金を同額にする企業、利益を分かち合う自治体―。過剰な富の追求は「幸福」に繋がらないという経済学が注目を集め始めているのだ。世界の富の分配は、今後どう変容していくのか検証する。


◇経済大国アメリカでは貧困層が増え続け現在およそ7人に1人が生活困窮状態。その一方、莫大な富が富裕層に集まり続けている。今年世界で最も裕福な62人が持つ資産が世界の人口の下位36億人の資産が同じであるという報告(調査オックスファム)が発表された
西海岸の経済都市、シアトル。中心部に現れたテント・シティ。市内8か所に公的設置を認めた。この5年、不動産価格が高騰、このため仕事があっても家賃が払えず路上で暮らす人が増えている。その一方で、中西部のミネアポリスの高級ホテルで開かれていたのは経営者など資産家を招いたパーティ。資産1000万ドル(10.5億円)以上のビリオネアアメリカでは世界一多い500人がいると言われている。

◇その一人、ひときわ注目を浴びるのはスタンリー・ハバード氏。資産は22億ドル、50以上の放送局を持つアメリカを代表するメディア王の一人。彼が経営するハバードブロードキャスティング、全米にネットワークを持ち、毎年7億ドルの収益を上げている。ハバートさんは1980年代に莫大な費用を投じ世界で初めて一般家庭向け有線システムを開発、グローバル化の波に乗って大成功。「あれは危険なカケでした。失敗したら全てを失い私は今ここにいなかったでしょう。リスクが大きい分報酬も大きいのです」。所得格差については「確かに格差は存在します。しかし問題の本質は多くの貧しい人たちが努力を怠っていることです。彼らには仕事のチャンスを与えればいいのです」。

◆ハバードさんがビジネスとともに取り組んでいるのが政治への献金。長年、共和党を支持し、多額の献金を行ってきた。1980年代にドナルド・レーガンを支援。レーガンは大統領として規制緩和政策や法人税などの減税を進めた。「私は政治家に見返りを求めたことはありません。おそらく献金者1000人のうち999人がそう答えるでしょう。政治家は多額の献金をした人を決して忘れません。よっぽどのことがなければ献金者を門前払いにはしませんそれが人間の性(さが)です。]

〇投票がまじかに迫る大統領選、ここに富裕層から莫大な献金が集まっている。これまでの献金の総額は17.5億ドル(約1800億円)、その3分の1をビリオネア、富裕層が投じている。

今年7月、ミネアポリスから1400キロ離れた町へ、プライベートジェットに乗ってハバード氏がやってきた。この直前、共和党の候補者がトランプ氏に決まり富裕層の動向が注目されていた。ハバート氏が参加したのは共和党を支持する富裕層と有力な政治家が集まる極秘の政治集会。主催したのはエネルギーや繊維など10もの巨大企業を経営するコーク兄弟。二人合わせた総資産は推定850億ドル(約8兆9000億円)。二日間にわたった極秘の会議。ここではトランプ候補を支持するかどうかが話し合われたと言われれる。会議終了後、会場の外という条件でハバート氏がインタビューに応じた。話し合いの結果、トランプ候補には献金しないことが決まったという。「支持しない理由について説明があり納得できる内容だった」。一方、連邦議会の議員たちの献金に力を入れると明かした。「我々には大きな責任があるのです。だから我々は同じ思想を持っている議員たちに献金します。彼らがいわば防護壁の役割を果たすのです」。

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◇自由と平等を国の理念に掲げるアメリカ、しかし巨大な格差はその平等を脅かしているという研究がある。アメリカの政治とカネの関係を調べるマーティン・ギレンス教授過去20年間の採択された1800の政策を分析すると、その内の45%が一握りの富裕層の主張する内容だとわかった。「選挙には途方もない資金がかかるようになっている。そして、その資金の大半を一握りの富裕層が提供する傾向が高まっている。富裕層が大きな影響力を持ち、そうでない人達はさらに取り残されています。中間層か低所得者層が政策に影響を与えた例はほとんどありません。」


富裕層が政治に与える影響を象徴するような出来事が去年テネシー州ナッシュビルで起きた。貧困率アメリカでもワーストクラス。この州で医療保険をめぐる対立が起きた。
低所得者向けの公的医療保険。対象者が限られていて、低所得者のおよそ28万人が保険に入っていない。

そこで州政府は新たな医療保険制度を作ることにした。世論調査では住民の6割以上が支持。新知事も強力に後押しし成立が目前と思われていた去年2月、ある団体が成立に猛反対し一カ月余りで廃案となった。反対したのはあのコーク兄弟が支援する団体だった

◆取材に応じる団体(繁栄のためのアメリカ人会 テネシー州)の代表、アンドリュー・オグルス:「全員に無料で医療サービスを提供きるというのは幻想です。電卓をたたけば計算が成り立たないことはすぐわかる。現実を見なくてはいけません。ストップボタンを押して立ち止まる必要があるのです。」 コークス兄弟は公的医療保険は財政負担が大きいと考え、全米各地に主張を広げてきた。

◇保険制度の提案が突然廃案になったことで住民の間で戸惑いが広がった。ダニエル・バイヤーズさん(56歳)、椎間板の変形や関節炎、肺炎などを併発し、2年前から仕事が続けられないくなっていた。「お金がないのでもう6年も手術を受けていません」。住民とともに法案の再提出を求めて活動をしているが、そのめどはたっていない。「お金で政治が動かないようにしなくてはいけません。私たちのような弱者に大きな影響を及ぼすからです。私は薬と食事のどちらかを選ばなければばらないのです。」

◇広がり続ける格差、しかし経済成長にとって格差は一概に否定できないという研究者も少なくない。様々な政策提言提案を行っているニューヨーク大学リチャード・エプスティン教授:「経済が成長するとき、すべての人が同じように恩恵を受けるわけではない。富裕層の資産が大幅に増えるが貧困層の試算も少なくながらも増加する。格差は広がりますが社会全体は繁栄するのです。一部の大金持ちがより活躍できた方がいいのです。その恩恵を受ける人達が出てくるからです。格差は広がるかもしれませんが同時に貧困層の生活も押し上げてくれるのです。」

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スタジオ。今日は財政学が専門の井手英策さんがゲストです。

ごはんか薬を選ばないといけない人が出ています。社会が真っ二つに割れているような、お互いが分かり合えないような…」T「二極化している」O「日本の社会保障の方が進んでいる気が…」「日本の現実は格差がどんどん進んでいる。特にひとり親の家庭、母子家庭の相対的貧困率は先進国の中で一番ヒドイです。」日本の貧困率OECD加盟34ヵ国の中で日本が最も高い
T「一方、経済が成長していけば格差はあっても大きな問題にならないという考え方、トリクルダウン理論があります」。そこでトリクルダウンが目で見て分かる仕掛けによく使われるグラスタワーの頂点からワインを注ぐパフォーマンス。
ニューヨーク大の先生が格差があった方がいい、一部の金持ちがより豊かになることで全体が引き上げられるとか。それでは、テント・シティとか薬か食事かと考えて暮らしている人たちは? 勘定に入ってないということですね。ここで、もう一つのグラスタワーが登場します。特大のワイングラスが乗っかっています。この巨大グラスを置いたタワーがあったことで、今、現在、トリクルダウンは全くの幻想そのものというのがよくわかりました。

一つ目のタワーで一番下のグラスにワインが届くまでにワインが二本以上必要でした。それだけ利益がなければ最下層までいかないということです。
ところが、トップのグラスが特大のタワーでは、ワインの一本目ではもちろん、二本目のワインを注いだところで下まではいかない。最上層が強欲張りになって利益を独占すれば、下まではこぼれない。
お金持ちも貧しい人もお金に対する願望が均質で、同じで、次に回そうという人ばかりではない。人間の欲望は分からない。金持ちはもっと余計に貯めようと思うかもしれない、そうなれば、全然下には流れない成長率が先進国含めて落ちているから配るパイが少ないとなれば、下層どころか、中間層、上層部のグラスでさえワインのおこぼれが回らないということになります。これが、62人の超富裕層 対 下層の36億人、ということです。(つづく)
◎今回も「特別な1日」さんのブログから引用です。(http://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20161024/1477265259

民進党のブレーンをやっている井出栄策慶大教授が出演していた日曜日の格差の話はもっと頑張ってました。NHKドキュメンタリー - NHKスペシャル マネー・ワールド 資本主義の未来(3)巨大格差をどうするか。ティーパーティーの黒幕、極右の大金持ちコーク兄弟にまで言及していましたからね。

アメリカの真の支配者 コーク一族

アメリカの真の支配者 コーク一族